先生も悲鳴を上げる入試の多様化。ありがちな選択ミスとは?
一般入試もAO・推薦入試も多様化が進行中
大学進学を考えている高校生なら、大学の入試方法が年々多様になってきているのはきっと感じているはずだ。
一般入試とAO・推薦入試くらいの区分ならまだ把握もしやすいが、最近は、一般、AO・推薦のそれぞれがさらに細分化される傾向にあるからやっかい。
一般入試では、同じ学部の入試に、入試科目の数や組み合わせが異なる複数の方式を設ける大学が増加。
AO・推薦入試では、「新フンボルト入試」(お茶の水女子大学)、「世界適塾入試」(大阪大学)、「新思考入試」(早稲田大学)など、名称だけでは中身の想像がつかない新しい入試方式が続々登場している。
この入試方法の多様化には実は高校の先生も悲鳴を上げている。
リクルート進学総研が実施した調査(高校の進路指導・キャリア教育に関する調査2016 進路指導編)によると、「進路指導が困難」と感じている先生は9割以上で、その理由のトップは「入試の多様化」だった。
入試科目数が減ると入試の難度はむしろ上がる!
先生でも混乱するくらいだから、高校生がどの入試を選ぶべきか戸惑うのは当たり前の話。
そうなると、入試方式の選択ミスも起こりがちだ。
では、どんな失敗がありがちなのか、大学入試事情に詳しいAO・推薦入試専門塾「カンザキメソッド」代表の神﨑史彦さんに話を聞いてみよう。
まず、2科目で受験できるような入試科目が少ない一般入試について。「勉強する科目が少なくてラッキー!」と安易に選んでしまう受験生も多そうだが…。 「注意したいのは、科目数が減れば入試の難度は上がるということです。
3科目+センター入試といったタイプなら1科目がダメでもほかで挽回が可能ですが、2科目ではそうはいきません。
もちろん、その科目に自信があればいいのですが、その場合も、例えば、国語は課題文次第で点数が安定しない傾向があるのでリスクはあります」
つまり、苦手科目を避けたいために科目数が少ない入試を選んだ場合、むしろ不合格リスクを高めてしまう危険があるということだ。
基礎学力不足で入学後に苦労するケースも
そしてこのタイプの入試にはもう一つ落とし穴が。 「入学後のその学部での学びに必要な科目が入試科目にない場合、まったく勉強していないと基礎学力不足で授業についていけない可能性があります。
例えば、英語はどの学部でも必要ですし、経済学を学ぶには数学の知識が求められますからね」
せっかく希望する大学・学部に進学できても、授業の内容がさっぱり理解できずに不登校、中退…なんて話も実際珍しくない。
つまり、入試方式を選ぶときには大学入学後の勉強についてもしっかり考えておかないといけないというわけだ。
何の積み重ねもなく直前にAO・推薦を選ぶのはNG
では、AO・推薦入試はどうだろう。こちらは、「面接と小論文でOKなんでしょ?勉強が苦手だからこっちにしよう!」と選んでしまう高校生もいるはずだが…。 「AO・推薦入試は、ディベートやディスカッションを取り入れるなど、より多面的に人物を評価する大学が増え、通り一遍の面接対策では通用しなくなっています。
しっかりキャリアデザインを描いて高校生活を過ごし、さまざまな活動をストーリーとして語れることが求められますから、何の積み重ねもなく、直前期にAO・推薦を選ぶのは危険ですよ」
そもそも、国立大学などで導入が進んでいる新しいタイプのAO・推薦入試は、センター試験を課すなど、学力も問われることが多い。
よく調べればすぐにわかるが、こちらも決して楽な道というわけではなくなってきている。
さまざまな入試方式に対応できるよう幅広く準備を!
では、高校1、2年生がこの先の入試方式選びで失敗しないためにはどうしたらいいのだろうか。 「ポイントは、早々に入試方式を絞り込んで『やらないこと』を決めるより、多様な一般入試、AO・推薦入試に幅広く対応できるよう準備をしておくことです。
大学入学後を考えれば、幅広い基礎学力も、キャリアデザインに沿ってさまざまな活動を積み重ねることもどちらも大切。
入学後まで意識して準備をすることで、結果として自分に合った入試方式を余裕をもって選ぶことができるようになるんです」
なるほど、大学入学は決してゴールではないと考えれば、ものすごく納得できる。
自分にとってベストな選択を可能にするのは、早い段階からの地道な積み重ね。
ラクそうに見える道を安易に選ぶのはいろんな意味で危険だと肝に銘じておこう!
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