中国・東北出身のご夫婦が作る「餃子王」のとぅるんでむっちむちな水餃子には家族の歴史あり
日替わり水餃子はどれも個性豊か!
こんにちは。
メシ通レポーターのライター・泡☆盛子です。
日に日に寒さが増す今日この頃、恋しいのは湯気がたつアッツアツの料理。
今回ご紹介するのは、まさにホフホフ言いながら食べて欲しい絶品水餃子です。
中国・東北出身のご夫妻がひとつずつ手作りしたもっももちの水餃子が、心の奥までじ〜んわりと温めてくれるんですよ!
店内はカウンター席と奥に靴を脱いで上がる座敷席を備えています。
フルオープンの厨房では、ワン シーザイさんと奥さんのクィジュさんが仲良く立ち働いています。
品書きには水餃子が3、4種類と自家製麺、炒め物やチャーハンなどの単品料理がそれぞれ日替わりで登場。
ワンさんたちは日本語が話せないので、お店にお二人しかいない時はメニューの上にある番号を卓上のメモに書いてオーダーするというスタイルです。これ、覚えておくべし。
流暢に日本語を操る息子さんが在店する時なら口頭で注文OK!
今回も息子さんに通訳をお願いしています。
ちょうど餃子を包み始めるところだったので見せていただきました。
麺棒を器用に操り、2枚同時にくるくると延ばして行くクィジュさん。
「これは母の方がうまいんですよ」と息子さん。
よく見ると、皮の縁が内向きになり中央が窪んでいますね。
「この形にすることでスムーズに手早く包めるんですよ。水餃子はヒダをつけると重なった部分が硬くなってしまい食感がよくないので、なるべくヒダをつけないように包みます」
なるほど〜、確かにクィジュさんは手のひらをきゅっと握るようにして仕上げています。
打ち立てで水気を含んだ皮を使うおかげか、縁に水をつけなくてもちゃんと口が閉じているのが本場っぽい!
これをゆでること数分。
できあがりです!
ツヤァァァ……
とぅる……ん……
むっちむち!
▲粗びき肉の水餃子 500円(7個)
舌の上を滑るほどなめらかな皮に歯を立てると、むちっと弾んだのちに中から肉々しい餡が!
肉じゅわの野菜シャク〜。
見事なバランスです。
あんにしっかりと下味がついているので何もつけずに食べるのが正解。
もむもむと食べていくと最後に皮の部分だけが残るのですが、これがまた素朴でうまいこと!
この餃子は豚バラ肉と肩肉、2種類の豚肉を使い、半分はミンチにして残りは塊肉を荒くたたくことで食感に奥行きを出しているのだそう。めっちゃジューシーですわ。
野菜はネギ、玉ネギ、白菜を大きな中華包丁2刀立てで刻んだもの。
「この包丁だと野菜から余分な水分が出ないのでいいみたいです」
続いては……
▲エビの水餃子 600円(7個)
うっすらと色がついているのは、エビの色に合わせて生地をほんのり赤く着色しているから。
お客さんに「どの餃子も見た目が同じやから途中でわからんようになる」と言われたのをきっかけに、ニンジンの絞り汁を使って色をつけているのだそう。
これは……めっちゃエビ! ひたすらエビ!!
具はエビと香味野菜(バジル、大葉、ネギなど季節により変更)のみ。
味付けは塩コショウだけとシンプルで、エビの風味を最大限に引き出しています。
ぜいたくだなぁ。
お次は食いしん坊たちに大評判の一品。
▲ラム肉パクチー水餃子 600円(7個)
ひゅー、ナイスむちむち!
こちら、個性×個性という最高の掛け合わせ。
ぶわっと立ち上がるパクチーとラムの香りにうっとり。
雄々しいという言葉が似合うワイルドな味わいです。
クセのある食材を存在感たっぷりの皮がうまく包み込んでいるのがとってもイイ!
朝イチの取材でなければ紹興酒をイッときたいところ。ぐぐぐ。
いやぁ、本当においしい!
