ガジェット通信 GetNews

見たことのないものを見に行こう

言葉の発達が遅かった息子。不安や焦りを乗り越え、周りに助けられて得られた言葉の喜び

DATE:
  • ガジェット通信 GetNewsを≫

ぽやっとした顔の息子は第一子らしく、のんびり屋。そんな息子と過ごす日々は慌ただしい中にもどこかゆったりとしていて穏やかなものでした。

そんな生活は1歳半検診を期に激変することになります。

せいぜい虫歯がないかくらいの心配だけで検診に臨んだ私に、問診票を見ていた保健師さんはみるみる怪訝な顔になり口をひらきました。

「お母さん、意味のある言葉は本当に一語も出てきていませんか?」

はい、まったく。

息子はママはおろか、ワンワンなど一切言葉をしゃべることはなかった。

私は3歳近くまで言葉が出なかったと両親に聞かされていたので、息子もそんなものだろうと思っていたが、保健師さんの深刻な顔に、これはただ事ではないとようやく事の重大さに気づきました。

と、同時にどんどん不安になる私に、追い打ちをかけるように保健師さんは続けた。

「この時期に普通のお子さんですと3語は出てきていますね。お母さんも心配でしょうし、今日はこのあと臨床心理士さんにみていただきましょう」

それからのことはもうあまり記憶にないです。

ぼーっとしたまま体の発達に比べて言葉の発達が遅れているという臨床心理士さんのお話を聞いていたが、全然頭に入ってきません。そしてそこから他の子供たちの声がやけに耳につき、そのおしゃべりがあまりに上手なことに胸が締めつけられました。

抱っこをねだる息子だけが、赤ちゃんのまま発達せず周りから取り残されているようで不安だったことを今でもよく覚えています。

家に帰りふとスマホで、「しゃべらない、1歳半」と検索してみました。すると発達障害の体験談や症状など様々な情報が目に飛び込んできました。もしかして、うちの子にかぎって…、でもあの動作はこの症状なのでは。

気づけばスマホを握りしめ夢中で検索を続けていました。

我が子になにか障害があるのではないか。人と比べてもしょうがない、いつかしゃべるようになるよ。その通りなのだろうが、夫の声は無責任にしか聞こえなかった。

私は、どうしようもないのに気ばかり焦り一人で不安と戦っていました。 関連記事:発達障害についての私の考え~子どもは可能性の塊!我が子を信じること~

その不安の中で私は年子になる娘を出産しました。

環境が変われば息子の言葉が出てくるかもしれない。わずかな期待をこめての里帰りでしたが、言葉は相変わらず出てこないまま自宅へ戻りました。

不安はどんどん大きくなっていく。

検診で保健師さんとある期限の約束をしていたのです。

「息子さんが2歳になる頃にまたお電話させてください。その時に、言葉が出ていないようでしたら言語相談なども考えていきましょう。」

それからは絵本の読み聞かせはもちろん、四六時中何でもよいので息子にしゃべり続けました。

私は息子にひたすら会話のボールを投げ続けましたが、それが返ってくることはありませんでした。夫の帰りは遅く両親も祖母の介護で手が離せない。

私はどんどん追い詰められていきました。

しゃべり続ける私の声だけが虚しく響く部屋の中で、一度、何でもいいからしゃべってよと息子を前に泣き出してしまったことがありました。

息子は訳が分からないながらもどこか申し訳なさそうな顔をしていたようでした。

そんな私に転機が訪れました。

鬱々とする私を心配した友人が勧めてくれたのは、近所にある保育園に併設された子育て支援センター。保育士さんが常駐し、子供を遊ばせることはもちろん育児の相談にものってもらえる。

私は躊躇した。

首もすわらない娘と暴れまわる息子の2人を引き連れて外出できるのだろうか。しかしこのまま狭い家の中でずっと3人でいることは息子にとってよくない。閉じこもっていれば、自分のストレスを子供たちにぶつけてしまうことは明らかでした。

