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世界一周で1,000人カット 旅人美容師・桑原淳に聞く、バイトを通して学んだ社会人としてあるべき姿とは

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kuwahara_05 桑原 淳(くわばら じゅん)さん

自分のやりたいことを仕事にしたい。誰もが持つそんな思いを実現している社会人は、何を考え、何を経験し、目標を叶えてきたんだろう。インタビューを通して、「バイトで学んだことがその後のキャリアにどう役立ったか」「人生の岐路に立ったとき、どんなモノサシで自分の道を決めたのか」を聞いてきました。

今回紹介するのは、旅する美容師・桑原淳さん(29歳)。2016年、「1,000人ヘアカット世界一周の旅」を成功させて話題になりました。帰国後は独立し、ブロガーやセミナー講師として幅広く活動。そんな桑原さんがバイトから得たものとは。

 

バイトの師匠の教え「他人と同じことはやるな」

桑原 淳(くわばら じゅん)さん

――初めてのバイトは高校時代だったそうですね。

中学のときから美容師になりたかったので、高校は行ければどこでも良いと思っていたんです。「学校で学ぶものはない」とさえ思っていました(笑)。初めてのバイトは地元で有名なそば屋さんでした。稼いだお金でバイクを買うのが目標だったのですが、なんだかんだで卒業まで続けていましたね。キッチンの担当として調理の補助をしていました。昔からものづくり全般が好きだったので、料理を少しずつ覚えていけて楽しかったですね。美容師になりたいということも話していたので、「業種は違っても生きる部分はあるから」と社長も先輩たちもいろいろ教えてくれました。

――今の桑原さんに影響を与えている部分もあるのだとか。

仕事観っていうんでしょうか。バイトを通して社会人としてあるべき姿を教わりましたね。とくに社長からは「人と同じことをするな」っていうのはよく言われていました。それをやっていると現状維持で成長も発展も起こらない。もし10回飲み会があったとしたら1回は行かないで、時間とお金を自分のために使ったほうがいいって考え方ですね。今でも仕事で悩んだときに相談しにいったり、お店にはちょくちょく顔を出しています。

 

狭い視野を広げたい一心で世界一周へ

桑原 淳(くわばら じゅん)さん

――専門学校卒業後はすぐに美容室に就職されました。

憧れていた東京・青山にある美容室に勤務していましたが、2年後に神奈川郊外の新店へ異動になってしまったんです。人も街もどうしても好きになれなくて、そのままその美容室を退職。その後、しばらく一人旅をしながら先の人生を模索していたとき、世界一周の旅をしてきた人と出会ったんです。世界にはたくさんの国や地域があるけど、僕は地元の山梨と東京のことしか知らない。自分の視野ってすごく狭いんじゃないかなって思ったんです。もともと海外に興味があったし、自分も世界一周をやってみたいと思いました。

――すぐには旅に出なかったんですね。

「3年後、25歳になったら海外に出る」と決め、都心の別の美容室に就職。お金を貯めながらスキルを磨いたり英語を学んだり、海外に行くための準備を進めました。旅を終えたら日本に戻って自分のお店を持ちたいという夢もありましたね。そして2014年、旅に一つの目標があったらいいなと思って直感的に「1,000人カット」というテーマを決めて世界一周に出発しました。韓国を皮切りにアジア、ヨーロッパ、アメリカ大陸と渡り、段ボールで作った看板を掲げて街頭で切ったり、現地の美容室で切らせてもらったりしながら、最終的に1年8カ月かけて62カ国、1,301人の方々のカットをしました。

――海外の美容師事情も目の当たりにされたんだとか。

日本の美容師は美容室に入ったら何年も見習いをやってようやくスタイリストとしてお客様の髪を切ることができます。しかも長時間労働で休みも少ない。イギリスのロンドン郊外の美容室で寝泊まりをさせてもらっていたことがあったんですが、現地にはアカデミーと呼ばれる学校のようなところに通ってスタイリストを目指すやりかたもあります。それに日本ほど時間的な拘束があまりなく、生き生きと美容師をしている。同じ美容師という職業でそうやって生きている人がいるなら、僕らにもできなきゃおかしいと思いました。

――美容室のありかたも違ったそうですね。

ギリシャの美容室に行ったとき、おじいちゃんと孫が2人で来て待ち合いスペースに座ったんです。しばらく座っているので他の人が終わるのを待っているんだと思ったのですが、結局髪を切らずに帰ってしまいました。店主に尋ねたら、コーヒーを飲みにきただけでした(笑)。そんなふうに美容室がコミュニケーションの場になっていて、すごく柔軟性があるんです。おかげで帰国後につくった自分の美容室も「カルピスを飲める店」と銘打ったりシェアサロンとして他の美容師に貸したり、形にとらわれないお店にできました。

――旅をして良かったと思うことは何ですか?

