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これからのマネジメントは面白い!?─多様化するエンジニアのキャリアパスのその先を考えてみた

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エンジニアのタイプはさまざま。現在の職種と役割について

9月16日に開催されたCodeIQ感謝祭で、「多様化するエンジニアのキャリアパス、その先を考える」というテーマで行われたパネルディスカッション。

登壇したのは、2017年6月に独立し、現在はプロダクト・エンジニアリングアドバイザーとして活躍している及川卓也さん、リクルートテクノロジーズの古川陽介さん、LINEの松野徳大さんの3人。ファシリテータを務めたのは、及川卓也さん!

登壇者プロフィール


プロダクト・エンジニアリングアドバイザー 及川 卓也さん
早稲田大学理工学部卒業後、日本DEC、マイクロソフトを経て、2006年にグーグルに転職し、プロダクトマネージャとエンジニアリングマネージャとして従事。2015年11月より、Incrementsにて「Qiita」のプロダクトマネージャとして勤務。2017年6月に独立し、エンジニア組織作りのエンジニアリングマネジメントとプロダクトマネジメント、技術アドバイスの領域で、IT系企業の顧問やアドバイザーとして活動中。


株式会社リクルートテクノロジーズ 古川 陽介さん
富士ゼロックス、DeNAを経て、2016年にリクルートテクノロジーズにジョイン。現在はAP基盤の改善や運用、各種開発支援ツールの開発、またテックリードとしてエンジニアチームの支援や育成までを担う。Node.jsの日本ユーザーグループコミュニティの代表を務め、Node学園祭などを主宰。趣味はゲームとプログラミング。


LINE株式会社 松野 徳大さん
LINEマンガ、LINE Creators Market等の初期のサーバーサイド開発を担当。LINEボット(Messaging API)SDKの開発をとりまとめる。現在は、LINE Ads Platformなど広告システムの開発に関わる。

及川:まずは、お二人の職種と役割について教えてください。

松野:LINEの広告開発部門のマネジメントをしています。1on1(個別面談)をしたり、広告の戦略を立てるためにデータ分析をしたりなど。コードを書いたり、エンジニアリングの仕事はしていないので、正確にはエンジニアリングマネジャーというポジションではないですね。

古川:アプリケーションソリューショングループという、シングルページアプリケーション(SPA)などを作成したり、R&D活動をしている部門のマネジャーを務めています。メンバーとの1on1、プロジェクトの進捗を見たりしています。

シニアソフトエンジニアというソフトウェアのエンジニアリングの道を極める職種も兼任しており、R&D活動にも参加しています。例えばWebアプリケーションやシングルSPAのフレームワークを作ったり、その高速化のためのアイデアなどを考えたりしています。

及川:私は現在、いくつかのマネジメントの顔をもっています。そのうちの一つであるプロダクトマネージャーとして、いろいろな会社をサポートしていますので、本セッションではその立場としてお話させていただきます。

プロダクトマネージャーとは、プロダクトを成功させるために責任を持ってサポートしていく中心となる役割。事業サイドと開発サイドを橋渡しをしたり、法律面も確認など、細々とした作業をプロダクトの企画からリリース、グロースさせていくまで関与します。

事業責任者やディレクターにも近いと思うかもしれませんが、事業面に加え、技術面も合わせて一気通貫で見る役割を担っています。

古川:松野さんに質問があります。メンバーの1on1の頻度について教えてください。

松野:1カ月に1回はやりたいと思っていますが、他の業務で定期的に時間が取れないことが多いんです。でも時間が空いたら、今日はやるぞと決めて1日かけてやっています。

古川:うちは毎週やっていますが、エンジニアとマネジャーのバランスが難しいなと感じています。実は当社の中でもこの両方の役割を担うのは僕が初めてなんです。

リクルートにはエキスパートとマネジメントの道の二つしかなく、今回は実験的な試みだと思っています。僕としてはマネジメントもしてみたい気持ちもあったんですが、リソースの振り方が難しい。この半期務めてみましたが、6:4でコードを見る時間が多いですね。

