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できることは、まだまだある。「農業センスのある町」とは?

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できることは、まだまだある。「農業センスのある町」とは?

前編では、北海道の厚真町で農業を営む堀田昌意さんが、売り上げの落ち込んだ原木しいたけを、持ち前の経営センスで見事主力商品にまで育て上げたお話をしました。

そんな堀田さんですが、初めは就農したいという気持ちが薄かったそうです。そこで後編では、堀田さんが農業に本気で取り組みはじめたきっかけと、これからの話を紹介していきたいと思います。

きっかけは「稼ぐ農家」との出会い。

できることは、まだまだある。「農業センスのある町」とは?

——家業である農業を継ごうと決めたのはいつだったのでしょう。
堀田:小さい時から家を継ぐことについて親から言い聞かされてきましたが、就農したいという気持ちはなかったんです。でも、高校生になると「一生続けたい仕事ってなんだろう」と考えるようになりました。工業高校に進学したので就職先もたくさんあったけど、当時は「遊びながらできる仕事ってないかな〜」なんて甘い考えで(笑)。振り返ると、昔から親父の口癖が「農業は好きな時に自分の好きなことができるぞ」だったんです。

やっぱり、仕事をする時は仕事をして、空いた時間には好きなことをするのって大事だと思う。それで、仙台市の自動車の専門学校でもう少しだけ学生生活を楽しませてもらって、地元に戻ってきました。20歳の時に就農して、農家歴は16年目になります。

農業経営のおもしろさに気づいたのは、親父に勧められて行ったオーストラリア研修でした。そこには当別町やむかわ町、旭川市などから大規模経営の農家さんが集まっていて、みなさんしっかり稼いでいました。ある米農家さんは東京や横浜に農家のレストランを開いたりもしていて、その話がすごくおもしろかった。農家にはそういった道もあるのかと。研修から戻ったあとは、売り上げがどんどん上がっていきましたね。

すべては「意欲」から広がっていく。

できることは、まだまだある。「農業センスのある町」とは?

——どういった工夫で売り上げを伸ばすことができたのですか?
堀田:その頃は原木しいたけの市場価格が下がっていた時期でもあって、親父の分(生活費)しか売り上げがありませんでした。なので、農業にはまったく関係のないアルバイトをして300万円くらい稼いで。でも、ふと「いったいこれで何が買えるだろう。この時間を農業に費やしたら、いくら稼げるだろう」と思ったんですよね。

それから、1年で捨てていたホダ木(シイタケ栽培の際に、種菌をつけるための原木)を2年使うようにするなど工夫してみました。それが功を奏して、ホダ木の本数は減らしながら、収穫量を10tから12tに増やすことができました。同時に「もぎたて市」にも参加するようになって、売り上げが3倍に。そのうちに販路が広がって、機械も買えるようになって。周りの人が土地を貸してくれるようになった。農業って生産意欲があると売り上げは上がるし、無ければ下がります。それに、生産意欲がある人には人も集まる。頑張っていたら評価される職業なのかなって思うようになりました。

できることは、まだまだある。

——堀田さんの農業に対するポリシーは何ですか?
堀田:農家全体のイメージを変えていくことですかね。農業機械を洗浄したり、庭の木を剪定したり。とにかく環境をきれいにして、きれいな作物を作るようにしています。

——農業や農的暮らしのイメージを変えて、生産意欲がわくような農家のモデルになるということでしょうか。
堀田:農家にも遊びにきてほしいじゃないですか(笑)。よく納屋で焼き肉をやったりするんですが、少しでも皆に来てもらいたいと思うんです。なので、道路に面している納屋も立て直しました。きれいに見せることで人が訪れたり、直売所にも足を運んでくれる。作物が汚く見えると買ってもらえませんからね。田んぼもきれいにしようと思ったら、トラクター作業に無駄がなくなってきます。できることは、まだまだある。「農業センスのある町」とは?

——堀田さんは北海道農協青年部協議会の副会長をされているそうですね。そういった広い目線から、厚真町農業をどのように捉えていますか?
堀田:厚真町は他の地域から比べても、農業の先進地域なんです。ダムが2個あったり、導水管(町全体に水を安定的に回す)もあったり。農地の基盤整備もされています。ただ、じゃがいも選果場のような施設が整っているのに、それらを生かしきれていない感覚はあります。厚真は火山灰性土壌で水はけが良いから、本来はじゃがいもも育てやすいけど、生産する人が減っている。 “稼げる作物”に取り組む人が少ないのは、もったいない気がします。また、厚真町ではハスカップ栽培も増えてきました。ハスカップは畑がどんな形をしていても問題なく育つ作物です。農薬の回数も少なくて済むし、堆肥を使えばコストはほとんどかからない。庭の隅に植えておけば、孫に小遣いをあげられるくらいにはなります。ハスカップのように低コストで確実に利益になる作物は、他にもたくさんある。僕らの親世代は案外、「農家なんて儲からないからやめておけ」と言います。その人たちに、もう少し厚真町の農業の良さを分かって伝えられたらいいのに、と思う。まだまだやれることはあるし、やっている人ほど得をしている。もっと上手に若い人たちに伝えることができれば、後継者も帰ってくると思います。

センスがいい町、
センスがいい農業。

できることは、まだまだある。「農業センスのある町」とは?

