部下の長時間労働で管理職が罰金? 「5時に帰るドイツ人」の労働環境

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部下の長時間労働で管理職が罰金? 「5時に帰るドイツ人」の労働環境

日本ほど残業が好きな国はない。

「別に好きで残業しているわけじゃない!」という声もあるだろうが、今でも「残業している人のほうが仕事に対して熱意を持っている」という感覚や風潮があるのは否めない。

しかし、そんな日本人の働き方は世界的に見ても異常だ。

『5時に帰るドイツ人、5時から頑張る日本人 ドイツに27年住んでわかった 定時に帰る仕事術』(熊谷徹著、SBクリエイティブ刊)は、そのことを痛烈に感じる一冊だ。

本書ではドイツに27年間住んでいる元NHK記者によって、ドイツと日本の働き方の違いが明らかにされているが、比較してみると日本人の働き方の異常さが湧き上がってくる。

たとえば、ドイツの年平均労働時間は「1371時間」であるのに対し、日本は「1719時間」とおよそ350時間の開きがある。

しかし、労働生産性(労働者1人辺りが1時間ごとに生み出すGDP)は、ドイツが日本を46%も上回っている。

また、ドイツの1世帯当たりの可処分所得は、約370万円で、OECD加盟38ヶ国中6位。日本は約317万円で、同38ヶ国中15位なのだ。

日本は、長時間労働をしているのに労働生産性も可処分所得もドイツよりかなり低い。もちろん、文化的な背景もあるが、ドイツ人の働き方からは日本の労働環境を変えるヒントが得られるはずだ。

■労働時間を制限する国や企業のシステム

名目GDPは日本に次ぐ世界4位の経済大国・ドイツ。しかし、日本と比較すると労働時間は短い。そのためのさまざまな取り組みがなされている。

たとえば、労働者全体の6割に普及しているのが「ワーキング・タイム・アカウント」(労働時間貯蓄口座)という制度だ。

これは、残業時間を口座のように貯めて、有給休暇などに振り替えられる制度だ。口座残高がプラスである限り、好きな時間に出社し、好きな時間に帰ることができるのである。

また、法整備も進んでおり、労働組合も行動的だ。

ドイツでは、組織的に1日10時間を超えて働かせていることが判明した場合、事業監督局から最高1万5000ユーロ(約180万円)の罰金が科されてしまう。しかも、その罰金は会社ではなく管理職個人が払わされることもある

長時間労働を防止するため、社員のパソコン画面に「あなたの勤務時間は、もうすぐ10時間を越えます。労働違反になるので直ちに帰宅してください」という警告文がポップアップされる企業もあるという。

こうした取り組みは、国や企業だけでなく部署やチーム単位でも応用できる部分はあるかもしれない。だが、システムだけを変えても効果は望めない。必要なのは、時に悪習ともなる日本人的な風潮を変えることだろう。

■有給休暇の「罪悪感」を環境から変える

エクスペディア・ジャパンの調査によると、「有給休暇を取る際に罪悪感を覚える」と答えた日本人は「59%」と非常に高い数字となっている。その理由は、同僚や上司に迷惑がかかるというものが多いようだ。

しかし、ドイツでは「長期休暇(有給休暇)を撮ることは労働者の当然の権利」という考えが根付いており、全員が交代で休みを取ることに罪悪感がない。むしろ、長期休暇を取る同僚には「思う存分楽しんできて!」と送り出す。自分も別の時期に長期休暇を取るからだ。

また、長期休暇が取りやすい仕事の体制があるという側面もある。

ドイツでは、仕事は個人(担当者)ではなく組織(会社)についている。つまり、特定の担当者が不在でも仕事が回る体制が整っているということだ。

普段から部署やチーム単位で共有ファイルを構築する。担当者不在でも顧客に対応できる仕組みを設けておけば、対応不備になることもない。

また、担当者を1人ではなく2、3人のチーム制にすれば交代で休暇を取ることもできるし、自分が休む際の代理の同僚をあらかじめ決めておくという方法もある。本人が休暇している間に顧客から電話やメールが入ったら自動転送されるように設定しておくことも可能だろう。

ただし、日本には、管理職が実務をこなし、仕事が集まるプレイングマネジャー問題や、慢性的な人手不足という実態もある。根本的な組織のあり方や方向性を変えなければ、ドイツの働き方を100%真似するのは難しいかもしれない。

しかし、工夫の余地はある。まずは現在の働き方を変えるための仕組みや空気を、個人から、チーム単位、部署単位へと波及させることが必要なのではないだろうか。

ライター:大村佑介

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