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スタートアップ企業で入社一人目エンジニアに誘われたら、気をつけるべきことは何ですか?

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パネラー、ファシリテータを務めた3人のプロフィール

テクニカルなスタートアップは、技術のわかるエンジニアとビジネスを考える人材がセットとなって始まる。つまりそういう企業には必ず、「一人目のエンジニア」が存在する。

一人目のエンジニアにどんな経緯でなったのか。また一人目のエンジニアに向いているのはどんな人かなどについて、増井雄一郎さんがファシリテータとなり、パネルディスカッションを実施した。

ファシリテータを務めたのは、トレタCTOの増井雄一郎さん。

株式会社トレタ CTO 増井雄一郎さん1976年、北海道生まれ。大学時代に起業。2003年フリーランスとなり、Ajax、Ruby on Railsなどを使ったWebアプリ開発や執筆で活躍するギークエンジニア。2008年に渡米し、中島聡氏とともにアプリ開発会社を立ち上げる。2010年に帰国、Appceleratorの「Titanium Mobile」エバンジェリストとして活躍。「MobiRuby」「wri.pe」などの開発者として知られる。「IT芸人」とも呼ばれる。トレタは飲食店向けの予約管理や顧客管理サービスを提供している。

増井さんもトレタの一人目エンジニア。そしてパネラーを務めたユリシーズ三宅裕さん、delyの取締役/CTO 大竹雅登さんももちろん、入社一人目のエンジニアである。

三宅:ユリシーズは食品業界向け品質管理SaaSを提供しています。まだβ版も出していない創業9カ月の会社ですが、プロダクトサイド全般を担当しています。今日はリアルなスタートアップの現場話をしたいと思います。

ユリシーズ株式会社 三宅 裕さん1991年、岡山県生まれ。コンタクトセンター向けのパッケージソフト開発、人事部向けのSaasの開発を経て、ユリシーズにJoin。プロダクトサイド全般を担当。

大竹:レシピ動画サービス「クラシル」を開発しているdelyという会社の創業メンバーです。慶應義塾大学在学中にCTOに就任しました。当初はレシピ動画サービスではなく、フードデリバリーサービスの会社でしたが、それをクローズ。2回のピボット(事業転換)をし、2016年2月からクラシルを提供開始しています。

dely株式会社 取締役/CTO 大竹 雅登さん2014年、慶應義塾大学在学中にdelyのCTOに就任。数回のピボットを経て、2016年1月よりレシピ動画サービス「クラシル」を運営。CTOとして開発を牽引したレシピ動画アプリ「クラシル」が、Google Play ベスト オブ 2016「ベスト自己改善アプリ賞」、App Ape Award 2016「スタートアップアプリ賞」を受賞するなど、昨年5月のリリースから約1年半で国内最大のレシピ動画サービスとして成長させた。

一人目のエンジニアになったきっかけ

増井:まずは、一人目のエンジニアになったきっかけについて教えてください。

大竹:代表の堀江から「久しぶり。新しい会社を始めるのだが一緒にやらないか」という連絡がFBメッセンジャーできたのがきっかけです。その当時は起業し、代表を務めていた会社を解散させていた時期で、どうしようかなと考えていたときでした。

堀江とは大学は同じだが、親しいわけではありませんでしたが、住んでいるのが隣の駅だったこともあり、カフェで話を聞くことに。そこでフードデリバリーサービスの構想を説明され、これは面白いと思った。しかも堀江には自分はないチームマネジメント力という強みがある。そこで一緒にやろうと思ったんです。

増井:他にも誘われたことはあったんですか?

大竹:誘うことはあっても、誘われることはなかったですね。

増井:そのFBメッセンジャーの文言だけだと、すごく怪しい感じがします(笑)。会ってみてどこがこの人ならいけると思ったポイントは何だったんですか。

大竹:ビジネスモデルに関する質問をしたら、詳細に説明してくれたんです。その時の様子で彼は嘘をつかない、パッションにあふれているのがわかった。信頼できると直観したので、その場で決意し、共に創業することにしました。その決意はよかったと思っています。

三宅:私は以前勤めていたHR系の会社もスタートアップだったんですが、ちょうどビジネスが収束していた時。今度はビジネスまでかかわれるポジションを探していました。当社の創業は2016年12月15日。私が求人募集を見つけたのは12月23日。即応募し、自分の誕生日である26日に面接をしてもらい、私もその場の直観でジョインすることを決め、1月から働き始めました。

増井:直観で決めたポイントは何だったんですか。

三宅:社長が一人しかいないのでビジネスにかかわれることと、事業が食品工場のSaaSという、誰もやったことのないことサービスであること。後は社長と話して、「この人だったら成功するまで何度でも挑戦できる」と思えたこと。それが決め手となりました。

増井:ところで、両社の代表はプログラミングができる人ですか?

