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「仕事がうまくいかない」最大の原因は、“知識やスキル不足”ではないーーTwitterフォロワー12,000人・外資系企業の本部長「とくさん」の仕事論

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リアルな世界で接点がない人ともネット経由で気軽に知り合えるようになったいま、築いてきたキャリアや知見、人柄がSNSを通じて信頼されたビジネスパーソンは、見知らぬ若手から寄せられる悩みに答えるメンターとしても活躍しています。そんな1人、Twitterフォロワー12,000人超を誇る外資系企業の本部長「とくさん」を直撃。ご自身が日々発信している仕事論のエッセンスを語ってもらいました。

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【プロフィール】

とくさん(Twitter:https://twitter.com/nori76

1976年千葉県生まれ。大学在学中に米国への交換留学を経験し、日系メーカーに新卒入社後は新規事業の海外営業部で中東、アジア、欧米を担当。経営への参画を志して30歳で転職した外資IT企業のコンサル職では壁にぶつかったものの、転属した間接部門の業務を通じて経営感覚を体得し、上海駐在を経てリーマン・ショック後の事業変革に携わる。2015年に米系ソフトウエア会社へ転じ、現在は日本法人でコンサル事業の管理本部長。経営企画・経営管理・プロセスマネジメントなどの分野で経営陣を補佐するかたわら、米国本社との調整役も務める。保育園に通う1女の父。

「勉強」より大切な「やり抜くこと」

-仕事に関する若いフォロワーからの相談に、よくアドバイスをしているそうですね。

はい。まったく面識のない人からもDM(1対1でやりとりするTwitterの「ダイレクトメッセージ」)が来ます。ブログで経営の話を書いていることもあって「経営に近づくにはどんな本を読めばよいか」といった質問も受けるのですが、少し気になっているのは努力の方法。教科書的な本を頭から読んで1つずつ定義を覚え、付せんやマーキングでいっぱいにしていくような勉強をイメージする人が多いようです。

分かりやすいのが「資格取得を目標に頑張る」というケース。たぶん受験勉強での成功体験があって、その延長上で考えているのだと思います。

私自身、勉強して資格を取ったことが何度かあり、10年前に「30歳・未経験」でコンサルに飛び込んで成果を出せなかったどん底の時代には「必要な知識が足りていない」と悩んだこともあります。だから「何かを学んでスキルを身につけたい」という気持ちは、とてもよく分かります。

ただ、振り返って思うのは「仕事がうまくいかないときの最大の原因は、おそらく知識やスキルではない」ということ。コンサルタントという専門職の世界でさえ、通用するかどうかを決めるのはその人の“馬力”、つまり成果にこだわり抜いてやり切る力なのです。近ごろ有名になった「グリット」という言葉が、まさにそれですね。

コンサルタントへの転職からほどなくリストラに見舞われたときは転属して会社に留まる道を選択。当時を回想したブログでは「もともと負けず嫌いで、どんな仕事でもいいからその会社で爪痕を残したかった」とあります。

ええ。転職の翌年にリーマン・ショックが発生し、これを引き金に大規模なリストラが行われました。私と同時期に入社したコンサルタントも、半数が会社を去っていきました。

外資系の場合、会社を移ることは日常茶飯事ですから、客観的には退社を選んでもよかったのかもしれません。実際転職も検討しましたが、どうしても引っかかっていたのが個人的なコンプレックスでした。それは「負けず嫌いなのに全力でぶつかれない」「最後は逃げてしまう」という自分の弱さに対するもの。学生時代から自覚があって「またこのパターンか」と、無力感をたびたび感じていたのです。

ちょうどそのころ社内の間接部門が求人をしていて、なんとか残留することができたのですが、部門を移ることに不安はありつつも「ここで態勢を立て直そう、逃げずにやろう」という気持ちが強かったですね。転属先で担当したのは、コンサルタントやエンジニアの稼働率などを管理するという一見マイナーな業務。しかし意外なことに、稼働率を管理・分析し、その「最適値」を探っていく作業こそ、経営の根幹といってよい内容だったのです。

新年度の計画を立てるため、連日夜中までExcelをにらんでいたあるとき、働く人たちの物語や、それぞれの思いが、並ぶ数字の向こうから伝わってくるような体験をしました。数多くの要素がつながり合う経営というものをそこでつかんだ気がし、同時に「後に引けない状況になっても責任を持ってやり切る」という覚悟が生まれると、上司から叱責されたときでも納得がいかなければ「キレ」て、堂々と反論できるようになりました。

そうした激しいやりとりも経て計画が認められると、米国人の役員にもその成果を認めてもらい、ほどなく上海駐在というステップアップの機会が訪れました。逃げずに走り切れたことが転機をもたらしたのです。

ビジネスは「フィジカル」で「エモーショナル」

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仕事上で怒りの感情を露わにすることに、ためらいはなかったのですか。

あえて怒りを表に出したのは成功でした。コンサルタントとして成果を上げられずに流した悔し涙、リストラの危機、Excelとの格闘といった体験を経て、私は間接部門での計画立案に対して、強い感情を持って臨んでいました。いつも怒っていたわけではありませんが、そういう気迫があったからこそ言葉に力を持たせられたのだと思います。

