「給料」以外に働くモチベーションは必要か? 人材育成の専門家のアドバイス

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「リーダーとはかくあるべき」という人物像を語る本や、リーダーに期待される振舞いをつづった本は多いが、「リーダーが理解しておくべきこと」について書かれた本は案外少ない。どうやら、これらは職場や仕事によって異なると考えられているようである。

しかし、会社や仕事内容にかかわらず、リーダーには使命を全うするためになくてはならない、普遍的な原理原則がある。それを理解することは、部下を活かし、チームを活性化し、パフォーマンスに直結する。

今回は、その原理原則を著書『ディズニー・USJで学んだ 現場を強くするリーダーの原理原則』(内外出版社)で明かしている今井千尋さんにお話をうかがった。その後編をお届けする。

■「褒めて育てる」ためには上司自身が変わるべき

――人の育成についてですが、最近では「叱るより褒めて伸ばせ」という風潮があります。これが案外難しくて、褒めたところ部下が「現状維持でいいんだ」と思ってしまい、向上心が薄くなってしまうことがあります。上手に褒めるポイントがありましたら教えていただきたいです。

今井:コミュニケーションは相互的なものですから、「褒める人」がいれば「褒められる人」もいますよね。もし、褒め方がわからないなら、まず自分が「褒められる準備」をすべきです。

「俺って部下(上司)にとって魅力的で、褒められるような人間なんだろうか。そういう上司(部下)でいるための準備を今日はできているだろうか」ということを部下も上司も考えられていたら、褒めるという行為は自然発生的に生まれます。

「褒めて育てるのがいいと言われているから褒めよう」というのは不自然ですし、たまに企業などである「今週は褒める月間です」みたいなのはもっとダメです。これもまた手段が目的にすり替わってしまっているパターンですよね。第一そんなので褒められてもうれしくないでしょう(笑)。

自分が相手のことを考えて心から褒めたいと思うから褒めるのが本当であって、それが自然に生まれるようにするには、まず自分のあり方を整えるべきです。

――本書では「個人のがんばりに頼らないチームづくり」の大切さについても取り上げられていました。これはすごくよくわかる一方で、実際の職場ではどうしても「仕事ができる人」に仕事が集まり、忙しい人とそうでない人で二極化しがちです。これを避けるにはどのような取り組みが必要になるのでしょうか。

今井:これはリーダーの問題で、下手なリーダーはたとえば部下が10人いたら、「1対10」と考えるのですが、上手なリーダーは「1対1が10組」という考え方をします。

この考え方だと、仕事ができるできないにかかわらず個々人の持ついいところに目がいくようになってきます。その良さを掬い上げて、どうチームとして機能するシナジーを作っていくのかがリーダーの腕の見せ所なんです。

だから、「部下が仕事ができなくて」という上司は、自分の力量のなさを訴えているようなもので、「部下のことを言う前に自分はどうなんだ」という話なんですよ。

――また、働くモチベーションも多くの人が悩むところです。給料以外に「働く理由」が見つかれば仕事は幸せなものになると思いますが、今それらが見つかっていない人はどう考え、どう行動すべきなのでしょうか。

今井:なぜ今の場所で働いているのかという理由が見つからない人は、まず目の前の「自分の現在地」をもう一度見つめなおしていただきたいです。

転職も選択肢の一つだというのは否定しませんが、転職を考える前に今の職場、今の仕事の価値だとか醍醐味はどんなところにあるのかということをもう少し考えてみる。じゃあそのいいところを見つけるために何が必要かというと、「言葉」を変えることです。

言葉を変えると、物事の見え方は変わりますし、自分の考え方、捉え方も変わります。まずは目の前の仕事や職場に対して「いい言葉」を使ってみてください。そうすると、返ってくる「ありがとう」の数は増えます。そうして受けた「ありがとう」はその人のモチベーションを日々、少しずつかもしれませんが確実に、着実に上げるはずです。

そして、その積み重ねによって考え方が変容し、いつの間にか日々の仕事に対する捉え方が変わっていくのです。

――本書を通して今井さんが一番伝えたかったことは何ですか?

今井:仕事の現場に光を当てたいという気持ちが大きかったです。「一燈照隅」

今、疲弊しているリーダーが多いじゃないですか。自信を失っていたり、仕事に意義を見出せなかったり。この本を通してそういう人に光が当たり、彼らが勇気を持ち、一歩、昨日とは違う行動につながることができればいいなと思っています。

まずは、「行動」あるのみです!

ディズニーランドやUSJにいった時のあの楽しい感覚を仕事でも味わっていただきたいですし、そんな感覚を得られる職場であれば、間違いなく人は輝くんですよ。そんな「場」を作っていくのは、リーダーや上司一人ひとりですし、そんなリーダーや上司がたくさん生まれてほしいという思いで今回の本を書きました。

――最後になりますが、全国の職場のリーダーの方々にメッセージをいただければと思います。

今井:「部下が辞めてしまう」にしても「職場の居心地が悪い」にしてもそうですが、職場で起きる問題って、どんなことであれはじめはごくごく小さなコミュニケーションのズレなんです。そのズレを解消することなく放っておいたから、問題として表面化しているわけで。

そして、ズレを作ったのが自分なのだとしたら、そのズレを解消できるのも自分です。「自分も大事、他人も大事」最幸思考(=全体最適思考)という気持ちを持って、いい言葉を使っていれば、自分の想いが周りに伝わって、皆にとってすばらしい職場、すばらしい人間関係になると思います。ぜひ皆さんに自分の仕事に志を持って、行動する「志事」にして頂き、幸せなものにしていただきたいと思いますね。

(新刊JP編集部)

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