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都市のど真ん中で農業? 初心者から本格派まで楽しめる可能性を探った

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都市のど真ん中で農業? 初心者から本格派まで楽しめる可能性を探った

大都市に暮らし、IT機器に囲まれて仕事をしていると、「土や緑に触れたい」と感じることが多いのではないでしょうか。それがベランダ園芸やガーデニングなどの趣味につながる人もいますが、それでは満足できず、さらに一歩踏み込み、「自分が食べる野菜を育てたい」、「子どもたちと一緒に土に触れる時間を得たい」といった人たちもいます。都市で、“農力”を発揮するにはどうしたら良いのか、可能性を探ってみました。

東京に、本格的クラインガルテンがあった!!

都市生活と農作業の両立というと、ドイツが先達と言えます。19世紀に生まれたクラインガルテン(ドイツ語で「小さな庭」の意味)は、都市近郊の小規模の農地で、ラウベと呼ばれる小屋が併設されています。都市住民が賃貸で使うもので、滞在型市民農園とも呼ばれます。週末や休暇のときに来て、農作業に汗を流し、リフレッシュするというものです。

日本でも、1990年代に入るころから各地に続々とクラインガルテンと呼ばれる施設ができました。そこで、東京初の本格的クラインガルテン「おくたま海沢ふれあい農園」(東京都西多摩郡奥多摩町)を訪ねてみました。【画像1】おくたま海沢ふれあい農園のクラインガルテン。ガス、水道、電気完備のラウベが並ぶ。遠くに山々が見える美しい風景だ(写真撮影/織田孝一)

【画像1】おくたま海沢ふれあい農園のクラインガルテン。ガス、水道、電気完備のラウベが並ぶ。遠くに山々が見える美しい風景だ(写真撮影/織田孝一)

ここは完成して今年で11年目。270m2の農地とそこに建てられた26.5m2のラウべ(ガス、水道、電気設備、キッチン、ユニット式バストイレ付き)が1区画。全部で13区画あります。奥多摩町の施設ですが、海沢地区の自治会が受け皿となって運営し、栽培講習会、料理講習会、収穫祭などを開催し、地元と利用者との交流に力を入れています。

管理運営責任者の堀隆雄さんによると、「利用者は初心者もいますが、市民農園の経験があり、定年退職されている方が多いですね。利用は週末型。車で2、3時間かけて来る方もいます」

利用者の一人、Tさんは世田谷区在住。公務員でしたが定年退職後の生活を模索中に、この農園を知りました。「今は、ほとんどこちらに滞在するような生活です。楽しみは、いろいろな品種の栽培にチャレンジすること。すべて無農薬です」

畑を拝見すると、大根、イチゴ、トウガラシ、サトイモ、エシャロット、タマネギ、白菜などの野菜が立派に育っていました。

ここの賃貸料は年間で60万円。単年度ごとの契約で、利用者の平均契約期間は4~5年です。全国のクラインガルテンもおおむね同等の賃貸料で、年間40万円~70万円が相場です。このくらいの金額だと、子育てやローンを終え、ある程度時間とお金に余裕のある退職者の利用が多くなることは確かでしょう。

また「おくたま海沢ふれあい農園」には滞在型だけでなく、日帰りタイプの体験農園も用意しています。こちらは1区画約50m2と規模はずっと小さいのですが、年間1万円で借りることができます。

えっ、マンションで、農作業が楽しめるの?

クラインガルテンはどちらかと言えば本格派志向の人向きと言えるでしょう。もう少し負担がなく、身近で農作業をしたいという人なら、農園が付いているマンションを選ぶという手もあります。【画像2】シティハウス横濱片倉町ステーションコート。神奈川県で初めて農園サービスを導入した(写真撮影/織田孝一)

【画像2】シティハウス横濱片倉町ステーションコート。神奈川県で初めて農園サービスを導入した(写真撮影/織田孝一)

横浜市営地下鉄ブルーラインの片倉町駅から徒歩2分、112戸が入居する「シティハウス横濱片倉町ステーションコート」は、神奈川県で初めて農園サービスを取り入れたマンション。徒歩圏内に畑があり、ここにマンション居住者のために8区画(100m2)の畑を確保、農業を楽しめるようにしています。

マンションに関係する新規事業の一つとして始めたもので、特定の居住者が農地を使うのではなく、年間を通じて、種まき、植え付け、収穫、加工品づくり、納涼祭など、月に一度のペースでイベントを開催し、それに居住者が参加する形式です。【画像3】住宅街を抜けると、ありました! シティハウス横濱片倉町ステーションコートの居住者の畑(写真撮影/織田孝一)

【画像3】住宅街を抜けると、ありました! シティハウス横濱片倉町ステーションコートの居住者の畑(写真撮影/織田孝一)

マンションの管理室の神馬康二さんは、「入居者の平均年齢は20代後半から30代、内、6、7割にお子さんがいます」

このサービスは当初、参加世帯数を限定したものだったため、一時は廃止の意見も出たそうです。しかし「子どもを土に触れさせたい」という子連れファミリー層の声も大きく、管理組合が実際に農園サービスを行っている会社(アグリメディア)に相談したところ、現在の「世帯数を制限しない、毎月イベントを開催する」という提案が出てきて、存続させることになりました。

「イベントには毎回、20~30世帯、人数にして40~50人が参加しています。雨のため収穫のイベントができなかったときには、運営側で収穫したジャガイモを袋詰めにして、マンションに置き、希望者に持ち帰っていただき、好評でした」(神馬さん)