ビジネス書などで一時、冷静沈着な「ロジカルシンキング」が盛んに採り上げられましたが、これほど多くの物事が絡み合っている現実の社会で、理屈を1つずつ順番にたどる論理的思考に頼っていては絶対に追いつきません。現場で仕事をする多くの人が直感的に思っていることです。

例えば、デジタル・マーケティングの世界でも、さまざまな感情と結びつくストーリーに「共感」できるかという直感的な要素が、非常に重要なテーマになってきています。働く人間同士も同じで、もっとエモーショナルな部分を出して、自分だけの物語を周りに示していったほうが仕事上でも成果を上げられるのではないでしょうか。まずは仕事に臨む自分の感情に、もっと耳を傾けてみるのがよいと思います。

職場で感情を解放すると、自分も同僚も好き勝手をして収まりがつかなくなりませんか。

いくら自分の物語といっても1人では完成できないので、自身の感情をある程度客観視して、周りの人が抱く感情や、職場のストーリーにひもづけていく必要はあると思います。また、一緒に仕事をする以上は時間という共通の制約に縛られるので、そこで収まる部分もあるでしょう。

自分自身の体力、フィジカル面から決まる限界に自覚的であることも重要です。私はマラソンが趣味なのですが、その時々の限界まで力を出し切れるように目標タイムを定めて、普段から練習を積み重ねていく経験が、仕事上とても役立っていると感じます。仕事に全力投球できない時期も「今の状況でギリギリまでやり切った」と思えれば自信を保てるし、後悔することもありませんから。

育児を「プロジェクト管理」ととらえる

-大人はまず何よりも仕事をやり抜くべきとのことでしたが、特に身につけたほうがよいスキルはありますか。

個人的な経験で言うと、同じ物事をそれまでと違う角度から・別の枠組みで再定義する「リフレーミング」の力を30代で身につけられたことが、経営に近づくという意味では最も大きかったですね。抽象的な概念を引き出しとして持っておいて、いろいろな場面の思考で使うということです。

これが身についたのは私の場合、コンサルタントとエンジニアを管理する間接部門に異動した時に、直接関係がなさそうなメーカーの「生産管理」の知識が当てはまると気づいた瞬間でした。メーカーのビジネスの肝は「工場」です。市場の需要にあわせて、生産をどう「最適化」していくか、これが経営上もっとも重要になってきます。

そして、これはコンサルティングの事業でも同じです。対象がメーカーで扱う「モノ」から、サービスを提供する「ヒト」に変わっただけで、顧客の経営改善などの需要に対して、コンサルタントやエンジニアを何人くらい準備して、どうアサインしていくか。需給関係を正しく捉えて、それを「最適化」していくことが重要な経営の課題になっているわけです。

概念を使った思考法は、核となる部分さえマスターすれば一言一句を覚える必要がなく、しかもさまざまな物事を理解するために応用できます。例えば、どのような部門に所属していても「自分の仕事が決算書のどこに現れるか、自分の言葉で説明できる」状態を目指すとよいと思います。それができれば「共通の」概念を使って考えられているので、まったく畑違いの会社に行っても経営を理解しやすくなるはずです。

我が家には小さい娘がいるのですが、作業自体はさほど難しくない育児がなぜこれほど辛いのか考えたときも「突発的で非定型的な意志決定に絶えず迫られ、常時脳のメモリを占有されているから」というビジネス的な視点でリフレーミングできました。育児は「高度なプロジェクト管理」だったということですね。だから育児期間中、以前ほどうまく意志決定できなくなっていたとしても仕方ないと納得できる。家族や自分自身に対して寛容になれます(笑)。

Twitter、やってる?

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-若いビジネスパーソンに、ご自身と同じくTwitterで情報発信するよう勧めているとか。

はい。TwitterなどのSNSで自分の考えを発信することで、自分が考えていることがうまく「言語化」されて、その本質的な意味を振り返る機会を与えてくれます。それは仕事にすごく役立っています。特に「140字でうまくまとめる」のは、ビジネスで必要となる「簡潔に重要なポイントをまとめて相手に伝える」というスキルを養ってくれたと実感しています。私も、Twitterでつぶやいたことを、同僚にそのまま喋っていることもあるんですよ(笑)

もう一つの利点は「マーケティング体験」です。私のフォロワー数は、いま所属している会社の「公式アカウント」とそれほど変わりません。「個人が発信力で大組織と肩を並べる」というのは非常に面白いことです。いまのビジネスは「個人」がキーワードです。それを自ら「体験」できるのがSNSの素晴らしいところだと思うんです。

例えば「仕事でデジタル・マーケティングをやってみたい」という人がいたら、まず試しに「自分」というブランドをSNSでマーケティングするところからはじめてみるのが良いのではないでしょうか。その試行錯誤を通じて、「リアル」なデジタル・マーケティングを「体感」することができますし、それは仕事でも応用可能だと思います。

【参考資料】

ブログ「グローバル経営の極北」

http://globalbiz.hatenablog.com/archive

WRITING/PHOTO:相馬大輔

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