及川:エンジニアリングマネージャは評価を通じてメンバーの成長を促し、組織自体を強くしていくことや、エンジニアリングリソースの配分を決めていくポジション。つまり人事権を持つマネジャーです。

一方のシニアソフトエンジニアとはいわゆるテックリードというポジションであることも多いかと思います。テックリードは人事権を持たず、マネジャーと協力して、技術面で製品やサービスをけん引していく役割を担っています。

二足のわらじを履く立場はすごく難しいので迷うのもわかります。LINEのテックリード、デベロップメントリードとはどんな役割を担うのでしょうか。

松野:一つのプロジェクトに対して技術的な部分での責任を持つ役割を担っています。うちの会社では、一人のマネジャーが見るのは30人ぐらいのエンジニアです。

そしてデベロップメントリードは少ないと5人、多いと30人ぐらいを見ています。マネジメント職はアーキテクチャのレビューには参加しますが、コードレビューには参加しません。

及川:Googleでの経験から考えると、古川さんのように二足のわらじを履くのはすごく大変だと思う。マネジメントは人を見る役割が大きくて、その人自身が悩んでいたり、技術的な課題を抱えていたり、技術ではないが、成果が出ていないときに助けをしてあげることが重要になりますよね。

自分よりも部下のことを考えるのがマネジャーの役割。そうすることで開発がスケールしていく。例えば1on1を実施する上で工夫しているところがあれば教えてください。

松野:当社の開発組織には、必ずしも1on1をやる文化はないので、工夫ということでもないのですが、メンバーのフラストレーションがたまっていそうだなとか空気感がよくないときに不定期に開催するようにしています。

及川:なるほど。定例化するとそれまで待ったりするけど、不定期だといつでも空気を見て開催できるというメリットがあると。

松野:うちは大抵LINEでメンバーとつながっているので、何か言いたいことがあるとメッセージが投げられます。従って、そこまでオフラインでコミュニケーションする必要性は感じていません。

古川:1on1を定期的にやるメリットは、テディベアデバッグ*のメリットと似ています。「こうなりたい」「こんなことをやりたい」ということを定期的に口に出すことで、だんだん彼らの頭の中にそれに向かうための解法が浮かんでくるのではと思いますね。

テディベアデバッグ
現在の状況を口に出して話すことでデバッグを進める手法。言葉に出すことで、何がどうなっているかが明確になる。

従って、マネジャー側が完璧なソリューションを出さずともヒントを出すだけで、自主的に進んでいける。つまり、1on1までの期間が自分の頭を整理する時間になるという感じ。

及川:私は、1on1はエンジニア一人ひとりが上司をうまく活用する機会だと思っています。マネジャーを壁打ちの題材として使ってほしい。

松野さん、古川さんに質問があります。プロダクトマネージャーと呼ばれている人材がいるかということと、いるとしたらそれはどういう役割を担っている人でしょうか。

松野:プロダクトマネージャーという立場の人は結構います。一つのプロダクトに対して何人かの企画職の人が付くが、そのうちのリード職の人がプロダクトマネージャーを名乗っています。

古川:うちはプロダクトマネージャーという職種は基本的にないですね。それゆえのデメリットも感じています。プロダクトに我が子のように愛情を持って愛し、その未来を自分たちで切り拓いていくんだという自覚のある人材が育つことが理想だと思っています。

ただ、当社は事業会社ではなく機能会社で、事業会社のように大きなプロダクトは持っていないゆえ、そういうポジションを作るのは難しい。基盤やAPIなど、全社共通で使うようなプロダクトは作っているので、そこに対してはプロダクトマネージャがいた方が良いと感じています。

現在のキャリアに進んだ経緯について

及川:現在のキャリアに到った経緯を聞かせてください。

古川:前職ではサーバーサイドエンジニアでした。いわゆる普通のエンジニアとして、Javaでサーバーサイドの開発に従事していました。

とはいえ、クライアントもできないと思っていたこと、個人的にもそちらに興味があったので、クライアントにも携わるようになった。Node.jsやSPAを作るJavaScriptなどの技術を自分のスペシャリティとしてマルチに活動してきた結果、ブログでの発信力や自分の影響力がある程度出てきました。

