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坂本龍一ドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』オフィシャルインタビュー到着

坂本龍一ドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』オフィシャルインタビュー到着

 2017年11月4日より全国公開となる、世界的音楽家である坂本龍一を追ったドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』。このオフィシャルインタビューが到着した。

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 坂本龍一が「全てさらけだした」という本作は、2012年から5年間という長期間に渡る本人への密着取材によって実現したドキュメンタリーで、膨大なアーカイブ素材も映画を彩っている。震災以降の坂本の音楽表現の変化に興味をもち、密着取材を始めたのは、本作が劇場版映画初監督となるスティーブン・ノムラ・シブル。過去の旅路を振り返りながら、新たな楽曲が誕生するまでの、坂本龍一の音楽と思索の旅を捉えている。

◎オフィシャルインタビュー

interview with Ryuichi Sakamoto
取材・文 宇野維正

ーー「レヴェナント:蘇えりし者」のサウンドトラックや「async」といった、これまでの音楽活動をさらに更新していくような素晴らしい作品の誕生。そしてご病気の発覚とその治療。本作に収められている日々は、音楽家としても、一人の人間としても、坂本さんのこれまでの人生において特別な時間だったように思います。まず、偶然にもそのような時期の自身の姿がこうして一本の映画に収められたことについてどのように考えられているかを教えてください。

「実人生を映画に収められるっていうのは、やっぱり照れくさいものだし、ちょっと不思議な感覚ですよね。別に嬉しくもないし、舞台裏をさらけ出すような趣味はあまりないので。まぁ、でも、何故この企画を引き受けたかったっていうと、監督のシブルさんの人柄につきますね。自分自身には、こういう作品を世に出したいという気持ちはなかったわけですけど、一本の映画、一本のドキュメンタリー作品としては、いい時期だったんじゃないかと思います。平穏な日々を何年追っても大した作品にはならないと思いますが、自分の人生の中でも大きな出来事が重なった時期だったので。こういうことは、結果的に偶然という言葉にしてしまいがちですけど、決して偶然だけでなく、この時期しかないというタイミングの作品だったんだろうと今は思ってます」

ーー本作ほどの親密な距離感ではないものの、過去にも坂本さんの活動や日常を映像に収めたテレビの番組や特集などはありました。今回、それが「映画」というフォーマットをとっていることに意味があるとしたら、それはどういうところだと思いますか?

「自分にとって、そこにテレビと映画の違いというのはないです。かなり昔の話ですが、過去にもいくつかそういうテレビのドキュメンタリーみたいな企画もありました。僕、本当にそういうのが嫌いでね(笑)。自分が出てるのを見るのが照れくさいから嫌いというわけではなくて、他の音楽家やクリエイターが出てくるドキュメンタリーも嫌いなんです。そこにある、ある個人から何かドラマを引き出そうという、作り手の制作態度そのものがね。対象が涙を浮かべたりして、そこにカメラが寄って、その瞬間を収めるみたいなね。要するに、人生というのはすべて個人にとって別々のものなのに、ドキュメンタリーを作る側が一つのストーリーをでっち上げて、それに沿って撮っていくという。本当に不愉快な作り方をしますからね。これまで、実際にオンエアされたものの中にも、その撮影中にスタッフに怒った作品もありました」

ーー予定調和的なものに対して、強い嫌悪感を持っている?

「そう。フィクションでもそういものは大嫌いです。ノンフィクションの体裁をとっているものに関してはなおさらです。だから、せめて自分が出るものに関しては、そういうものになってほしくないという思いは強くあります。だから、テレビか映画の違いというのは、そのあとの話ですね」

ーーただ、近年になって音楽家を題材としたドキュメンタリー映画が増えてきていますよね。映画になるということは「作品として残る」ということだと思うのですが、その「残る」、あるいは「残す」というについては特に意識されることはなかったですか?

「結局のところ、問われるのは作品の質なんです。出ている人間がどんなに有名であっても、作品の質が伴わなければ忘れ去られるだけですよ。確かに音楽家を扱った映画は、ライブのシーンを収録した作品なども含めて増えています。でも、僕は他人のライブの映像を見るのが嫌いなんです。映像に限らず、CDなどでもライブ盤というもの全般に対して全然面白いと思えない。ただ、中には、昔の映画ですがジョナサン・デミが撮ったトーキング・ヘッズの『ストップ・メイキング・センス』のような、ライブのシーンを収めていながらも、映画として素晴らしい作品もあって。そういう、何十年経っても色褪せない作品の域に今回の作品が達しているかどうかはわかりませんけれど、出ているのが誰で、そこで何を語っているかではなく、純粋に映画としていいものであるかどうかというのが大切なんだと思います」

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