このサービスは、農作業を楽しみたい、子どもと共に土に触れたい、という要望以上に、同じマンション住民のコミュニティ意識の醸成に役立っているようでした。【画像4】「ほら、こんなによく育ちました」と、マンションの管理室の  神馬康二さん(写真撮影/織田孝一)

【画像4】「ほら、こんなによく育ちました」と、マンションの管理室の 神馬康二さん(写真撮影/織田孝一)

このマンションを開発した住友不動産は、その後、敷地内に畑(約130m2)を設けたマンション「ココテラス横濱戸塚ヒルトップ」を送り出しました。こうしたタイプのマンションはほかにも増えています。家探し中の方は検討してみる価値がありそうです。

“クワを持ったこともない初心者 ”も安心

今の住まいはそのままに、畑だけを借りたいという方もたくさんいると思います。それなら「シェア畑」を利用するのが便利でしょう。

都市で働く人が農地を借りたいと思っても、従来はなかなかむずかしいのが現実でした。農家にしてみれば、よく知らない他人に土地を貸すのをためらうのは無理からぬこと。だから農家に知人がいるなど、縁があって借りることができたというケースがほとんどでした。

これを誰にでもオープンな形に変えたのがシェア畑です。この事業を展開しているのが株式会社アグリメディア。前述したマンションの農園サービスも同社の協力で実現しました。

シェア畑は、アグリメディアが、地主と畑の利用者との間に入り、貸し農園を代行するしくみです。ですから利用者はアグリメディアと契約し、畑を借ります。基本的に地主と会うことはありません。

シェア畑が従来の市民農園と大きく違うのは、ほとんど手ぶらで参加でき、初心者も楽に作業できることでしょう。筆者も経験がありますが、これまでの市民農園では通常、種や苗、道具を自分で買って運び込まなくてはなりませんでした。ところがこれが重かったり、屋根のある置き場がなかったりして苦労することも。

敷地内に水道やトイレがないことも珍しくありません。栽培のしかたを教えてくれる人もいないので最初は悪戦苦闘。それも含めて楽しめる人でないと長続きしないのです。

しかしシェア畑では、種、苗、肥料は無料で用意されています(化学肥料、農薬は許可していません)。クワやジョウロなどの道具もすべて現地にあり、無料レンタルできるので、運ぶ苦労もありません。また「菜園アドバイザー」と呼ばれる専門スタッフがいて、相談に乗り、講習会なども行うので、まったくの初心者でも安心です。

現在、シェア畑は全国で60カ所以上。その一つ、川崎市多摩区にある「シェア畑 川崎多摩」に出かけてみました。JR南武線宿河原駅から徒歩で7、8分。住宅街を抜けると、府中街道の近くに広い農地が広がります。広さはシェア畑の中でも最大規模の約4800m2で、区画は220ほどあります。

菜園アドバイザーを務める松下公勇さんは、「アクセスが良く、近隣に公営の市民農園がないこともあり、開園してすぐ満杯に。定年後の趣味の一つとして楽しむ方、お子さんと一緒に野菜づくりをしたい30代、40代のご夫婦、介護施設や保育園など、法人契約されるところもあります。ほとんどが徒歩や自転車で30分圏内の方ですね」

賃貸料金は10m21区画で7871円(月額、税抜)。1区画は最大8人まででシェアして使うこともできます。

「初心者の方がほとんどなので、用語から丁寧に説明しています。年に10回ほどの講習会をし、契約されたときにはまず1時間ほどの講習をして、必ずレジュメを渡します」(松下さん)

シェア畑の場合、徹底的に合理化しているので、初心者へのハードルは低く、失敗は少なくなります。ただ、作る品種は運営側が決めるなど、自由度は低くなります。ここをどう考えるかはその人の志向によるでしょう。

「種まきから収穫まで手がけた皆さんが共通して言うのは、無農薬・有機栽培の野菜のおいしさです。スーパーの野菜とはまったく違うと感激するんです」(松下さん)【画像5】「シェア畑 川崎多摩」の菜園アドバイザー、松下公勇さん。ボランティアで「里山を守る会」に入り、地域社会に興味をもったのが今に至るきっかけだったそうだ(写真撮影/織田孝一)

【画像5】「シェア畑 川崎多摩」の菜園アドバイザー、松下公勇さん。ボランティアで「里山を守る会」に入り、地域社会に興味をもったのが今に至るきっかけだったそうだ(写真撮影/織田孝一)

このシェア畑にご夫婦で来ていた60代の男性は「印刷会社の社員でしたが、定年後に新聞記事でシェア畑のことを知り、夫婦で来るようになりました。楽しいですね」。妻は「ここでつくった野菜は本当においしいんですよ」と満足そうでした。

最後に一つ注意事項を。

今まで紹介してきた農園で栽培した農産物は基本的に販売できません。これは法律で定められた市民農園の目的はレクリエーションであって、営利が許されていないからです。収穫した農産物も、自家消費量を超えた分だけを直売所などに置くことはできますが、最初から販売を目的にはできません。最近では、地域によってそれを緩和する動きも出てきているようですが、まずは自家消費を考えて取り組みましょう。●取材協力

・住友不動産建物サービス

・シティハウス横濱片倉町ステーションコート管理組合

・おくたま海沢ふれあい農園(東京都西多摩郡奥多摩町)

・株式会社アグリメディア

・シェア畑 川崎多摩
元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2017/11/145740_main.jpg
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