来年4月からインスペクション(建物状況調査)説明義務化。中古住宅選びはどう変わる?

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来年4月からインスペクション(建物状況調査)説明義務化。中古住宅選びはどう変わる?

住宅を購入するときに、選択肢のひとつである中古一戸建て住宅。都市部では特に、新築のマンション・一戸建てに比べて、値ごろ感も高い。来年からはインスペクション(建物状況調査)説明義務化が進められ、安心して取引ができるような状況が生まれようとしている。その前に今、中古一戸建てをどのように見極めて、購入すればいいのか、個人向け住宅診断のさくら事務所創業者長嶋さんにお話を聞いた。

インスペクションによる品質の開示で、高評価の中古住宅も

新築一戸建て住宅に比べて、中古一戸建て住宅の価格は横ばいで推移している。なぜか。その理由の一つに個人間売買が主流の中古一戸建て物件は、現状有姿という契約条件のもと、将来にわたって現出する建物の不具合を、多くの場合に買主がそのリスクを背負わなければならないということがある。

「建物の状況がよく分からないから、価格が抑えられているといえます。建築後10年で半値、25年でゼロ。というのが今の中古一戸建て住宅の価値です」(長嶋さん、以下同)

売買される建物の品質に関して、はっきりとした調査がなされないため、価値が価格に反映されない状況と言えるだろう。結果、日本では外国に比べて中古物件の流通シェアが極端に低い。国は、中古ストックの活用を目指しているため、その対策として、インスペクションと、これを利用した瑕疵(かし)保険への加入促進を進めている。

インスペクションとは、建物の構造耐力上の重要な部分の状況を専門家によって調査するもの。宅建業法の改正によって、2018年の4月から、売主や買主から依頼を受けた仲介業者は、インスペクションの中身を説明し、技術者をあっせんできるかどうかを告知するほか、実施した場合の結果の開示等が義務づけられる。

インスペクションを利用し、外観などからでは判断できない建物の構造耐力上重要な部分の状況をはっきりさせ、取引の不安が解消されるようになれば、どうなるのか。「中古住宅の正当な価値が価格に反映されるようになると見ています。高品質な建物はそれなりに評価されると考えます」

買主にとっては、販売価格が妥当な価格なのか、という客観的な判断材料が増えることになる。売主にとっても、インスペクションを実施し評価を得ることで、築年数や見た目だけでなく、建物の品質で判断してもらえる可能性が高まり、双方へのメリットが考えられる。

今回の宅建業法改正では、インスペクションそのものが義務化されたわけではなく、その費用は誰が負担するのか、診断結果の客観性をどう確保するのかなど、課題も多い。すべての中古一戸建て住宅で、インスペクションが実施されその品質が明確になるまでは、まだ、時間が必要だろう。【画像1】インスペクションとは、欠陥の有無や補修すべき箇所がないか等、第三者機関が診断すること。写真は、モルタルに浮きがないか、基礎外周部を打診棒で点検している様子(画像提供/さくら事務所) 【画像1】インスペクションとは、欠陥の有無や補修すべき箇所がないか等、第三者機関が診断すること。写真は、モルタルに浮きがないか、基礎外周部を打診棒で点検している様子(画像提供/さくら事務所)【画像2】床下に設備漏水がないか、シロアリの蟻道がないか等を調査するため、点検口から状態を点検する。点検口があれば屋根裏も同様に点検を行う(画像提供/さくら事務所)

【画像2】床下に設備漏水がないか、シロアリの蟻道がないか等を調査するため、点検口から状態を点検する。点検口があれば屋根裏も同様に点検を行う(画像提供/さくら事務所)

狙いは築15年以上。インスペクションが広がれば、中古住宅がより選びやすくなる

インスペクション説明義務化は来年からだが、インスペクション自体は可能だ。中古住宅の購入に不安があるなら検討してみる価値はある。

中古住宅の購入を検討する買主にとって、「この販売価格は果たして妥当なのか」「不具合のある物件ではないだろうか」などの不安要素があるだろう。価格の信ぴょう性を確かめるため、また価格交渉の判断材料として重要視されるのは、「より客観性のある診断結果が得られるかどうか」だ。仮に売主側からインスペクションの診断結果が提示された場合、売買に都合の良い診断結果になっていないだろうか、と不安視する買主も少なくないだろう。

物件の検討段階で、買主としてプロの手を借り調査するとなれば、その費用を負担することになるが、より納得のいく診断結果を得る機会となる。購入後の補修費用と比べてみても、数万円程度の費用は、後悔しない物件選択のための必要コストと言えるかもしれない。

市場に出ている中古一戸建て物件は多彩だ。インスペクションの実施を視野に入れたうえで、目を付けたい物件とは。「建築後15年から20年を経た建物がいいと思います。これらの物件は価格的にこなれてきて購入しやすい。15年もたてば外壁の色がくすんだり、汚れ始めているが気にしないこと。外装の劣化は仕方がないものと割り切って、それより、できればプロの手を借りて、構造躯体に不具合がないかどうかを見極める。あとは、購入後にきれいにお化粧を施せば、長く快適に暮らせます」

購入後の外壁の塗り直しや、住宅設備の取り替えなどに充てる費用は、物件本体価格にリフォーム費用も組み込んだローンも登場し、利用しやすくなっている。

木造住宅は、多くの部分が職人の手作業でつくられる。品質にばらつきがあるのも事実だ。見た目に惑わされることなく、しっかりと基本を見極めることが大切だということだ。

最後にプロとして住宅診断に長くかかわってきた長嶋さんは言う。

「インスペクションによって、中古住宅は選択しやすい状況になると思います。基本がしっかり保たれた住宅は、手入れしながらでも長く暮らしていけます。住宅の価値、市場の評価も、そこで大きく分かれる時代がやってきます」

日本で長く続いてきた新築信仰は崩れつつある。流通の環境が変わろうとする今、インスペクションを前提とした中古住宅の検討を考えてみるのはどうだろう。●取材協力

株式会社さくら事務所 創業者 長嶋修さん
元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2017/10/143253_main.jpg
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