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ビンテージ文化に学ぶストーリープランニング──IoT時代の「モノ」プランニング

ビンテージ文化に学ぶストーリープランニング

今、世界的なビンテージブームが訪れていると言われていますが、日本でも古着や中古レコード、中古カメラなどが再評価され始めています。

このような動きは、社会情勢とも無縁ではないのかもしれません。まずは、ビンテージについての定義・認識について整理してみましょう。

●本項におけるビンテージの定義

米国税関は「アンティーク = 製造から100年を経過し、修復後も元の特徴を50%以上保持しているもの」と明確に定義しています。一方、ビンテージの定義は、より曖昧で各業界が独自の慣習に従っているというのが現状のようです。

もっとも、本章のねらいは、時の経過とともにモノが帯びていく価値について考察することであり、古物商の定義を詳細に掘り下げることではありません。従って、「ビンテージ = 一定の年月が経過して程良く味わいが出た逸品」と一括りに定義しています。

●ビンテージは誰のもの?

イギリスのタブロイド紙、Daily Expressに興味深い記事がありました。イタリアのBocconi大学の実験研究結果が引用されており、昨今のブレグジット、核の脅威、ドナルド・トランプのアメリカ大統領就任など未来に対する不安定な要素が増長されている。その結果、それに反発するかのように人々は揺るぐことのない過去に対して想いを強める傾向にあるというものです。

これまでのところ、ビンテージはハードウェアが持つ独自の価値でした。

しかし、一時期のiOS、Android用のビンテージ風スキンの流行、僕自身も使用しているタスク管理ツールTrelloにも放置された未更新の付箋が色褪せるという仕掛けがあったり、ソフトウェアシンセサイザーでもビンテージ風のGUIが多数存在したりする様子を見ると、ソフトウェアデベロッパーもビンテージに関心がゼロというわけではなさそうです。

IoT時代を迎え、ソフトウェアとハードウェアの境界がより不鮮明になる中、ビンテージについてハードウェアだけではなくソフトウェア界隈も巻き込みながら今よりも活発に議論が展開されるようになるかもしれません。

そこで今回、皆さんと一緒にビンテージやその背景に付いて考えてみるのも面白いのではないかと思った次第です。

ビンテージ楽器の持つ魅力と問題点

ビンテージと聞いて何を思い浮かべるでしょうか?語源となったワインは欠かせないという人もいるでしょうし、家具、洋服、人形、ジーンズ、オーディオ、カメラ、衣料品、車などを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

楽器にもコルグ MS-20、VOX V846、Arp Odyssey、ローランド TR-808、ヤマハCP-70などビンテージと言われるものが数多く存在します。僕自身もローランドのビンテージリズムマシン、TR-707を購入した経験があります。

当然、その音色はリアルなものではありますが、長年の使用に耐えながら劣化を重ねた楽器ゆえにノイズにも悩まされ、各ドラムキットの音色を変えようにも今ほどパラメーターが用意されておらず、ボリュームしか変えられません。フレーズを保存する記憶メモリーも壊れており、徹夜で作り上げたフレーズが唐突に消えてしまうこともあるなど、いつもヒヤヒヤしていました。

当時、TR-707のサンプリングCD(実機で再生したリズムパターンやスネア、タム、ハイハットなどの単音をノイズレスの良質な状態でCDに収録した音源素材集。音源素材をシーケンサーと呼ばれる機材で並べて再生することで独自のリズムパターンを構築できる)も販売されていました。

結果としてTR-707がサンプリングCDに置き換わったかというとそうではなく、その後も長らくTR-707は僕のスタジオに居座り続けたのでした。

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