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Interview with DECLAN O’DONOVAN about 『Broken Sky』

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カナダはユーコン出身のシンガー・ソングライター、デクラン・オドノヴァン。トム・ウェイツやランディ・ニューマンも引き合いに出されるオドノヴァンだが、2作目となる5年ぶりのニュー・アルバム『ブロークン・スカイ』では、プロデューサーにパトリック・ワトソンなどの作品を手がけるジーン・マシコッテを招聘。ブルースやフォーク、ジャズといったアメリカのルーツ音楽の流れを汲んだ滋味深い歌心はそのままに、アンビエントな奥行きもたたえた音世界を聴かせてくれる。ウィルコやファーザー・ジョン・ミスティにも連なるオルタナ・ルーツ系~モダン・アメリカーナな魅力に満ちた一枚だ。オドノヴァンはこの夏、今作のリリースに併せてフジロックへの出演&単独公演のため来日。ピアノの弾き語り形式で行われた2年前の公演とは一転、バンド・セットによる素晴らしいパフォーマンスを披露したオドノヴァンに話を聞いた。

ーー今回の『ブロークン・スカイ』は5年ぶりのニュー・アルバムになるわけですが、どんな作品になりましたか。

DECLAN「今回は一言でいうならチャレンジだったよね。曲作りにしても、音作りにしても、今回は自分が今までやってきたのとはまた違う感じでってことを意識していたし、その結果、前回よりもぐっとコンテンポラリーな音になってる。スティール・ギターを使ってみたりして、サウンドの幅もだいぶ広がってるよね。歌詞についても、パーソナルな内容からより普遍的な内容へと広がってるし、そういう意味で、今回のアルバムが自分にとってどんな意味を持つのかで言ったら、チャレンジだったよ」

ーーコンテンポラリーな音を意識した理由は?

DECLAN「自分がそういうものに影響を受けてきたからだよ。前回のアルバム(『デクラン・オドノヴァン』、2012年)は正統派というか、それこそブルースにまで遡るようなトラディショナルなスタイルが基本になってるんだけど、自分がもともと影響を受けてる音楽はもっとモダン寄りの、それこそ現代のロックとかオルタナティヴ・ロックが中心だったりするから。たしかに曲作りに関していうなら、正統派でトラディショナルなソングライターからの影響が強いけど、サウンドに関していうなら、モダンでコンテンポラリーなアーティストからの影響のほうが強いから、今回そっち方面をもっと開拓していこうと。それが今回のアルバムの目的の1つだったんだ」

ーーその影響を受けた「モダンでコンテンポラリーなアーティスト」というのは、具体的にどのあたりですか。

DECLAN「今回、カナダのモントリオールで作品を作ってるんだけど、モントリオールには素晴らしい音楽シーンがあって、自分もまさに影響を受けていて。それがパトリック・ワトソンでありバー・ブラザーズであり、今回のアルバムでも共演させてもらってるんだけど、かれらのスタイルにインスパイアされている。トラディショナルなロックを土台にしつつ、アコースティックな音でも十分成り立たせるだけのしっかりした演奏力と音楽性があって、モダンでコンテンポラリーなレコーディング方法だったりシンセサイザーなんかを取り入れたりしているところに共感してるんだ。それから今回フジロックでもすごく楽しみにしてるんだけど、ファーザー・ジョン・ミスティやクイーンズ・オブ・ストーン・エイジとかさ。ハード・ロックだろうがフォークだろうが、かれらの音楽は圧倒的な曲の良さと演奏力に支えられているわけで、そこは自分が大切にしているところでもあり目指しているところでもあるんだよ」

ーーいま名前の挙がったファーザー・ジョン・ミスティはビヨンセの新作に参加していたり、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジはマーク・ロンソンとアルバムを制作したりと、最近はジャンルやフィールドを越えたコラボレートが盛んですよね。そうした動きに刺激を受けたりする部分もありますか。

DECLAN「まさにいま言った、優れたソングライティング力とミュージシャンシップってとこに尽きるよね。それが基本にあれば、どんなジャンルにも応用できる。ファーザー・ジョン・ミスティがビヨンセから作曲依頼があるってことは、それだけ説得力のある曲を書いてるってことの証だし、しかも作品も斬新でライヴ・パフォーマンスも素晴らしいからね。クイーンズがマーク・ロンソンみたいなメインストリームのアーティストを手掛けているプロデューサーとタッグを組んだっていうのも面白いしさ。クイーンズだったら、ロックだろうがポップだろうが、どんなプロデューサーとでもできただろうけど、そこであえてファンキーなサウンドを持ったマーク・ロンソンを起用したっていうのが面白いよね。クイーンズはたしかにハード・ロックなんだけど、ダンス・ミュージックとしても機能してるんだよね。クイーンズのライヴってむちゃくちゃ踊らせるしさ。それができるのは、さっき言ったミュージシャンシップに支えられてるからだよね。ジャンルを問わず、いい曲が書けるかどうかってとこが音楽の作り手としての肝だからね。他人がカバーしようが、バンドで演奏しようが、アコースティック・ギター1本だけで演奏しようが、確実に聴かせられるっていうのがソングライティングの基本だから」