これらの活動が評価され、シニアという称号が与えられシニアエンジニアに。ちなみに当社のシニアエンジニアとは、一般のエンジニアのロールモデルになる人材です。

シニアエンジニアとして活動していましたが、組織が60人と大きくなったことで20人ずつのグループに分けることになりました。そこで、グループマネジャーとして若手の育成をしてほしいと請われ、グループマネジャーに就任しました。

及川:やりたくない場合、拒否はできるんですか?

古川:拒否はできると思います。でも、僕の場合はマネジメントをやったことをなかったので、やってみたかった。就いてみるとマネジャーはすごくつらい仕事だけど、やって良かったなと思っています。

松野:LINEに入る前は1日中、Perlでソースコードを書いていました。LINEに転職してからもしばらくはコードを書いていましたが、会社の規模が大きくなるに従ってプロダクトの粒度も大きくなっていきました。

それまでは1~2人のエンジニアでプロダクトを開発していましたが、それが5~6人、大きいものでは30人で携わるようになった。年齢も経験もあったことで、テックリードを任されるようになりました。

そうこうしているうちに、メンバーの面倒も見るようにと上司に言われて今に到っています。当社も拒否権はあります。これまでに拒否した人もいるという話も聞いています。

及川:エンジニアはマネジャーになりたくない説がありますよね。

松野:絶対やりたくない、コードを書いていたいという人は多いと思います。

古川:エンジニアとしてコードだけ書いていたいという人は若手に多いと思います。

でも、コードだけで解決できる問題と組織的に解決できる問題は種類が違う。マネジャーになると組織の問題を解決できる。つまり問題の解決する幅が広がるのは良いことだと思っています。

松野:確かに、現場でのやれることがエンジニアだと限られてしまう。僕は10年ぐらいサーバーサイドのエンジニアをやっていました。

サーバーサイドエンジニアとしてやるべきことはほとんどできたのではと思い、頼まれていない仕事にも手を出してきた。そんなときにマネジャーにと打診され、受けてみました。やってみて思ったのは、マネジャーは楽しい(笑)。

及川:エンジニアがマネジメント職に進みたくない理由の一つに、上司を見て楽しくなさそう、辛そうと感じるところがあると思う。

だが、松野さん、古川さんは、辛いこともあるけど、やりがいがあって楽しい職務だと言う。マネジメントは魅力的でやりがいのある仕事というイメージに変えるためにも、今、マネジャーを務めている人はいつもニコニコ、楽しくて仕方がないというふうにしてほしいですね。

マネジメント不足で悩んでいる企業の方は、今すぐ実践してほしい。きっとマネジメント不足を解消できるはず。

私は、新卒で入社した日本DECではお客さま向けの開発をしているエンジニアとして入社。営業サポートをすることになり、お客さま先に同行して説明して売りまくることをしていました。

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当時のDECはお客さまに展開したものを勝手に商品化することができた。そこで従事していたら、希望していた開発職に異動。その後研究開発に異動し、エンジニアとしての道をまい進していました。

周りにいるのは優秀な人ばかり。そんな中で、あるとき彼らができなくて自分ができることは何だろうと考えたところ、仕様をしっかり固めて開発に乗せていくことが得意だとわかったんです。

仕様を固めるためには企画力やコミュニケーション能力が求められる。そういうことが好きなんだと気付き、マイクロソフトではプロダクトマネージャに就きました。

しかしプロダクトマネージャに就くと、エンジニアリングもやりたいという思いが強くなることも多く、Googleではプロダクトマネージャを務めた後に、またエンジニアに戻ってエンジニアリングマネージャを務めました。今は、またプロダクトマネージャ的に企業へのアドバイスをしていることが多いです。

