悪の魔導師に支配された異世界を救え!ファミコン風探索型魔法アクションゲーム『Alwa’s Awakening』

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異世界転生……現代社会で生きる平凡な少年、青年が何らかのきっかけでそちらに召喚され、魔王の脅威に仲間と共に立ち向かうなどする、古くから漫画、小説、アニメなどで親しまれてきた題材だ。昨今もそのような作品は数多く誕生しており、異世界に無い武器片手に無双したり、仲間の問題児っぷりに翻弄される日々を送ったり、幾多の死と蘇りに苛まれたり、逆に現代側に来た住民達を食事でもてなしたりと言った独自のアプローチを行ったものが人気を博している。
 
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今回紹介する『Alwa’s Awakening』もまた、異世界転生を題材とした作品である。スウェーデンのインディーデベロッパー「Elden Pixels」制作のゲームで、2017年2月3日より、ゲーム配信プラットフォーム「Steam」にて配信されている。
 
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作中の舞台となるのは「Alwa」と呼ばれる異世界の島。ある日、悪の魔導師「Vicar」が四人の手下達を率い、Alwaを襲撃。自らの支配下に置いてしまう。
 
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危機に瀕したAlwaを救うべく、老賢者は他の世界から救世主の召喚に講じ、「ZOE」なる者を呼び出す。賢者に導かれる形で魔法の力を会得したZOEは、Alwaを救うべく、四人の手下に支配された地の奪還と首謀者「Vicar」の打倒に乗り出す…というのが大まかなストーリーだ。
 

 
なお、先に申し上げておくが、主人公「ZOE」は女性だ。
見た目が少年っぽい為、特定の諸兄・諸姉は何かを期待したかもしれないが、残念ながらその手の描写も要素も皆無である。あしからずご了承願いたい。

少ない魔法の”応用”が試される探索型アクションゲーム

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内容としては探索型のアクションゲーム。
ZOEを操作し、Alwaの地を駆け巡りながら、悪の魔導師Vicarの手下によって支配されたエリアの奪還及び、手下四人とVicarの討伐を目指す。
 
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Vicarの手下の潜伏場所は、Alwaの全体を描いたマップ画面より確認できる。この潜んでいる場所を目指し、Alwa各地を探索していくのが主な流れとなる。
ただ、マップに示されるのは潜伏場所のみ。その周辺地形の構造はプレイヤー自ら明かしていく形となる。基本的に探索型アクションの王道をなぞった構成だ。
 
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プレイヤーが操作する主人公ZOEも、本編が進むにつれて新たな能力(魔法)を手に入れ、行動範囲も広がっていくという、探索型のセオリーを踏襲したキャラクターになっている。
 
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ただ一つ、珍しい特徴を持つ。それは「アクションの少なさ」。
探索型アクションと言えば、空中でもう一度ジャンプする「二段ジャンプ」に代表されるように、本編が進む度にできる事が増えていくアクションの多彩さが醍醐味でもある。
 
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そのアクションが本作では少ない。
「魔法の杖」を振って殴る(!)通常攻撃、「魔法」の使役しかないのだ。
 
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「魔法」もブロックを作り出す「ブロック」、上昇し続けるシャボン玉を生成する「バブル」、そして雷弾を放つ「マジックアタック」のたった三種類。これ以上、増えることもない。

なので、探索ではこれらの「応用」が求められる。「ブロック」なら、足場にする以外に敵の攻撃を防ぐ盾にしたり、スイッチを押す為の追加ブロックとして使ったりなど。できることが少ないからこそ、個々の魔法をどう扱うかという創意工夫が随所で試されてくるのである。
 
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この少なさを逆手に取った探索の楽しさが本作の魅力。ジャンルのセオリーを踏襲しながら、プレイヤー側に制限からくる発想の転換を促す、意欲的なゲームデザインが成されている。

マップもその特徴を踏まえ、ギミックを豊富に仕込み、起伏を強く表現する設計を実施。
 
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触れれば即刻ゲームオーバーになるトラップを潜り抜けていく場面を設けるなど、探索型アクションらしからぬスリルを追求したレベルデザインを敢行しているのだ。