ーー前作で証明されたオーセンティックなソングライティングの魅力に加えて、今回の『ブロークン・スカイ』では、とくに“Down To The Bottom”や“Broken Sky”を聴くと音の響きやプロダクションの部分でとても洗練された印象を受けます。

DECLAN「ファーストのときは、あまり手広く色んなことに手を出すのは避けてたとこがあったんだよね。あくまでも基本に徹するというか、曲作りに重点を置きたかったんだ。前回はあえてスタイルを限定していたとしたら、今回はもっと自分の音楽世界を広げていこうとしてる。それがさっき言ったチャレンジってとこにも繋がってきてて、今回はメロディでもすごくチャレンジしてる。そこからメロディに広がりが出て、それに引っ張られるような形で楽器のアイディアについても、ペダル・スティール・ギターだとか、今まで使ったことのないシンセサイザーを使ってたりして、メロディのアイディアを広げていった感じなんだ。“Broken Sky”なんて、まさに良い例で、メロディックなインストゥルメンテーションが中心になってるんだけど、ファーストではあえてああいう方向にはいかなかっただろうね。今回そこを掘り下げているという。ソングライティングって、メロティとハーモニーと歌詞の三位一体から成り立ってるわけで、今回は、その3点に同じだけの重点を置きたかったんだ」

ーージーン・マシコッテがプロデュースすることになったきっかけは?

DECLAN「もともとかれの手掛けた作品のファンで、とくに2000年代初期に出たラサ(Lhasa)っていうアーティストの作品が好きなんだ。本当に魅了されるというか、声がまた素晴らしくてね。あまりにも独自の世界観を作り出してるんで、この世のものとは思えないような音楽が展開されていて……そういう音楽における神秘性みたいなものに惹かれるんだよね。しばらくの間、作者やどうやってこの音楽が作られたのか、そんなことも考えられないくらいその世界に浸ってしまうというか。で、後になって、かれがパトリック・ワトソンやアレハンドロ・リヴェラみたいなアーティストの作品も手掛けていることを知り、普通にこっちから連絡したらメールで返信があって、お互いに音楽の趣味が似てることも知ったりして。しかも自分も昔モントリオールに住んでたから、もともと愛着のある土地ってこともあったしね。モントリオールみたいな素晴らしい音楽シーンのある街でレコーディングできて、本当に特別なレコーディングになったよ」

ーーちなみに、あなたの地元であるユーコンの音楽シーンってどんな感じなんですか。

DECLAN「とにかく、小さい(笑)。一番大きな町がホワイトホースっていうんだけど、それもとにかく小さくて、すごく孤立しているというか、北の外れにあって、寒くて、あんまり陽が射さないんだ(笑)。東西南北のどこへでも10分も車を走らせれば、山や川や湖なんかの大自然のど真ん中にいるっていう感じで。ただ、音楽シーンは地元の人達の応援もあって田舎のわりには充実してるんじゃないかな。地元のコミュニティなんかで演奏する機会もわりとあったりしてね。その大都会と田舎町のギャップが好きなんだよね。モントリオールみたいな都会にいるときは地元のユーコンののんびりした感じが恋しくなるし、ユーコンにいるときには都会の刺激が恋しくなるっていう。その両方の振れ幅を経験するっていうのが、作曲をする上ですごく役に立ってるんじゃないかな。ユーコンは少しのんびりして、何か1つのことに集中するのには良い場所だよ。小さくて、暗くて、寒くてね(笑)」

ーーユーコン特有の音楽とかサウンドとかってあるんですか。

DECLAN「うーん、どうだろう? それを言うなら、サウンドというよりもテーマかな。そもそもミュージシャンの人口自体が少ないんで、似たような音楽を作っているっていうよりは、まわりの環境だとか物の見方とか視点みたいなところで共通点があるんじゃないかな。さっき言った暗くて、寒いってとことか(笑)。サウンドでいったら、もう本当にいろいろで、ヒップホップもあればインディーもあればフォークもあるし、みんなそれぞれいろんな音楽をやってるけど、テーマの上では共通しているんじゃないかな。孤立や疎外感なんかもそうだよね。良くも悪くも、まわりの世界から疎外されているところだから、都会の喧噪を離れてユーコンに移り住む人もいるくらいだし。だから、そうした独特の視点とか空気感が音楽にも共通して出てるんじゃないかな」

ーーあなたの音楽についてはトム・ウェイツやランディ・ニューマンが引き合いに出されることが多いと思いますが、実際のところロール・モデルとなったアーティストとなると、どのあたりになるんですか。

DECLAN「ものすごく早いうちから、自分はミュージシャンになろうと思ってて、それこそ目標になるミュージシャンが見つかる前から、自分はミュージシャンになるんだって決心したくらいで。小さい頃からピアノのレッスンを受けてて、もともとトラディショナルなジャズやブルースからスタートして、ものすごく初期のルイ・アームストロングとか、あの時代のアーティストの音楽が身近にあって。ただ、本格的にアーティストや作品を知るようになる前から、自分はミュージシャンになるんだと思ってたんだ。むしろ影響を受けるアーティストや音楽に出会うまでが長かったくらいで、それこそいま名前が挙がったトム・ウェイツやランディ・ニューマンなんかにはものすごく影響を受けてるよ。ただ、もともとはピアノや楽器への興味から始まったというか、具体的なアーティストや作品を知るよりも、音楽やサウンドそのものに惹かれていたんだ」

ーーいわゆるロック・バンドとかポップ・ミュージックみたいなものも聴いていた?

