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NY Issue : Interview with Chad Moore

NeoL_CHAD_PORTRAIT_COLOR | Photography : Diego Garcia

親密な空気の中でだけ沸き起こる美しい瞬間を収めた写真で、日本でも多くのファンを持つ写真家のChad Moore。彼本人のように穏やかで光に満ちたスタジオで、写真へのスタンスと現状について聞いた。

ーーあなたの写真を見るといつもどうしてか泣きたいような気持ちになります。そのように心の奥底に触れるための写真を撮る魔法を教えてもらいたいです。画角や構図などのテクニック的なところと、より感覚的なところとで、あなたならではの独自の写真にするための方法とは?

Chad「ありがとう。そう思わせることができるのは、10年近くずっと同じ人たちを撮ってきて、彼らと信頼関係を築けているからじゃないかな。なにしろ写真でもフォトブックでもずっと同じ人たちが写っているんだ。たまに 『今は写真を撮らないで!』と言われる時もあるけど、コラボレーションというか、友人たちは僕に撮られるのに慣れているから、モデルと仕事をする時の堅苦しい感じとは全く違う。パーソナルな作品に見えるように、彼らが自然体でいられるようにするのが大切なんだ」

ーーだから秘密をのぞいているような感じがするのかもしれない。被写体との距離の近さと写真の出来栄えは相互関係があるんですね。

Chad「うん、距離は大事だと思う。趣味として始めたことが仕事に発展したけど、本当はただ自分と友達のために写真を撮りたいし、生計のための仕事をやらなくても暮らすことができたらいいのにとも思う。好きな人たちの写真を撮るのは、広告やファッションの撮影をするのとは違うよね。個人的に撮っているものは、ティルダやマシューみたいに、同じ人たちがずっと映ってくれていて、長期に渡って作品を作り上げている感じがする。とてもパーソナルでありのままなんだ」

ーードキュメンタリーでもなければ、作り込まれた作品でもないフィクションとノンフィクションの狭間、もしくは夢と現実の狭間のような写真だと思います。写真におけるその両者のバランスについてどのように考えていますか。

Chad「ありがとう。とてもいい質問だね。多分、自分が存在する現実の世界と理想とする二つの世界があるからかな。だから、実際よりちょっとマジカルに見えるものもある。でも現実に起きていることにフォーカスしたい時もある。それにうまくコントロールできなくても、編集を通していい写真を選んだら、全てが完璧なように見せることができるよね」

ーーあなたの作品には儚さを感じます。あなたがそうしたものに惹かれているからでしょうか。

Chad「儚さかに惹かれてるかは分からないけど、永遠に消えてしまいかねない思い出を残すために写真を撮っている。多くの写真を撮るけど、多分その内の0.5%くらいしか作品にはならない。一時期は週にフィルムを30本ほど使ってたけど、その中から一枚しか使わなかった。でも、他の写真があることによって思い出をほぼ完璧に記憶できるんだ」

ーー同時にまるで小説や映画のように、1枚の写真の奥にさらに広がる物語が感じられる作品ばかりです。その広がりはどのようにしたら生み出すことができるのでしょうか。

Chad「意図的にそうしたわけじゃないんだ。一枚だけで伝わる作品もあるけど、ほとんどは数枚を繋げて伝わる感じだから、本を作るのが好きなんだよね。写真一枚より、全体を通してのストーリーがあるから。でもそのストーリーも決まったものがあるわけではなく、写真を見た人たちが自分にとっての意味を考えて作るものだと思っている」

NeoL_CHAD_STUDIO_02PORTRAIT_COLOR | Photography : Diego Garcia

ーー陰影と色(特に赤の使い方)も独特ですね。それらは撮っていくなかで培われたものですか。

Chad「自然に培った面も、他に見習った面も、両方ちょっとずつある。赤の使い方に関しては、若い頃によくクラブやバーに出かけていたんだけど、真っ赤な照明が多くてその写真映りが格好よかったんだ。それに気づいてから、雑誌なんかの撮影をする時にも赤い照明を当ててみた。でも飽きちゃったから、前ほど赤い照明を使ってないよ。他の写真家も赤い照明を取り入れ始めたしね。あれはフィルムを前露光して撮影していたんだ。光を見た直後に素早く目を閉じたら、瞼を閉じているのに赤っぽい色が見える時あるだろう? そして、その後に目を開けた時、まだ自分のまわり全てが少し赤っぽく見える感じ。あれを写真で再現したかったんだ。そうした再現をどうしたらできるかということで他の人の作品を見たりもしたけど、いつもはまわりのリアルな世界を自分なりのやり方で写真に落とし込んでる」

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