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ACIDMANのスタンスを見事に注入! 『創』に垣間見る彼らのブレない姿勢

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結成20周年のアニバーサリーイヤーのハイライトとして、11月23日に自身主催のロックフェス『SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI”』を開催したACIDMAN。フェス終演後には、12月13日にニューアルバム『Λ(ラムダ)』のリリース、そして来春からのレコ発の全国ツアーを発表し、決して止まることのない姿勢を見せつけてくれたのには少し驚いたが、考えてみれば何ともACIDMANらしい行為ではあったと思う。思えば、デビュー以来、15年間、休むことなく、音源とライブを継続してきたバンドである。その矜持を改めて見せつけられた格好だ。今回の邦楽名盤は、そんなACIDMANのデビュー作を振り返る。
これだけはおさえたい邦楽名盤列伝! (okmusic UP's)
ACIDMANだから実現できたロックフェス

去る11月23日、さいたまスーパーアリーナにて開催されたACIDMAN主催のロックフェス『SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI”』が大盛況のうちに幕を閉じた。バンド結成20周年を記念して行なわれたフェスで、まさしく彼らの面目躍如と言おうか、ACIDMANというロックバンドがいかに日本の音楽シーンにおいて重要であるか、ACIDMANがどれほど愛されているかがよくわかる見事な公演であった。まず、彼らの20周年を祝わんと集まった面子がすごい。ASIAN KUNG-FU GENERATION、the HIATUS、THE BACK HORN、STRAIGHTENER、10-FEET、Dragon Ash、BRAHMAN、MAN WITH A MISSION、RADWIMPS。いずれも大型ロックフェスで当たり前のようにヘッドライナーを務めるバンドたちである。加えて、アンコールでは東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦、加藤隆志も登場。スカパラのふたりがACIDMAN解散の危機を救ったというのは彼らのファンならばご存知のことと思う。ルーキーの頃からともにライヴハウスを沸かせてきた同世代たち。ACIDMANの背中を見ながらシーンを駆け上ってきた後輩バンド。そして、彼らがリスペクトを公言してはばからない先輩アーティスト。日本を代表するロックバンドがACIDMANを通じて世代を貫き、ひとつのステージに集結したということが、即ちACIDMANの足跡を物語っていたと思う。
自らのスタンスを貫いた20年

しかも…だ。これは失礼を承知で言うが、ACIDMANには誰も知っているような楽曲──TVのワイドショーの常套句である“国民的”なヒット曲があるわけではない(それはこの日、出演したバンドたちも概ねそうで、RADWIMPSの「前前前世」が唯一の例外だろう)。『SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI”』の翌日、それこそ朝のワイドショーでこの日の模様が紹介されていたが、「ACIDMAN主催フェス アジカン・RADら 20周年を祝福」とのキャッチコピーで、“ACIDMAN”の文字よりも“アジカン・RAD”の方がポイント数が大きかったし、映像ではRADWIMPSの扱いがやや濃い印象ではあった。いや、別にワイドショーを揶揄したいわけじゃなく、客観的に考えて、老若男女全方位型の芸能という枠で語るのであればそういう紹介になるのは仕方がないだろう。これも彼らのファンならばご存知のことと思うが、大木伸夫(Vo&Gu)はエンターテインメント色を強める音楽シーンに警鐘を鳴らしてきたミュージシャンである。そして、自らの音源においては、音楽が使い捨てになる傾向とは真逆と言える、芸術性を追求してきたアーティストでもある。メジャーデビューアルバム『創』はチャートベスト10入りを果たし、15万枚を超えるスマッシュヒットを記録したが、大木自身はその好リアクションに居心地の悪さを感じて戸惑ったというから、初期からその姿勢を徹底していた。つまり、(言うまでもなかろうが)彼らの20年は少なくとも狡猾にヒットを狙う…なんてこととはまったく無縁であった。そんなバンドのアニバーサリーが2万人を超えるオーディエンスに祝福されたのである。これは日本のロックシーンの成熟の証とも言えるし、それをACIDMANの信念が促したとも言える。あまつさえ、(紹介のされ方に“?”があったとは言え)その様子がワイドショーで放映されたのだ。傍目には痛快ですらあった。
インストへのこだわりはデビュー作から