おなかが落ち着いたところで、改めてお話をうかがいます。
母の味を携えて、はるか日本へ
話は遡って今から60年ほど昔、シーザイさんのお母さんは中国の東北地方で蒸しパン(現地では饅頭と呼ばれる主食)と水餃子の屋台を営んでいました。
長男のシーザイさんをはじめとする6人兄弟を養うため、女手ひとつで朝から晩まで働くお母さん。
10代のシーザイさんは懸命にお母さんを助け、20代の後半までその生活は続きました。
家族が落ち着いたころにシーザイさんは夜間大学へ通い、就職。努力を重ねてエンジニアの職を得たのです。
その間、同じ会社にいた8歳下のクィジュさんと恋をして結婚。一人っ子の息子さんが生まれます。
息子さんが大きくなる頃にはお母さんはお店に立つには体力的に厳しい歳になっていたため、クィジュさんが仕事と子育ての合間に手伝うようになりました。
息子さん曰く、「母はこの時に水餃子の作り方をしっかりと身につけたようです」。
時は流れ、息子さんは日本人の女の子と出会い、結婚。お子さんにも恵まれて、シーザイさんとクィジュさんを日本に呼び寄せていましたが、来日時、中国でシーザイさんのお母さんが亡くなってしまいます。
死に目にあえなかったことを悔やんで悲しみに暮れ、引きこもり状態になってしまったシーザイさん。
それを案じた息子さんが「いっそ日本に来て、お母さんの水餃子をお店で出してみたらどうか」と提案。
それを受けてご夫婦で来日し、2013年に「餃子王」をオープンするに至ったのです。
水餃子のレシピは、シーザイさんのお母さんのものほぼそのまま。
日本から遠く離れた中国、東北地方の味がしっかりと再現され、その素朴で優しい味わいが多くの人の心を捉えています。
「味に影響を受けると困るから、と今ではほぼ外食をしない両親ですが、お店を始める前に一度だけ『餃子の王将』に行ったことがあるんです。そしたら『餃子のレベルが高い! やっぱりお店やるの辞める!』と腰が引けちゃって。必死で説得したんですよ(笑)」
あぶね〜。
まさかの理由で、このおいしい餃子が京都に誕生しなくなるところだったとは。
よくぞ説得してくださった!
「現在、父は72歳、母は64歳ですが、体力が続く限りお店に立ちたいと言っています。日本語が話せない自分たちなのに、お客さんはみんな優しくて毎日とても感謝しているそうです。最近は日本語を覚えるために二人で勉強を始めたんですよ」とうれしそうな息子さん。
たしかに、これまでは「ごちそうさまー」に笑顔だけ返してくれていたお二人が「アリガトウゴザイマシター」って言ってくれてる! 私までうれしい!
「実は妻の実家が滋賀県の高島で農園を営んでいて、野菜はほぼそこの無農薬野菜を使っているんです。両親はこの野菜を使ってもっといろんな料理を提供したいと言ってますね。餃子以外にも、二人の得意料理はたくさんあるのでぜひ実現してほしい」
それも楽しみ!
でも水餃子もずっと食べ続けたいので忘れずにお願いします。
最後に、餃子以外のおすすめ料理からも2品ご紹介しましょう。
▲日替わり自家製麺の一例、紅油麻醤麺 650円
自家製のプリッとした麺に、これも自家製のゴマだれとラー油を合わせたシンプルなあえ麺。辛さよりも幾層にも重なった風味が印象的。
▲ラム肉のスパイシー炒め 1,200円
中国・東北地方の郷土料理。唐辛子とクミンというスパイスでラムのクセを消している。
ラムの野趣がいい感じに残ってかみ締めるほどにうまい。さ、酒もってこーい! てな味。たまらん。
京都にいながらにして、中国の地にトリップしたような気分になれる「食」と「空気」がこのお店にあります。
(今はまだ)言葉が通じなくても伝わるワンさん一家の温かなお人柄が、底冷えの京都でもきっとあなたの心をほんわかさせてくれるはずです。
お店があるのは、岡崎エリア。
平安神宮や京都市動物園がある人気の観光地でもあります。
最寄駅は地下鉄東西線の東山駅。②出口を出て左へ進みます。
東大路通と三条通が交差する「東山三条」から東大路通を北へ。
バス停でいうと、市バス「東山二条・岡崎公園口」が最寄。
小さな橋を渡ったらもうすぐ!
お店は「京都銀行」の手前にあり、赤いパンダ模様ののれんが目印です。
お店情報
餃子王
住所:京都府京都市左京区岡崎徳成町28-22 聖護院ビル1F
電話番号:050-3692-5499
営業時間:12:00〜14:00(土曜日のみ営業)、17:00〜21:30(LO)
定休日:日曜日・月曜日
※本記事の2017年10月の情報です。
※金額はすべて消費税込です。
書いた人:泡☆盛子
ライター。沖縄出身、京都在住。京都の水というか食がカラダに合い、48kg肥えたのが自慢。立ち呑みと、おかずケース食堂での昼酒が好き。
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