三宅:代表の諸岡は少しプログラミングの勉強はしているが、業務でのコードは書かないですね。

大竹:堀江はまったく書きません。

増井:彼らの構想していることと技術的に作れるプロダクト、今の自分たちで作れるプロダクトとの間にギャップはありましたか?

三宅:食品で最も重要な温度管理の機能を中心に、Factory HRTech(工場の従業員管理)、食品メーカーに必要なさまざまなサービスをすべて提供するという大きな構想を描きました。しかし技術よりも人手が足りないので、優先順位を付けて、温度管理のサービスから開発することとなったんです。

まずは温度管理サービスを開発し、顧客のところに持って行って検証しようということとなりました。

増井:クラシルは最初、フードデリバリーサービスから始まったんですよね。

大竹:はい。当時、始めようとしていたのはオンデマンドのフードデリバリーサービスでした。対象はデリバリー機能のないレストランで、アプリだけではなく、デリバリー要員をアサインし、ユーザーに持って行くところまでをサービスとして提供するというもの。

一般的にテック系のスタートアップの場合、サービスが出来上がるまで代表はあまりやることがない。しかし、当社の場合は、サービスがないときから、営業でバリューを発揮していました。だから僕も頑張ろうと思えた。作るプロダクトが難しいと思うことはなかったですね。

増井:リリースするまで、どのくらいかかりましたか。

大竹:2014年2月から開発を始め、当初は5月1日にリリースする予定でしたが、リリースできたのは2カ月遅れの7月2日。遅れた理由は、僕をはじめとする開発者はみんな学生で、大学に通いながらサービス開発をしていたため。単純に、リソースが足りなかった。レストラン側に「予定より遅れます」と謝るのが、大変でした。

増井:そこからピボットするまでについてのお話を聞かせてください。

大竹:7月にリリースしてピボットしたのは翌年の1月末。フードデリバリーサービスというビジネスは非常に難しいことがわかっていたので、ピボットすると言われても、落ち込むことはなく、むしろ次のチャンスを狙っていこうと盛り上がることができました。

次に手がけたのは女性向けのメディアサービス。普通のメディアサービスを作るのは難しくはなかったのですが、どんどんモチベーションが落ちてきてしまった。なぜなら毎月2人、3人ずつやめていくから。学生起業あるあるかも知れないんですが、3月末は退場者がすごく多くて…。それでかなり心が折れました。

増井:それでも頑張れた理由は何だったんですか?

大竹:みんながやめていくのは悲しくはあったんですが、ご飯が食べられなくなるわけではないので、リスクはそう感じていませんでした。今が頑張り時だという感じがしたからです。

でも、社長と2人になったとき、かなり心が沈みました。このときはやめていったメンバーに相談してメンタルを保つなど、ギリギリの状態でやっていました。

増井:その後に作ったのがクラシルだったんですね。

大竹:2015年に運営していたサービスは伸びなくて…。2016年に入り、このまま伸びないサービスを続けてもチームは崩壊する。そこでとにかく良いサービスを作ることに集中しました。

ちょうど、動画の波が来ていた頃で、料理動画が面白そうだと思い、とりあえずiPhoneとフライパンを用意し、謎の料理を作ってFacebookにアップしてみました。すると普通の記事よりも「いいね」される率が高かった。

そこでこれはいけるのではと思い、2015年にやっていたサービスをすべてストップして、レシピ動画サービスにかけることにしました。その当時は3カ月で芽が出なかったら倒産するというペースで投資をし、スピーディに開発。調達も上手くいき、今は軌道に乗っています。

一人目のエンジニアとして今後やりたいこと、キャリアについて

増井:今後のキャリアとして、マネジャー、スーパープレイヤー、経営側があると思いますが、お二人はどの道に進みたいと思っていますか?

三宅:ビジネスを推し進められるようなプロダクトを持つ立場になりたいと思っています。11月には2人ジョインすることが決まっています。一番、イメージに合っているのはプロダクトマネジャーですね。

大竹:今は開発部にエンジニアが10人ぐらいいて、どんどん人員が増えています。今の役割はマネジメント的な業務が8割ぐらいになっていますが、将来的には経営側にいきたいと思っています。エンジニアという道を選んだのも、すごく良いプロダクトを作りたいと思ったから。

ではなぜ、マネジメントなのかというと、自分の力だけでは良いプロダクトはできないからなんですね。チームをよい状態に導くことで、良いプロダクトはできる。その技術はまだ磨かれていない。だからこそマネジメントに注力することで、その能力を磨きたいと思っています。