そんなACIDMANゆえにこれまで発表してきたアルバムは、作品毎の違いはあるにしてもどれもこれも力作である。いずれも名盤として取り上げてもいいと思うが、結成20周年を迎えた彼らのブレなさを語る上でも、ここは先ほどその名前を挙げた1stアルバム『創』で決めてみたい。【オオキが手掛ける叙情と風景描写が織り交ぜられた抽象的な詞、静と動を生かしたロックサウンドと美しい旋律をエモーショナルに歌い上げるヴォーカル、また、パワーポップ・ガレージ・パンク・ジャズ・ボサノヴァ・ファンク・R&Bなど、様々な音楽の要素を取り入れた楽曲】がACIDMANの特徴と言われる(【】はWikipediaより抜粋)。デビュー作にはそのアーティストの全てがあるとはよく言われるが、ACIDMANもそうだ。分かりやすいところ言えば、のちにインストのベストアルバム『THIS IS INSTRUMENTAL』を発売したことでもわかる通り、彼らにとってインスト楽曲は重要なものであるが、『創』ではM1「8to1 completed」、M6「at」を収録している点がまず挙げられる。繊細さとノイズが同居した「8to1 completed」はまさしく静と動とが端的に表現された印象で、そのスリリングな演奏はアルバムのオープニングから本作のただ事じゃなさを表しているように思える。「at」にはややサイケな雰囲気も加味されていて、彼らがパワーコードだけで迫るR&Rバンドとの違いが明確だ。これだけでACIDMANの何たるかがわかろうと言うものだろう。
キャッチーだが嫌味のないメロディー

メロディーも実に彼らしい。耳に残る印象的なメロディーが多く、キャッチーと言えばキャッチーなのだが、耳をこじ開けて飛び込んでくるというよりは、聴く人に寄り添ってくるような歌だと思う。これは大木の声質によるところも大きいと思う。エモーショナルな歌声ではあるのだが、熱々すぎず、クールに迫るでもなく、何と言うか、ちょうどいい塩梅なのだ(個人の見解です)。例えば、M2「造花が笑う」。Bメロでコーラスワーク(掛け合い?)がある。ここはスタイルだけ見るといかにもパンク然としていて、ちょっと間違うと○○っぽくなってしまう可能性大だと思うのだが、決してそうはなっておらず、かと言って変に落ち着いているわけでもない。M3「アレグロ」も同様。パンクっぽいリフレインのサビ、その昇っていく旋律は絶妙だと思う。よくできている。白眉はやはりM4「赤橙」であろう。今もACIDMANを代表する曲である「赤橙」のどこか和風で、ノスタルジックさをたたえたようなメロディーは聴き手を選ばず、汎用性も高いと思う。間違いなく名曲である。このM2「造花が笑う」、M3「アレグロ」、M4「赤橙」はプレデビューシングルとして、アルバムに先駆けてプレデビューシングルとして連続リリースされた楽曲で、しかもこの順に、ほぼ1カ月毎に発売された(しかも各300円という破格の料金での販売だった)。つまり、M1「8to1 completed」に続いて、先行シングルを立て続けに収録したことになる。この辺をして狡猾と揶揄する意地悪な見方もあるようだが、それはお門違い。もっとも自信のあるものをダメ押しするかのような攻めたスタンスはむしろロック的だろうし、ヒットシングルが固まっているアルバムは古い洋楽的で好感が持てると思う。その他、M8「香路」なども叙情的なメロディーが発揮されており、ACIDMANのメロディーメーカーとしての優秀さが分かるところである。
3ピースならではのサウンドを堅持

