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高木新平さん/人生100年時代。迷惑をかけあって、子育てできる社会をつくる【夫婦のチームワークvol.5】

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高木新平さん/人生100年時代。迷惑をかけあって、子育てできる社会をつくる【夫婦のチームワークvol.5】

今回お話を聞いたのは、時代の空気を読み解いてビジネスを作る、高木新平さん。CEOとして忙しく働くなか、第二子妊娠中の奥様が切迫早産に。そのとき高木さんが取った行動は? 子育てを通じて得た、新しい視野とは。家事や育児は“自分ごと”――そんな男性にインタビューする連載です。

“女性の社会参画”よりも“男性の家庭参画”のほうが重要

――まずは、無事に正産期(赤ちゃんがお腹のなかで充分に発育し、いつ生まれてもよいとされる期間)での第二子出産、おめでとうございます! ありえるとは思っていましたが、取材の2日前にご連絡をいただいて、驚きました。

ありがとうございます。ひさしぶりの新生児、ちっちゃくてかわいいです。

――それにしても高木さん、バリバリと忙しく働くクリエイター界隈で、30歳にして2児の父とは、ずいぶんスピーディーですね。

もともと、25歳くらいで子どもがほしいなと思っていたんです。面白い経営者って、学校を中退していたり、めっちゃ早く結婚してたりするじゃないですか。人と違う経験をして生きてきた人の話って、やっぱり面白い。だから、僕も結婚や出産と起業は早めにしたいと思っていました。

それに、子どもを産む年齢を男が意識するっていうことが重要だと思ったんですよね。女性は産むほうだからプレッシャーもあるし、いやでも意識するのに、男性はしないでしょう。僕はいま“女性の社会参画”よりも“男性の家庭参画”のほうが重要だと思ってる。だから、そのスタイルを呼びかけるためにも動き出したわけです。

そう決めたらいまの妻と出会って、とんとん拍子で結婚、第一子の娘を妊娠。そのくらいのタイミングで起業したけれど、本格的に会社が走りはじめたのは産後しばらくしてからなので、最初は妻と2人で子育てをスタートすることができました。

――子どもと会社が同時期に産まれて、両立するのは並大抵のことではないように思います。

そうですね。産前は深夜休日を問わず働いていたけれど、そのスタイルは持続的じゃないから、働き方を変えました。まず、土日は働かないって決めた。パソコンを持ち帰らないとか、業界的に死ぬほど多い残業をなくすとか、社風として作っていきました。世の流れをくみとって企画する仕事をしているのに、いまこれだけワークライフバランスが叫ばれているなかで、自分たちがブラックじゃどうしようもないですよね。だから出産を機に、会社ごと変わろうと思ったんです。

そうやって土日を子どもと過ごすうちに、1歳になるころには、娘と2人きりで旅行に行けるくらいにはなっていました。とはいえ、平日はめっちゃ忙しいんですよ。たとえ残業をなくして20時に仕事が終わっても、採用のために人に会ったり、大切な会食とかもあるし……妻には「飲み会でしかまとめられない話は、あなたが実力不足だからだ」とか言われちゃうんですけどね(笑)。

 

子育てで迷惑をかけた経験が、視野をやさしく広げる

――そんな日々のなかで、第二子を妊娠。奥様は11月末の出産予定日をひかえ、8月中旬に切迫早産(早産しかかっている状態)で自宅安静という診断を受けられました。そのときに高木さんが書かれたnote「妻が切迫早産につき、夜は早く帰り、休日はどんな場所にも子連れで参戦します。」を見て、今回の取材を依頼したんです。

平日は治外法権のように働いてきたのが、急にそんな事態ですからね。実家も遠くて頼れないし、妻を安静にさせるためには、僕が子どもを見なくちゃならない。もうnoteで先に宣言して、既成事実にしていくしかないと思いました。状況を作り出すためと、覚悟を決めるために書いたわけです。クライアントから何かに誘われても「すいません、これです」ってURLも送れるし。

転んでもタダでは起きたくないから、まずはこのネタをどう活かそうか考えました。せっかくだから、みんなに学びのあるようにしたい。NEWPEACE Inc.で子どもがいるのはまだ僕だけですが、次に誰かが似た事態になったとき、子育てor仕事とならないような仕組みを作っていきたいと思いました。それが、うちの会社をロールモデルとして、同業他社にも広まっていくといいですね。

――宣言から出産までの2ヶ月間、実際いかがでしたか?

