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効率化だけじゃない。取引の安全性を飛躍的に高める「不動産テック」

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効率化だけじゃない。取引の安全性を飛躍的に高める「不動産テック」

情報の非対称性や取引の不透明さを払拭する不動産テック

最もデジタル化が遅れていると言われる不動産業界。ここにきて、ICT技術と不動産を融合させ、新たな価値を提供しようとする「不動産テック(リアルエステートテック)」が活発化しています。

多くのサービスが始まっていますが、それらは大きく①不動産評価、②取引、③業務の3つの領域を改善・高度化するものとされています。

具体例として、①はビッグデータを使ってAI(人工知能)が不動産価格を評価するサービス、②は売主(貸主)と買主(借主)を直接マッチングする場を提供するサービスなどが挙げられます。

また、③ではVR(バーチャルリアリティー)を使い遠隔地から内覧するサービスや、ブロックチェーン技術を用いた契約「スマートコントラクト」などもあります。

消費者としては不動産取引の利便性が向上し、効率的な取引が行えるようになるといえますが、それ以上に情報の非対称性や取引の不透明さを払拭するサービスでもあり、不動産取引の安全性を飛躍的に高める効果が期待されます。

価格の透明化が物件の理解を深める。優良中古住宅の増加も期待

不動産テックで最も期待されているのが、不透明で分かりづらいといわれてきた不動産価格の透明化といえるでしょう。不動産価格は一つの物件であっても評価の仕方によって4つの価格があるといわれ、一物四価とも呼ばれます。

個別具体的に特定の物件の価格を査定する場合、その値付け方法がより複雑になり分かりづらい印象を与えるのはやむを得ません。実際に、経験や勘に頼った査定を行うことも少なくないようです。

そこで、不動産テックではAIが独自のアルゴリズムを用いて、ビッグデータを解析することで不動産価格の透明化を図っています。

ここで注意したいのは、不動産の “正しい価格”を一つに決めることが目的ではないことです。

複数の視点で価格の妥当性を検証することで、不動産そのものの理解が深まり、より安全性の高い取引の実現や優良な中古住宅のストックの増加にまでつながることが期待されます。

例えば、住宅履歴情報やインスペクション(建物状況調査)の結果をうまく価格に折り込むことが可能となれば、価格を通じて建物のリアルな状況を売主・買主双方が半ば自動的に理解できるようになります。

買主としては、価格形成を通じて建物のメンテナンス状況を知るきっかけになります。売主としても、高値売却を目指して自宅を適切に管理するインセンティブに繋がり、中古住宅の管理の適正化が図られるという好循環を生む効果があるのです。

利便性の向上のみならず、安全な取引に直結するIT重説やVR内覧

不動産テックでは、インターネットを介した重要事項説明が期待されるなど、オンライン上で取引業務を実施することも一部解禁されています。これは業務の効率化や取引の利便性に貢献しますが、それだけではありません。

重要事項説明は、契約前に不動産取引の重要な項目について、宅地建物取引士が説明するものです。現在は、契約当日に初めて重要事項説明書を買主が受け取り、それを基に専門的な説明を聞くことが少なくありません。

買主は「まあ不動産取引はこんなものかな」という程度の理解で、重要事項説明書にハンコを押し、その直後に契約の締結に移るといった危険な取引が行われる可能性があるのです。

これに対し、ITを通じて説明が行われる場合、事前に重要事項説明書が送付されることになり、あらかじめ買主側でチェックすることができます。

また、オンライン上での説明を録画することは容易にできるため、宅建士による説明を一言一句、記録に残せます。「言った」「言わない」のトラブルを未然に防止する効果があり、なにより記録が残されることで、説明者である宅建士はより一層緊張感を持ち、分かりやすい説明を心掛ける動機づけがなされるでしょう。

VR内覧においても、気軽に繰り返し内覧できるようになります。営業担当者によるその場の誤魔化しや、買主の記憶や印象を頼りとした購入判断を抑える効果があり、冷静で後悔のないマイホーム購入に貢献するでしょう。

成約価格を隠したがる日本、データ整備に大きなハードル

このように、テクノロジーを使うことで不動産取引の利便性が向上し効率化するとともに、副次的な効果として危険な取引を排除する効果が期待されます。一方で、今後日本で不動産テックが広く普及するための大きな課題の一つがデータ整備です。

例えば、日本では売主と買主の間で合意した実際の成約価格(取引価格)を網羅的に得ることが難しい状況にあります。そのため、現在提供されている相場情報サイトや価格査定サービスのほとんどは売主の希望価格である「売出価格」を基に計算されるなど、AIの査定にも限界があります。

過去には国が透明度の高い不動産市場を作るべく、実際の売買価格を公開することを検討したことがあります。しかし、「成約価格は個人情報」という国民感情に配慮し、いまだ実現に至っていません。

また、不動産業者専門の情報ネットワークである「REINS」では、取引終了後に遅滞なく成約情報を登録することが仲介業者に義務付けられているものの、厳格な罰則がなく未登録情報も少なくないと推定されています。

これまで、情報の非対称性によって儲けてきた不動産業者は、どうしても情報の透明化に後ろ向きなのです。

消費者にも業界にもメリットをもたらす情報共有。今後の進展に期待

隠ぺい体質の不動産業界に対しては、不動産テックによって取引が透明化することは自社の利益を損なうものでは決してないことを周知する必要があるでしょう。

むしろ取引のリードタイム短縮や市場の拡大が見込め、業界全体で取り組むことで大きなメリットが得られるという認識を共有したいものです。

例えば、情報が整備されることで不動産価格が網羅的かつリアルタイムに知れ渡るようになれば、「いつ自宅を売ればいいのか」を消費者が判断しやすくなります。これは潜在的な自宅売却者層を掘り起こす契機となり、不動産業者としても売却案件を取りやすくなるメリットがあるでしょう。

また、全国の成約価格が漏れなく取得できるようになれば、価格査定が信頼性を増したり、不動産価格のメカニズムが解明されることでフェアな取引が増えたりするなど、消費者にとっても多くのメリットがあります。

消費者も不動産業者も、不動産テックの基礎となる情報を共有し、データ整備をしていくことは、まわりまわって自身に利益を呼び込むのです。

いくつかの課題はあるものの、業界の垣根を超え、そして消費者も巻き込むことで不動産取引を根本から改革する可能性を秘めた不動産テック。今後も大いに注目していきましょう。

(加藤 豊/不動産コンサルタント)

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