まるでファミコン時代を髣髴とさせる工夫を凝らしたその作りには、当時の世代ならノスタルジーを喚起させ、若い世代なら要素を絞り込んでもこれほど手応えのある探索型アクションが作れるのか、という驚きを覚えること確実。

このように限りある要素をフル活用し、できることが「少ない」なりの手ごわさを演出。見た目からは想像もつかない深みを持った探索型アクションゲームにまとめられている。

「少ない」からこその手ごわさ

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プレイヤー自身の体力、敵の総数もまた、「少なさ」による手ごわさを演出。
 
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特にプレイヤーの体力は、本作の難易度であるかを象徴する要素だ。
というのも、最大値がたったの「3」。しかも、その最大値を増やすアイテムもなければ、受けるダメージ量を減らすアップグレードも無い。終始、この体力でAlwaの地を冒険するのだ。
 
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なので、安易な力押しを試そうとすれば一瞬で窮地に陥る。
故にどんな場面でも相手の出方を見ながら、行動を取ることが重視される。まさに指先がものを言う、探索型アクションとしては珍しいスリリングな難易度を演出している。
 
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理不尽にならない配慮も万全。それが敵の総数で、画面内に登場するのは多くて5体まで。それ以上の数が現れ、一方的な暴力に晒されぬよう、気を遣った調整が図られている。
敵も不意打ち、変化球的な攻撃を仕掛けてくるタイプは少なく、どう回避すればよいかの行動が直感で分かるものになっている。しかし、タイミングを見誤れば直撃を喰らうなど、プレイヤーの判断自体では痛い目を見る。まさに油断大敵を体現したバランスだ。

このように調整が図られているのもあって、体力の少なさ故のハンデは全く感じさせない。むしろ、公平な展開が終始、繰り広げられる
 
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体力の少なさによってスリリングな難易度を表現し、脅威となる敵側にもその設定を反映させる。互いを尊重した巧みな設計には、少ないなりの面白さを追求した制作者のこだわりを実感させられること請け合い。同時に要素を最小限に抑え込んだからこそ表現できた、それぞれのバランスの緻密さには美しさすら感じるだろう。

”Alwa’s Awakening”が意味するもの

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そして、「少なさ」の活かした点で最も際立つのがグラフィック。ファミコンのゲームである事を強く意識し、色数を制限したドット絵で彩られたビジュアルを表現している。

音楽もファミコンのゲームと言えば主張の強い楽曲…と言わんばかりに、その種のものが充実。また、一部楽曲は日本のミュージシャンで、頭にファミコンを乗せ、挿したカセットの音楽を演奏するスタイルで知られるサカモト教授が手掛けているのも特筆すべきところだ。


▲Youtubeでは、Elden Pixels公式によるサウンドトラック動画も公開中。
 
一方、本編のボリュームはエンディングまで5~7時間と、「少なさ」とは反比例する物量。隠されたアイテムを探し出す収集要素、最小ゲームオーバー数の達成など、やり込み要素も豊富で、この点に限っては「多さ」を実感させられるだろう。
 
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終盤、一発ミスのトラップを潜り抜ける精神が磨り減るフロアが連続したり、ややゆったりしたテンポには賛否が分かれるかもしれないが、探索型アクションゲーム、ファミコン時代の手ごわいアクションゲームが好きなプレイヤーには自信を持ってお薦めできる本作。魔法少女となり、知恵と勇気で悪の魔導師から異世界を救う、懐かしくも壮大な冒険の旅を体験してみて欲しい。
 
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そして、冒険を始めた暁には是非、頑張ってエンディングまで辿り着いてみて頂きたい。詳しくは言えないが、きっとプレイした誰もがその驚きの結末に「あんぐり」としてしまうはず…!

[基本情報]
タイトル: 『Alwa’s Awakening』
制作者: Elden Pixels
クリア時間: 5~7時間(※やり込み要素のコンプリートを除く)
対応OS: PC(Windows、Mac、Linux)
価格: ¥980
難易度:中~上級者推奨(※終盤にトライ&エラーを繰り返す難所あり)
 
ダウンロードはこちら

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