それではいけない、私は外の世界に踏み出すことを決意しました。

支援センターに入ると、保育士さんが優しく出迎えてくれました。私は荷物も降ろさず、立ったまま保育士さんに早口で…。

「息子がしゃべらないんです、一言も。うちの子、どこかおかしいんじゃないかと思って」

今思えば、鬱々としたお母さんが来ていきなりこんなことをまくしたてていれば保育士さんも驚いたのではないかと思います。

しかし保育士さんは、変わらず優しい顔をして息子と遊びながらゆっくり話を聞いてくれました。

しゃべらない息子相手でも保育士さんは息子のしている動作を言葉にしたり、時折声のトーンを変えてみたりと話しかける言葉に困る様子はない。

息子は普段より生き生きと遊んでいるように見えました。

「お母さんが心配になる気持ちもとてもわかります。ただ発語はありませんが理解はしっかりとできているように思いますが、どうですか?」

確かに息子は、言われたことは大体わかっておりドアを閉めるなど簡単な指示に従うことは可能でした。

「耳に異常がなくて、理解ができていれば言葉を貯めていると捉えることもできますよ」

それにと保育士さんは続けました。

「息子さんは結構、慎重派ではないですか?まずはしっかりまわりの様子を確認してから遊んでいますよね。言葉を出すことに対しても慎重になっているのかもしれませんよ」

そう言われてみればそうだ。毎日息子と一緒にいる私だが、この視点はなかった。

保育士さんはやはりすごいと思うと同時にずっとそばにいる自分の情けなさが身に沁みます。

「私の話しかけが、少ないんでしょうか?このまま家で私がみていていいのか不安で。あまり外出もしてあげらていないし」

夫や両親に、言いづらかったことがスラスラ出てきた。

仕事を辞め子供と過ごす時間を持つ決断をしたが、辞めずに保育園に通わせていた方が保育士さんや友達といろいろな体験ができ息子にとってよかったのではないか。

うつむく私に保育士さんは優しく、でもしっかりとした口調で話してくれました。

「子供にとってお母さんは絶対的な存在です。いろんな見方はありますが、私はお母さんと家で過ごせることは幸せなことだと思いますよ。言葉のことはお母さんの関わり方が悪いということではないですよ。心配しないで自信をもって接してあげて下さい」

その言葉は不安に押し潰されそうだった私の心にじわっと染み込んでいくようでした。

「どうですか?一時預かりをご利用されてみては?」

子供同士の関わりや声を聞くことは言葉の発達によい刺激になるとのことで、私はその場で一時預かりを希望しました。

きっと、保育士さんは息子のことはもちろん私の疲弊を感じ、一時的に息子から離れることを勧めてくれたのではないかと思います。

それから一時預かりの利用や支援センターで行われる活動への参加など、娘の首もすわったため少しずつ外出する機会も増えていきました。

私も息子と離れる時間ができたことや家族以外と接する機会増えたことで精神的に余裕ができ、以前より余裕をもって息子はもちろん娘とも接することができるようになりました。

この頃から、息子は物を指差すようになったり理解できる範囲が更に増えていきました。あの時勇気を出して外に出て本当に良かったと今でも思います。

しかし、ついに言葉は出ないまま息子は2歳の誕生日を迎えてしまいました。

約束通り保健所からの電話は容赦なくやってくる。

言葉が出ていないことを報告すると、やはり言語相談に行った方がよいとのことですぐに予約をとるよう指示されました。

しかし、私は検診で言葉の遅れを指摘された時のように取り乱すことはなかったです。

不安な気持ちはすぐに、支援センターの保育士さんや一時預かりの担当の先生に吐き出せたからです。

そして言語相談の予約日まであと1週間となった日、とうとう息子は「ワンワン」と言葉を口に出したのです。

今まで貯めた分なのだろう、言葉はどんどん溢れ出し言語相談に行く頃には来たことを驚かれるほど言葉が増えていました。

保育士さんにそのことを報告し、一時預かりをしてよかったとお礼をいうと

「それはお母さんががんばったからですよ。息子さんにもちゃんと伝わっていましたね」

保育園ではなく自分でみるという選択が間違っていたわけじゃなかったという安心と、自分の頑張りを言葉にしてもらえる喜び。そして何より息子の言葉が出てきたという嬉しさで胸がいっぱいになりました。 関連記事:療育に通う意味って?発達障害は発達しない障害じゃない! by なないお

検診後すぐの頃に、母親の不安は子供に伝わるからそんな顔をしていてはだめと人に言われ落ち込んだことがありました。

そのことを相談した友人は私に、

「不安そうだって大丈夫。頑張ってくれているからこそ、そうなっちゃうんだってことくらいわかるよ。だって10ヶ月もおヘソで繋がっていたんだよ、大事なことはちゃんと伝わってるよ」

どんな理由だと泣きながら笑ったが、今はその通りだったなと思います。

これから何度となく訪れるだろう成長の荒波の中、私はまた不安になったり焦ったりしてしまうと思います。

しかし私の思いは息子にちゃんと伝わること、周りには支えてくれる人たちがいることを思い出し、息子を信じて一緒に成長していきたい。

今、息子はあの頃が嘘のようにおしゃべりで騒々しい。

ある日ごはんを食べていると

「ママ、これおいしいね」

にっこり笑ったご飯粒だらけの顔。

涙が出るほど嬉しくなる言葉たち。

不安を乗り越えた先にある喜びを知ったから、私はまた次の不安に立ち向かえます。

著者:もがこ

3歳のおっとり息子と1歳のアクティブ娘、年子兄妹のママです。

※プロフィール情報は記事掲載時点の情報です。

関連記事リンク(外部サイト)

生後3ヶ月。体をひねってコロンと転がりそう!寝返りはいつするの?
赤ちゃんの成長、遅い早い?周りとの成長差を大きく感じてしまう9ヶ月の頃
いつ寝返りするの?まったくする気がないと思い込んでいたらある日突然「ドスン!!」

赤すぐnet みんなの体験記の記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。