DECLAN「まあ、10代の頃には自分と同世代の人間なら誰もが通ってたであろう、ニルヴァーナやパール・ジャムやサウンドガーデンなんかのグランジに夢中になってたし。ただまあ、うちは厳格なアイルランド系カトリックの家だったんで(笑)、父親がロック嫌いだったから、隠れて聴いてたり(笑)、他の同級生みたいにロックTシャツを着たりとかはできなかったけど。ただ、グランジ時代のバンドってやっぱり最強だよね。最近になって、またサウンドガーデンなんかを聴き返してるんだけど、やっぱりいいなって思うしね」

ーー歌詞の部分で影響を受けたミュージシャン、あるいは作家ってなると誰になりますか。

DECLAN「たくさんいるけど、歌詞について意識するようになったのはだいぶ後になってからで、ほら、自分も10代の頃はクソみたいなバンドをやってたわけで(笑)。ただ、曲作りっていうものにもう少し意識を向けるようになったときに、すごく影響を受けたのはトム・ウェイツ、ランディ・ニューマン、ボブ・ディランの3人だろうね。いまだにものすごく影響を受けてるし。音楽性っていうのはサウンドや音楽やプロダクションだけじゃなく、歌詞の中にも宿るものなんだってことを思い知らされたよね。歌詞が音楽にとってどれほど働きかけるのかっていう。もちろん、言葉としても素晴らしいんだけど、歌詞の中からも立ち上る音楽性の部分に惹かれるんだよね。そういう意味で、歌詞もサウンドや音楽と同じくらいに重要なんだってことを教えてくれたのはその3人だね。いまどきのポップやロックもよくできてはいるし、いいとは思うんだけど、そこまで強烈には響いてこなかったりして……要するに、ストーリーを感じるかどうかなんだよね」

ーー先ほど、厳格なカトリック系の家庭で育ったと話していましたが、そのことが現在の自分のソングライティングに影響を与えている部分もあると思いますか。

DECLAN「そうだね。聖書の中に登場する聖人とか、罪悪感についての考え方とか(笑)、やっぱり惹き付けられるものがあるよね。聖書も結局、1つのストーリーを伝えているわけだから。自分はとくに信心深い人間ではないけど、そういう教えをベースに育ってるっていうのがあるから。キリスト教に限らず、世の中の体系だった宗教って、やっぱり1つのスケールの大きな物語を軸にしているし、それはやっぱり強く惹かれるものがあるよ。その物語を信じるかどうかは別にして、壮大な1つの世界観を描いているところとか。物語に登場する聖人達も強烈なキャラクター揃いだしさ。そういう意味で、やっぱりいまだにカトリック的な世界観から影響を受けてるんだろうね。自分の家族だったりまわりの人間がカトリック的な考え方から強かったりするから。いまだに自分の人生にとって重要な一部を形成していることはたしかだよ」

ーー影響を受けたソングライターとして名前を挙げてくれたボブ・ディランの有名な言葉で、「今の時代に何が起きているのか知りたければ、音楽を聴く必要がある」というのがありますよね。仮にもし同じことがあなたの音楽にも当てはまるとしたら、今回の『ブロークン・スカイ』というアルバムには今の時代の何が映し出されていると思いますか。

DECLAN「その問いに対する答えは2つあって、まず一番最初に主張しておきたいのは、それを答えるのは自分の役目じゃないってこと(笑)。その作品から何を感じるかは完全にリスナーの自由だからね。曲についてあまり詳細に説明することはしたくないというか、そうすることでリスナーが自分なりに曲を解釈する楽しみを奪ってしまうような気がするから。ただ、そのボブ・ディランの言葉はたしかにその通りだと思う。けれど、ボブ・ディラン自身、自分の音楽が時代の何を映し出しているのか、いまだに探求し続けてるんだろうし、だからこそ面白いんだよ。それともう1つの答えとしては、今回の『ブロークン・スカイ』の背景にあるのは、世界は自分の思い通りにはできてないし、いかに寄る辺がない場所であるかってこと。それを象徴しているのが『Broken Sky』って言葉なんだ。アルバムのどの曲についても、自分はどんな気持ちから何について書いてるのか、自分自身は知っているけど、そんなことは一切関係なく、リスナーが自由に解釈してくれて構わないよ。自分が何について歌ってるのかいちいち共有するつもりはないけど、曲自体はみんなと共有するに値すると思ったからね。ただ、そこから何を汲み取るかは受け手の自由だよ」

interview Junnosuke Amai

pcd24630
DECLAN O’DONOVAN 
「Broken Sky」
発売中
(P-VINE)

http://p-vine.jp/artists/declan-odonovan

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