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変わらないことが良いこともある / 『The Saga Continues』ウータン(Album Review)

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変わらないことが良いこともある / 『The Saga Continues』ウータン(Album Review)

 アメリカを代表するヒップホップ・グループ=ウータン・クランは、1993年に『Enter the Wu-Tang』でデビュー。本作からは、ラップ・チャート8位をマークした「C.R.E.A.M.」などのシングルがヒットし、アルバムは全米だけで200万枚を売り上げた。3年後の1997年に発表した2ndアルバム『Wu-Tang Forever』は、全米・全英アルバム・チャートで首位に輝き、全世界で大ヒットした。3rdアルバム『The W』(2000年)は全米5位のミリオンセールスを記録するが、翌年にリリースした4thアルバム『Iron Flag』が32位と失速し、以降、ヒットには恵まれないまま現在に至る。

 本作『The Saga Continues』は、2014年に発表された6作目のスタジオ・アルバム『A Better Tomorrow』から、およそ3年振りとなる新作。レーベル移籍を繰り返し、メンバーのRZAが立ち上げたレーベル<36 Chambers Alc>からリリースされた。RZAはアルバムのトータル・プロデュースをマスマティクスと共に務めている。

 彼らの活躍がみられなくなってからは、ヒップホップ・シーンも様々な変化があり、2000年代にはサウス・ヒップホップからクランク、EDM、そして現在のトラップへと流行が変化した。ベテラン・ラッパーたちも、これらの流行を取り入れざるを得ない状況になり、迷走したアーティストも多い。しかし、ウータン・クランは一切ブレることなく、流行りを一切無視した90年代ヒップホップ“そのままの音”で新作『The Saga Continues』を制作。ウータン・ファンや、当時のヒップホップ・アルバムを愛聴するリスナーだけが楽しめれば良い、というような内容といえる。

 レッドマンとインスペクター・デックが、90年代初期の東海岸をそのまま再現した「Lesson Learn’d」、レイクウォンが放つ「Fast and Furious」と、ハードな2曲を終えた後、テンポを落としたミッド・チューン「If Time Is Money」(メソッド・マン)へと繋げる。この曲には、どこか70年代っぽさも感じられる。キラー・プリーストと若手のクリス・リバースがコラボした「Frozen」や、ゴーストフェイス・キラと2015年に死去したショーン・プライスがクレジットされている「Pearl Harbor」、メソッド・マンに見出されデビューしたストリート・ライフ参加の「If What You Say Is True」~「People Say Wu-Tang Clan」など、主にはハードコアが中心となっているが、フックが頭にこびりつく「Why Why Why」や「G’d Up」など、聴き心地の良いメロウ系も絶妙に配置されているので、滅入りはしない。曲間にスキットを入れるあたりの構成も、90年代っぽい。

 音もゲストもグラフィティ・アートも、リイシュー盤かと錯覚するほど、まんま90年代の本作。売れ線など一切無視した彼らの新作に、安心したファンも多いはず。変わらないことが良いこともある。

Text: 本家 一成

◎リリース情報
『The Saga Continues』
ウータン
2017/10/13 RELEASE

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