——堀田さん自身は、これからどんな農業をしていきたいですか? 目標にしている規模などはあるのでしょうか。
堀田:就農当時の売り上げが1,000万円だったので、10倍の1億円が目標。そのために、電卓をたたく日々です(笑)。やる理由が、あるのか、ないのか。利益率の高いことを少しずつ積み上げていく感じです。たとえば、うちでは田んぼの畦に生えている雑草を自分で刈ります。農薬を使うと草が生えなくなるので、雨が降ったときに畦が崩れてしまう。結果的に重機屋さんに頼んだり、自分で機械を買って畦を直すんだったら、僕は余計なお金や時間をかけずに草を刈る方を選びます。農薬を使ってもいいけれど、さまざまな用途(特徴)がある中で「何を選んで使うか」を考えることが大事だと思う。僕が北海道農協青年部協議会の役職に就こうと思ったのは、発言力がつくからという理由もあるかもしれません。畦1本にしても、地域性を生かした作物を作ることにしても、「今の農業って、こういうふうにあるべきじゃない?」というのを、マイクを使ってもう少し大きな声で言いたい(笑)。

——技術や知識を自分のためだけでなく、広く伝えたいというわけですね。他の人たちが堀田さんのようになって実力をつけたら、堀田さん自身が儲からなくなってしまうなんてことはありませんか?
堀田:僕の電卓では、自己満足で終わってしまうことが一番安い(儲からない)方法なんです。逆に、地域全体の生産物の質が上がれば高い値段で販売できるから、取り引き有利になります。僕らの米は「たんとう米」という名前で販売されていて、どこにも個人名は入っていません。「堀田米」と名付けて売るためには責任をすべて自分で持たなくてはならないし、それには大きなコストがかかります。厚真の農業には、田んぼの畦をきれいに守ったり、豊富な水資源や太平洋気候の特性を生かしながら30年も40年もかけて“みんなで”頑張ってきた歴史があります。農業を16年続けて、最終的にそういうことが大切だと思ったんです。自分1人がいいトラクターに乗って、いい田んぼを作って、いい環境で仕事ができて、その時は稼いでいるように見えても、次の世代にまで経営を引き継いでいこうとすると難しいかもしれません。

——みんなで取り組むことが、大きな力になる場合もありますね。
堀田:もちろん、独自性のある生産物は個別に盛り上げていくのが良いと思います。だけどたんとう米のように大きなくくりになると、結果的にそれぞれの農家の米が混ざるので、地域全体で米の品質を底上げすることが重要になってきます。厚真町では20年以上前から、粒は小さくても食味に優れた良品質米づくりに取り組んできました。「数ある北海道米の中から厚真の米を選んでもらえるようになる」という町の方向性に水を差して川を蛇行させるより、もっともっときれいな川に整備することで日本一の川になるほうがセンスがいいんじゃないかな。周りから見てセンスがいい町、農業にしたい。だから僕の人生設計(農業経営)は一歩一歩です。周囲の反響を無視して自分のやりたいことだけをするのは楽だけど、それってあまり評価されない。1人で一気に規模を拡大するのではなく、みんなが応援してくれて、評価してくれることに応えたい。周りの人に声をかけて、みんなでもっともっと厚真町農業を盛り上げたい。そういうことなんです。

 

地域の特性や、町が積み重ねてきた歴史を生かしながら、厚真の農業にとって何がベストな選択なのかを模索し続けている堀田さん。

みんなで使える農業機械の導入を検討したり、SNSで四季折々の畑や田んぼの様子を広く伝えるなど、厚真町農業がもっと良い未来に向かうための活動にも取り組んでいます。地域が豊かになることの先に、自分自身の経営が豊かになることを確信して。できることは、まだまだある。「農業センスのある町」とは?Through Me

【記事提供】Through Meは、各地で生きる、人々の暮らし方や叡智を集め、辺境の地から多様な価値観を伝える「自分らしい生き方をする人を100万人増やす」メディア。

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