こう見ると、私はエンジニアというキャリアの中で、技術に足を置くか、組織の方に足を置くかを行ったり来たりしていますね。

エンジニアのキャリアパス、その先にあるもの

及川:エンジニアのキャリアパスの先にはこれまで話してきたテックリードやエンジニアリングマネージャ、プロダクトマネージャのほかにもいろいろありますね。例えばエバンジェリストもその一例です。

古川:リクルートにはエバンジェリストと呼ばれる専門職の人はいません。それに変わる仕組みとして、営業と技術が一緒にお客さまのところに出かけて説明している。自社のプロダクトを世界規模で広めたいという場合であれば、エバンジェリストは必要だと思います。

松野:LINEにはエバンジェリスト職を名乗っている人は2人います。当社ではLINE Messaging APIというBOTつくるAPIを提供していますが、その技術に関して使い方などの広報活動をしています。

及川:エバンジェリストに興味のある人は、CodeIQ感謝祭でもよく登壇している日本マイクロソフトの澤円さんに教えを請うといいと思います。

次にCTOについて。両社ともCTOがいるとのことですが、どんな役割を担っていますか。

松野:LINEのCTOは、会社の方向性や採用のビジョンなどを描いています。

古川:うちの場合は、採用や買収や提携という経営と密接にかかわることから、社内のプライベートクラウドを構築する際、アーキテクチャの決定などまで幅広い業務を担っています。

元々はコードを書いていたエンジニアで、ソフトウェアエンジニアというよりハードやセキュリティに詳しい人が務めています。

及川:CTOは、CEOやCOO、CFOなど数あるC職の中でも、役割が曖昧な職位。エンジニアリング組織の長として人のマネジメントを期待されているだけではなく、ある会社ではエキスパートのトップ、例えばフェローのような役割を期待されていることもあります。

難しい役職だと思うけど、エンジニアの先にあるキャリアでもある。また、最近日本でも話題になっている役割に「VP of engineering(開発チームの現場リーダー)」がある。VP of engineeringの必要性について意見を聞かせてください。

松野:特に必要性は感じてはいないですね。

古川:CTOの機能が細分化された先に、VP of engineeringがあるのではないでしょうか。エンジニアリングの決定権はVP of engineeringに任せて、経営寄りのことはCTOが担うというように。

及川:これらのタイトルは組織を越えて普遍的なものではない。必要なら置けばよいし、もし今必要なくてもエンジニアの将来につながるのであれば、考えればいいということでしょうね。

目指すキャリアプランとアドバイス

及川:最後に、目指すキャリアを実現するためのアドバイスをお願いします。

古川:テックリードやシニアエンジニアを目指したいと考えている若手は、技術を伸ばしてほしい。自分の好きなことを伸ばすことが、モチベーションになるし、技術的にも伸びます。興味をまっすぐ伸ばしていくこと。

僕が目指すのは、シニアエンジニアとグループマネジャーの二足のわらじを両立すること。それが実現できれば、若手がマネジメントは嫌だということにはならないと思います。技術もマネジメントもできる最強な人材を目指していきたい。

松野:技術面を伸ばすことは大前提ですが、会社から「こういうことをやってほしい」と言われたことは積極的に受けた方がキャリアパスは広がっていく。意外に嫌だと思っていたことでもやってみると面白いことはある。幅広くやっていくことをお勧めします。

及川:マネジメントも面白い仕事だということは強調したいですね。私はフロントエンドが得意というのと同じように、マネジメントが得意という人は、その得意を伸ばしていってほしい。

また、どこかの段階でマネジメントにならないと昇進できない会社もまだまだあります。そういう会社はエンジニアのキャリアパスの作り方を悩んで、そうなってしまっているのかもしれない。

例えば3~4人の部下を持っている人と同じくらいの貢献を、部下のマネージメントをするという以外でもできるということを会社に提案していくことで、多様性のあるキャリアが描けるようになる。

多様なキャリアパスが描けるようになると、日本のエンジニアリングももっと楽しくなる。ぜひ、みんなで多様なキャリアパスが描ける環境にしていきましょう。

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