大変だったけど、意外といけたなって感じです。年配の方は孫みたいにかわいがってくれるし、同世代ならまだ子どもがめずらしいから面白がってくれたりして。一緒に仕事をしている相手と自分の家族が交流できるのも、いい機会だなと思いました。地方出張にも連れて行って、子どもとの絆はめっちゃ深まりましたね。ここまでパパ好きの娘、いないんじゃないかな。

それから、いま日本の雰囲気がこれだけ不寛容なのは、少子化だからだと思いました。子どもを連れてると、周りに謝る機会がめちゃくちゃ増えるんですよ。でも、迷惑をかけたり、面倒を見てもらって感謝したりしてるうちに、いままでとは違う関係性ができる。そういう感覚って、経験しないとわからないんですよね。

たとえば、子どもを抱いていて荷物が多いとどれだけ困るか。そんなときに、エレベーターのボタンを押して待っていてくれるだけで、どんなにありがたいか。みんなが似たような感覚を持っていれば、お互いに迷惑をかけて、うまく依存しあえる関係になるんです。でも、普通に一人で生きていると“迷惑をかけちゃいけない”って意識にしかならないんですよね。

僕はもともと、お互いがフォローしあって生きる、多様な社会のほうがいいと思っていました。でもそれは「いろんなスキルを持ってるやつらがいたらいい」くらいのことで……そこに弱者の視点はなかった。子どもって、めちゃくちゃ弱者じゃないですか。子育てをしたことで、考え方に奥行きが出たなと思います。

 

妻は、ビジョナリーに家庭を運営していくco-founder

――家事や育児で心がけていることを教えてください。

心がけているからといって、できているかは別物なんですけど(笑)……奥さんのことを一番に考えなきゃいけないなとは思ってます。僕は、妻にすごく教育されてるんですよ。妻が言うには「夫に求めてるのは家事なんかじゃなくて、妻へのケアだ」と。家事は妻もできるけど、妻のケアは僕にしかできないですから。

でも、優しい言葉をかけたり気遣いするのって難しいんですよね。とくに今回は2人目で、第一子の経験からちょっと油断もしちゃうし。だからここでも、切迫早産というトラブルがある意味いいきっかけになったなと思っています。ティッシュ1枚とることさえ代わりにしてあげなきゃいけない状況が生まれたから、いままで以上に妻のケアを意識できました。

――奥様とぶつかったりすることはあるんですか?

いっぱいありますよ。周りは「妻の話は『そうだね』ってうなずくのが一番だ」って言うけど、僕はそうはいかないんです。つい、言いたいことを言いたいだけ言っちゃう。10分くらいしたら謝るんですけど(笑)。

でも、子育てにおいて、どっちが悪いとかいう事案はほぼないですよ。街にいきなりゴジラがやってきて暴れた。誰がどう対処するかで、町民同士がもみ合ってる。だから、事態をどう受け止めるかだけの話なんです。どっちのせいでもない、ゴジラが来たからしょうがないんだっていうことばっかり(笑)。

――すごくよくわかります(笑)。でもお二人は、感覚がとてもかみ合っているし、コミュニケーションが建設的ですね。

僕は、恋愛の延長線上に結婚はないと思ってるんです。妻は“co-founder(共同創業者)”。こういうビジョンの家庭を運営して、こういうライフスタイルやコミュニティを作っていくんだという、僕らの共同プロジェクトなんです。そういうことができる人だと思ったから、結婚を前提で付き合い始めたし、めちゃくちゃ信頼しています。恋愛だとお互いに甘えたりしちゃうけれど、緊張関係もあるし、一緒にいることでドキドキするとかじゃなくて、一緒にいるのは前提。それで、何をどうビジョナリーにやっていくか、なんですよ。

――では最後に、そんなプロジェクトを今後はどう進めていくか、聞かせてください。

これからは4人家族ですから、経営者の感覚でいうと、早く現場が育ってほしい(笑)。親がすべて対応するには限界があるから、娘を、弟の面倒が見られるマネージャーにしたいです。

子育てって、絶対に一人でできることじゃないんですよ。だから環境ごと作っていかなきゃいけないし、それをするのは僕ら世代の仕事だと思っています。人口を増やすためにも生まなきゃいけないし、社会をよくするために、みんなが一緒に変わっていかなきゃいけない。少しずつ、ある種の迷惑をかけあうのは当たり前だっていうスタイルにシフトできれば、みんなが子育てできますから。僕らの人生は、100年ある時代。仕事だけして40年間駆け抜ければOKっていう時代は、もう終わったんですよ。
高木新平

NEWPEACE Inc.代表、コンテクストデザイナー。1987年富山生まれ。早稲田大学卒業後、2010年、株式会社博報堂に入社。SNSなどを活用したクリエイティブ開発に携わった後、独立。「よるヒルズ」や「リバ邸」などコンセプト型シェアハウスを各地に立ち上げ、ムーヴメントを牽引する。またネット選挙運動解禁を実現した「ONE VOICE CAMPAIGN」などを主導。そのライフスタイルが、NHKなど様々なメディアに取り上げられる。2014年、多様なクリエイターを集め、NEWPEACE Inc.を創業、代表に就任。社会課題からストーリーを組み立てることで、新しい形のブランディングを実践している。

撮影:池田博美

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