腹を満たす「総菜パン」。めくるめく創意工夫の世界
パン屋さんという言葉がもはや似合わない、おしゃれなベーカリーが各地で人気を集めている現在の日本。
昔に比べて店舗のみならず、パンの種類も増えました。テレビや雑誌でもパンが特集されるほど、その人気は現代の日本の食生活にしっかり浸透しています。
しかしですね。筆者にはかねてからひそかに不満に思っていることがありました。
おいしそうなパンの種類が増えるのは好ましいことがですが、どうも甘くない総菜パン(※)より甘いパン、いわゆる菓子パンのほうが優勢なんじゃないか? ってことです。
(※)調理パン、総菜パン、おかずパンなどの呼び方がありますが、今回は「総菜パン」で統一します!
たとえば一般的なアンパン、ありますよね。アンパンはつぶあん、こしあん、白あん、うぐいすあん、黒ゴマあんと、5種類そろえているお店もあります。
一方、アンパンのような形状の総菜パンといえば、「コーンマヨ」「ツナマヨ」くらいがいいところ。どの店舗でも菓子パンと総菜パンの比率は、どちらが優勢なのかは一目瞭然です。スイーツ強し!
甘いパンはあえて言うならスイーツのカテゴリー。食事なら食事らしく総菜パンが食べたいんです! 甘いパンはデザートですから!
ということで、近所の徒歩圏でめぐれるパン屋さんを回り、総菜パンがどのくらい売られているのか見てきました。するとなかなか興味深い結果になったので、まずは入手した総菜ンをご紹介します。
まずはしっかり腹を満たせるパンとしてはやはりこれ、フランスパン系ですよね。
表面にガーリックバターが塗られ「ガーリックフランス」と呼ばれることが多いこちらのパン。ガーリックフランスは明太子フランスというのもよく見かけます。まさに和製フランスパンですね。
麦の穂のような形をしたフランスパンにベーコンを練り込んだ「ベーコンエピ」。フランスパンならではのかみ応えは、唐揚げ弁当ご飯大盛りレベルの満腹感を得られます。
続いてカレーパン。総菜パンの王道ですね。
昔は揚げたものばかりでしたが、最近は焼きカレーパンも見かけるようになりました。こちらは揚げたもの。
赤い印は「こっちが上!」という意味だったのか? 切る前はまったく気づかず撮影してしまいました。カレーパン、総菜パンの中では相当な大御所です。
そしてこちらが焼きカレーパン。個人的にはこちらのほうが好きです。
そしてカレーパンと並んで、総菜パンの中で歴史を誇るミートパイ。
最近ではどのお店でも扱っているとは限らなくなってきている気がします。実際、筆者はこれを見かけたときに「あ、懐かしい」と思いました。
パイ生地って好みがわかれるところかもしれませんね。でも間違いなく、カレーパンと共に日本の総菜パンの黎明期を背負ってきた大御所です。
続いてベーコンとチーズという鉄板の組み合わせ。これは総菜パンの定番中の定番、流行に左右されることなく、いつの時代も支持されるベストカップルです。
ベーコンとチーズが夫婦の一例。抜群の安定感。
こちらは、わさびという第三者が! ほどよい辛さは、むしろマンネリ化しそうになる組み合わせにいい刺激を与えていました。
そういえば、今回は見かけませんでしたが「チーズ&卵」っていう組み合わせも結構ありますよね。あれはからしを塗って食べるとうまさ倍増というのが筆者のマイルールですが、それに通じるものがあります。ときにはこんなゲストが加わったものもいいですね。
これはオニオンブレッドという名でよく売られています。気をつけて持ち帰ったのに変形してしまった(泣)。
実際は縦6cm×横10cm×高さ6cmくらいのサイズで、ベーコンとチーズのほかに玉ねぎやマヨネーズも入っているせいか、ずっしり重いです。トングで持ち上げようとするとき、少し「えっ」と思う重さです。がっつり食べたいときにもおすすめ!