自分の感覚が豊かになったことですね。よく「この国は優れている、あの国は劣っている」って言う人がいますけど、どんな国にも良さも悪さもあるんです。いろんなところに行って見聞きしたからこそ、そのことを理解できたし、比較対象が増えて多角的にものごとを捉えられるようになったことが良かったですよね。

 

旅のブログが出会いの連鎖を生んだ

桑原 淳(くわばら じゅん)さん

――旅の様子をずっとブログに書いていらっしゃいましたよね。

日本を出るときに書こうと決めました。ブログを書き続けて、帰国してお店を開いたときにブログ経由で人が来たらいいなと思っていたんです。半分仕事だと思ってやっていたんですが、SNSに上げていたこともあって、色々な読み手から反応が出てきて、書いていて面白くなってきました。そのうちメディアにも取り上げられ、次々につながりが生まれていったんです。

――日本に帰ってきてからはいかがでしたか。

昨年の春に帰国してしばらくはフリーで美容師をしていたのですが、ブログでつながった方が思いのほかたくさん来てくださって驚きました。ブログがきっかけで本も出版できて、資金をつくることができたので4カ月後には自分のお店を開業することができました。我ながらすごいスピードだと思います。じつは妻ともブログの縁で出会ったんですよ(笑)。

収入につながる部分もありますし、今もブログは毎日更新しています。

 

自分の働き方を自分でクリエイトし続ける

桑原 淳(くわばら じゅん)さん

――そのほかにも様々なお仕事をされています。

旅で経験したことをヒントに、美容師が全国各地のシェアサロンを低価格で借りてカットできるマッチングコミュニティサイトや、若手美容師や美容学生向けに技術を教える美容アカデミーを立ち上げました。セミナーや講演会で講師を務めたりもしています。

――最近も海外に行かれているんですね。

世界一周の旅での心残りが動画を残していなかったことでした。今年の夏からは1カ月の半分は海外に出かけて現地の人々の髪を切って、その様子をYouTubeに上げて世界に発信しています。これもブログと同じようにつながりをもたらしてくれればいいなと考えているんです。今のところは1円にもなっていないですが、ずっと続けていればきっと何かあるはず。すでに海外のメディアに取り上げられ、新しいつながりが生まれつつあります。

――型にはまらない仕事のしかたができるのは、どうしてですか?

仕事って生活の1コマで、単純にお金のためだけのものではないと思います。睡眠時間が8時間として、起きている時間は16時間。その半分以上は仕事に費やしているわけなので、つらいより楽しいほうがいい。それを突き詰めているだけなのです。バイト時代に学んだ「人と同じことをしない」ということは根底にあるかもしれないですね。これからもウェブを活用しながら、時間と場所に縛られない仕事をしていければと思います。

 

バイトで学んだ仕事観を大切に、楽しく働ける道を選ぶ

 

美容師の枠にとどまらず、活躍の場を広げる桑原さん。根底にあるのは、バイトの師匠から学んだ「他人と同じことをしない」という考え方でした。そして「どうしたら楽しく仕事ができるか」を探求するために世界一周の旅で視野を広げ、帰国後も次々に自分の仕事をクリエイトし続けています。「自分に合った働き方は他でもない自分が創造していく」という姿勢こそ、バイトの師匠が教えてくれたことの本質なのかもしれません。 桑原 淳(くわばら じゅん)

1988年 山梨県富士吉田市生まれ。東京の専門学校を卒業後、2014年に「1000人ヘアカット世界一周の旅」をテーマに旅に出て、2016年に帰国。東京・高円寺に美容室「Up to you」を開店。シェアサロンコミュニティ「サロカリ」、美容アカデミー「カミクル」を主宰している。

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