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愛し合うことは痛いのだ

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大吉と暮らしていると生傷が絶えません。
抱っこしている時に、甘噛みされる。お腹が空くと、かかとを噛まれる。一緒に遊んでいる拍子に、爪でひっかかれる。さっきまで膝の上で寝ていたのに急に飛び起き、後ろ足で思い切り蹴られる……。
その結果、僕の手足には常に傷があります。時にはまるで手術痕のように胸にざっくりと爪跡がつき、ヒリヒリと痛むこともあるほどに。原稿を書いている今も、キーボードを打つ手に複数のミミズ腫れと甘噛みの跡を確認できます。

「もっと躾をすればいいのに」

そう思われる方もいらっしゃると思います。僕も、大吉と暮らしていなかったら、おそらく同じように感じるはずです。
しかし、僕の本音はと言うと「生傷上等」なのです。 なぜなら、僕の身体に点在する生傷は、大吉と僕が触れ合った証拠であり、コミュニケーションをとった跡だから。

爪痕は家族になれた証

猫は人間のように言葉を巧みに操り、自分の気持ちを伝えることはできません。
目で訴えかけたり、尻尾を振る、身を摺り寄せる、手でちょんちょんするなど、感情を表現する方法はいくつかあるものの、それだけでは気持ちを十分に伝え切ることは難しい時もあるでしょう。
そんな時に、噛んだり、ひっかいたりすることで、自分の存在に気付いてもらい、気持ちを伝えようとするのは当たり前。楽しくてはしゃぎ過ぎてしまった時には、つい羽目を外して、爪を立ててしまうことがあってもおかしくない。そう思うのです。こうした人間からするとお行儀が悪いと思えるような行為も、大吉にとっては大事なコミュニケーション手段なのでしょう。

僕は、傷跡の数々を見て、思い出すことがあります。
それは、大吉があの大きなケージの中から出てこなかった日々です。
知らない場所に強制的に連れて来られ、ビクビクしていた大吉。ご飯をあげたり、水を替えたり、猫砂を新しくすることで、自分には危害を加えないであろうことが分かると、そーっと出てきて、低い姿勢を保ったまま部屋中を嗅いでみたり。自分の行動範囲を少しずつ広げながら、いつの間にか僕の足の匂いを嗅ぎ、妻様の指を舐めてみたり。そして最後には、二人の膝の上に恐る恐る乗るまでになりました。

保護猫シェルターで出会った大吉と僕たちは、こうして物理的にも、心理的にも距離を縮めていき、本物の家族になっていきました。
あの全く触れ合いのなかった日々を思えば、生傷の一つや二つ、何の苦でもない。心からそう思えるのです。

一人では傷付くこともない

人間関係においても、傷付くこと、傷付けられることは多いでしょう。
どんなに親しい仲であったとしても、相手は自分とは全く違う人生を歩み、ここまで辿りついた人間です。誤解が生まれることも、ぶつかり合うことも、ケンカすることも、当たり前です。
そこで僕が大吉と暮らすなかで気付いたのが「一人では傷付くこともない」「一人ではケンカもできない」という非常にシンプルな真実です。
だからこそ、揉めたり、話がこじれたりした時には、関係が悪いまま終わらせないように、「今日は私たちの考え方の違いが鮮明になりました。これからは、こうした違いがあることを前提に、お互い話し合いましょう」と言葉を添えるようになりました。
この一言があるだけで「意見が合わないからもう会いたくない」「ぶつかり合ったから嫌い」といった短絡的で悲しい結果を招く可能性を下げることができるのです。

大吉の様子を見ていると、腑に落ちないことが1点だけあります。大吉は妻様には噛みついたり、強く蹴っ飛ばしたりすることがほとんどないのです。妻様のことは守る対象であると思っているのか、一人の男として女性に手を上げてはならないとの正義感を持っているのかは定かではありません。
大吉に付けられた傷の数を数えながら、「妻様に比べて僕のほうが大吉と濃厚なコミュニケーションを取っている」と言い聞かせることでしか自分を納得させられない今日このごろです。

そんな大吉との喜劇的気づきの日々をまとめた本です。

<お知らせ>
11/18(土)、『アニマルライフ南行徳店』で行われる里親会イベントで、大吉のことなどをお話しします。

著者:梅田悟司

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