そしてそもそもチーズ自体がパンと合うわけなので、「ほかの素材は不要」とばかり強気なパンも存在します。たとえばこんな風に。
クロワッサンの表面だけでなく、中にもカマンベールチーズが入っています。チーズ好きにはたまりませんね。
ほか、フランスパンに角切りにしたチーズをたっぷり練り込んだパンも、多くのパン屋さんで定番商品となっています。チーズ、最強。
チーズが主役のパンはどのお店でも何種類も揃そろえていたので、ここでご紹介できるのはその一部にすぎませんが、まだまだありますよ。
クロワッサンの生地とハッシュドポテトのマリアージュです。
表はこんな感じ。
裏返すと、
「表と裏の顔が違いすぎるぞ!」と、買って帰って来てから思わずパンに向かって叫びました。パンとポテトをつなぐものはもちろんチーズ。仲人役も務めるんですね、チーズさん。
パンじゃないのにほぼ間違いなくパン屋さんに置かれているピザ。こちらも忘れてはいけません。もしや小麦粉とチーズの相性がいいってことなのか? チーズナンとかもあるし!
ちなみに筆者はピザにタバスコは必須なので、「買ってそのまま公園で食べる」といったシチュエーションの場合、ピザを買うことはありえません。持ち帰りオンリー。
こちらもチーズ、明太子、ポテトとパンとの相性がよいものをすべて投入したパンです。やはり表と裏の顔が違いすぎるぞ。
<表>アンパン風……。
<裏>いきなり総菜パンの雰囲気!
中身はこのとおり、明太子で和えたポテトがごろごろと。それにしても明太子、パンという洋食世界にどれだけ食い込んでいるのか。第二のあんこか!?
最後に「ああ、よく見かけるよね」というパンを2連発。
コーンとマヨの組み合わせ、コンビニでもよく見かけますよね。どうもマヨを塗ったパンは重量が増すようで、オニオンブレッドやコーンマヨはずっしりした重みがあります。
そしてホットドッグも定番中の定番。個人的には固めのパンが使われているほうが好きなのですが、これまでパン屋さんではフランスパン系の固めパンを使ったホットドッグに一度しか遭遇したことがありません。あ、書いていてあのお店のホットドッグが食べたくなってきた……。こうしてリサーチしてみると、甘いパンに押されっぱなしだと思っていたイメージに反し、意外に総菜パンも虐げられることなく、日陰者になることなく、ちゃんとお店の創意工夫が詰まった商品がいくつも並んでしました。
どのお店も甘いパンと総菜パンの比率は7:3くらいのイメージだったのですが、実際には6:4くらいかなというのが今回の感想です。ま、4が総菜パンなんですけどね。それでも想像以上に健闘してくれていました。ありがとうパン屋さん!
総菜パンにしろ菓子パンにしろ、それだけで一食になりえるものですが、どうしても栄養バランスは偏ります。たっぷりの野菜サラダと一緒に食べたら理想的ですね。
レタスを丸ごとひとつ手でちぎり、オリーブオイルと塩、レモンを適量かけたサラダと、ガーリックフランス、そしてインスタントのコンソメスープも添えれば、かなり立派な食事になります。しかもなんだかおしゃれ?
なお、買った総菜パンをすぐ食べない場合は、冷蔵庫ではなく冷凍庫で保存しましょう。ちゃんと密閉できる袋に入れればにおいがつくこともなく、冷蔵庫での保存よりも購入したときの状態を保てます。これはすべてのパンにおいて共通ですね。
今回いろいろ総菜パンを買ってみて、甘いパンに押されているどころか大いに健闘しているし、しかもこの豊かなバリエーションはもしかして世界有数クラスなのではと思いました。国別対抗総菜パン世界選手権があったら、日本きっと表彰台ですよ。そういう大会がいつか開催されたら、全力で応援します! これからも頑張れ日本の総菜パン!
※この記事は2017年7月の情報です。
書いた人:椿あきら
猫の下僕をしているライターです。猫と暮らすようになってから、断然家飲み派になりました。著書に『オリンピックと自衛隊 1964-2020』(並木書房)。 Twitter:@nananatsubaki
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