サウンドも多彩だ。とは言っても、基本的には3ピースを堅持しているので、外音が豪華だとかいうことではなく、ギター、ベース、ドラムでいかにさまざまな情景を出すかといったサウンドメイクがなされているような気がする。ボサノヴァタッチのギターが聴けるM4「赤橙」とM8「香路」。90年代らしいノイジーさが発揮されたM5「バックグラウンド」とM7「spaced out」。疾走感と躍動感のあるバンドサウンドが強調されたM9「シンプルストーリー」とM10「SILENCE」。いずれも趣向と工夫を凝らしていることが分かる。また、それでいてアルバムのラストがM11「揺れる球体」とM12「Your Song」で締め括られているのも興味深い。「揺れる球体」は所謂ミクスチャー、「Your Song」はストレートなパンクチューンだ。意外と…と言うとアレだが、それまでのバンドアンサンブルに比べればいずれも大分シンプルではある。それこそ、その後、積極的に外音を導入したり、シングルのカップリングでは“second line”と称して、ゲストミュージシャンを迎えて既発表曲のリアレンジをしたり、アレンジに関しては積極的に行なっているACIDMANだが、そうは言っても、前述した通り、基本は3ピースのロックバンドである。「揺れる球体」や「Your Song」はそのバンドとしての矜持が垣間見えるようでもある。「Your Song」は今もライヴでの定番であり、『SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI”』も「Your Song」でフィナーレを迎えたとのこと。メジャーデビューから15年を経ても、デビューアルバム収録曲でライヴが締め括られるというのは、何よりも彼らのスタンスがブレていない証拠だろう。
文学的な香りも漂う余白多い歌詞

最後にアルバム『創』収録曲の歌詞について少しだけ。ACIDMANのリリックは確かに概ね抽象的というか、明確なものを伝えようとしていないというか、少なくとも何かを啓蒙しようというものではないようだ。

《眠りの浅い朝の回路 埃にまみれてるカイト/フワフワの音が眠ってる/そこはかとなく日々は続き/左利きの犬がまさに 片足引きずり笑ってる》(M4「赤橙」)。

《無愛想に この嘘に あの音に この音に》《バックグラウンドに隠れて/バックグラウンドで息を吸う/バックグラウンドに響く鐘が/バックグラウンドで答えを知って》(M5「バックグラウンド」)。

《何もないそして揺るがない 波は揺れる 世界歪む/波は揺れる 世界歪む 音が誘う 月が宿る/spaced out spaced out spaced out》(M7「spaced out」)。

《Deep forest why do you stay?/求め続ける我が身と/灯り続ける誇りと》(M10「SILENCE」)。

だが、それ故に、リスナーの思考の余地が大分あるのもこれまた確かなことで、この辺は優れた文学作品のようでもある。また、その一方で、どう仕様もなくあふれ出てくる前向きさ、力強さというものもあって、そこではロックバンド=ACIDMANの揺るぎない精神を感じざるを得ない。以下、そんな歌詞を記して本稿を締め括ろう。

《錆出すこの音 未だ止まぬレクイエム/震えてる暇など 無いくらい判るだろう/立ち止まると勝てぬだろう 勝ち誇ると果てるだろう/アレグロの鐘は響く 強く強く鳴り響く》《その音は輝いて 形など切り裂いて/いつか先を照らすように 力強く照らすように》(M3「アレグロ」)。

《色付く世界の片隅で震えてる腕で花を抱く/壊れてしまわぬようにと崩れてしまわぬようにと》《君はうつろな眼とかすれきった声でこう呟く/「未だ花は咲いていますか」と「その手で抱いていますか」と》《行こう、次の世界へ 僕は爪を剥がして空を掴んで》(M9「シンプルストーリー」)。

《揺れている 触れている 重ねる事はできぬから/遠くなる 流れてく 今は変わらぬようにと願う/美しくあれと願う 日々、強く抱く》(M11「揺れる球体」)。
TEXT:帆苅智之
アルバム『創』
2002年発表作品

<収録曲>

1.8to1 completed

2.造花が笑う

3.アレグロ

4.赤橙(せきとう)

5.バックグラウンド

6.at

7.spaced out

8.香路

9.シンプルストーリー

10.SILENCE

11.揺れる球体

12.Your Song
 (okmusic UP's)

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