増井:一人目のエンジニアは、アイデアしかないものも具現化する役割を担うので、それをうまく進めるためにマネジメント志向になるのかもしれないですね。

大竹:サービス志向、プロダクト志向の人が一人目のエンジニアに向いていると思います。当社ではサービス志向の人を採用する傾向にあります。スタートアップではサービスを伸ばすために技術を使うという人が向いているんじゃないでしょうか。

三宅:私もサービス志向の人の方が良いと思います。スタートアップは何もないところから始まるため、当たるサービスを作るまで仮説検証を何度もスピーディに繰り返すことが重要になる。

つまりコードが汚くても、テストが多少足りないことがあっても、ある程度形となったものができれば顧客のところに持って行き意見を聞き、仮説を検証する。こういうことができない人だと、一人目のエンジニアとしてやっていくのは難しいですよね。

もしも一人目エンジニアに誘われたら。気をつけるべきことは?

増井:一人目のエンジニアとして誘われたときに、気をつけるべきポイントを教えてください。

三宅:大竹さんも言っていましたが、嘘をつかない人かどうかをちゃんと見てほしい。どういう思いで、その事業をやろうとしているのか、資金調達はどうしているのかなど、情報開示をきちんとしてくれることが大事だと思います。私の場合は、すべて開示してくれた。

もう一つは行動力があるか。当社の代表は、一人目のエンジニアを探す前に、20社ぐらいにヒアリングにいった内容を見せてくれた。行動力はスタートアップにとって重要です。そう言う人と組む方がエンジニアとして幸せだと思います。

大竹:私もほぼ同じで、行動力があること、信頼できること、嘘をつかない人であること。あと、自分の心構えとしてあった方が良いと思うのは、CEOがやってくれているから俺は知らなくていいというような考えは持たないこと。

調達がどうなっているか、ヒアリングした結果どうなっているかなど、社長と同じだけの情報を自らもどんどん取得して共有し、相互に理解し合うことが大事ですね。

増井:私もトレタを作ってから1年から1年半の間は、社長が投資家にするピッチを同じレベルでできるようにしてきました。投資家に説明できる、応えられるようにするに心がけていた。そういうことですよね。

増井:信頼するのも大事ですが、信頼されるのも大事。どうすれば信頼されていると感じますか?

三宅:入社当初は信頼されていなかったかもしれないんですが、僕はジョインした段階で、この人と成功するまでやろうと思っており、ピボットしたときも、「(代表の)諸岡さんがそう言うなら僕はやります」という覚悟を見せた。そこで信頼されたと思います。

大竹:意識してやったわけではないのですが、初期の段階で社長の期待を越えるパフォーマンスを出すことだと考えています。

例えば2月1週目までに最初のWebサイトを作ろうというのを、1月31日までにやるというようなイメージ。期待値を超えたパフォーマンスを見せることで、社長に何も言わなくても自らやるセルフモチベーティブな人だと思われ、信頼を得られたと思います。

増井:もし過去に戻って、一人目エンジニアになる自分に声をかけるとしたら何と言いますか?

大竹:僕の場合は学生起業だったので、信頼関係を作る上でも、休学した方がよかったと思っています。

というのも社長と同じ、もしくはそれを上回るコミットメント量を出すことが大事だから。社長は休学していましたが、僕は大学に行っていたので、どうしてもコミットメント量が下がりました。最初のうちはコミットメント量が下がると、どうしてもずれが大きくなるからです。

三宅:私の場合は今年の1月入社なので、それほど古い話ではないんですが、もう少し社長とコミュニケーションを取った方がよかったかなと。というのも創業して1~2カ月はオフィスがなかったので、フルリモートで働いていたからです。

社長ともっとコミュニケーションして、プロダクトの意図をくみ取っておくべきだったと思っています。また最初のプロダクトは1つの機能のみにするなど機能を絞って、もっと小さなモノにすべきでした。そして何度もお客さまのところに足を運べばよかった。

大竹:確かにスタートアップのリモートワークはやめた方がいいですね。対面の時間をどれだけ増やすかが大事。できるなら朝9時や朝7時に全員が集まって、朝飯を共に食べるような感じにするとか。そういう文化を作ることが大事だと思う。

増井:コミットメントとコミュニケーションの両方が大事だということですね。最後にこんな人だと誘われてもやめとけというアドバイスを。

大竹:絶対やめた方がいいのは、儲かりますという人。

三宅:地に足が付いていない人は辞めた方がいいですね。自分の原体験に基づくアイデアを持っている人を選んでほしい。

増井:解決したい課題を持っているかどうかが大事ということですね。ありがとうございました。

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