あのアフロ元新聞記者、稲垣えみ子が無職になって自炊生活で分かった最強の食事とは
「アフロ新聞記者」として報道番組に登場し、お茶の間の度肝を抜いた稲垣えみ子さん。50歳を機にフリーランスとなり日々、自炊をする生活に。そこで気が付いたのは料理は「メシ、汁、漬物」の3つがあれば十分という事実。食費は1カ月2万円、冷蔵庫ナシ、夫ナシ、子ナシの稲垣さんの食事情とは。
「時代劇メシ」は日本人の最強メニューである
▲玄米と梅干、干しキャベツとエノキの味噌汁、にんじんとかぶのぬか漬けの定番メニューに、ちょっとぜいたくな焼きがんもどき、のりつき
―― 稲垣さんは東日本大震災の原発事故をきっかけに冷蔵庫ナシ生活を始めたそうですが、それは今でも続いているんですか?
稲垣:はい、そこから私の食生活がガラッと変わったんですよね。まぁ、食材を長期保存できないですから、料理内容は変わりますよね。
―― ちなみに現在の食生活は……?
稲垣:メシ、汁、漬物、以上です!
―― なんと、シンプル!!
稲垣:テレビや映画で時代劇を観ると、食事のシーンは大体「メシ、汁、漬物」じゃないですか。約500年も前から食べられていた食事が今も食卓にのぼるというのは、やはり日本人にとってのソウルフードはこの3つなのではと思いまして。また、それがおいしそうだったりするんですよ!
干し野菜を使えば出汁なしでウマウマ味噌汁の完成!
▲ベランダで干した野菜に味噌を入れお湯を注ぐだけ。味噌は麦味噌派
―― 確かに、時代劇の食事ってやたらおいしそうに見えます。稲垣さんが作る「メシ、汁、漬物」の具体的な内容は?
稲垣:「メシ」は玄米が多いです。我が家は炊飯器がないので鍋で炊いていますが、一晩、水に浸けた玄米を鍋にかけて出来上がり。炊けた後はおひつに入れて保存します。少し硬くなってきたら雑炊やチャーハンにしてアレンジ。
「汁」は味噌汁です。味噌は常温保存できますから、冷蔵庫ナシの我が家ではテッパン調味料! お椀の中に干し野菜と味噌を入れてお湯を注ぐだけで完成です。
―― 干し野菜とはなんですか?
稲垣:買ってきて余った野菜を干すんです。干すことで保存がききますし、太陽の熱を通せば野菜のうま味がギュっと凝縮する。干ししいたけの戻し汁がうま味たっぷりの出汁になりますよね。あれと同じ感覚です。ザルに余った野菜をバラバラにしてベランダに干せば半日から1日で完成。ベランダに干してあるいろいろな野菜をむんずとつかんでお椀にポイ。そうすると野菜のうま味が溶けだして出汁いらずです。
―― なんとも合理的ですね。とはいえ漬物はさすがに面倒なのでは……。
稲垣:「漬物をつけている」と言うと周りからは「エライね」やら「すごいね」やら称賛の嵐ですが、実はすごく簡単。みんな「ぬか床=腐る=コワイ」の図式が頭に浮かびすぎなんです(笑)。コツは毎日かき混ぜること。私は毎日、漬物を食べますから、その度にザクザク混ぜればいい。これだけです。きゅうりやナスをブスっと入れて混ぜるだけで、一品できあがる優れものです。
おススメは新生姜やトマトなどの野菜だけでなく、こんにゃくや厚揚げも美味です。
ぬか床を恐れるな! ブスッと差して混ぜるだけで魅惑の逸品ができる
▲ボリュームがほしいときは厚揚げをプラス。トマトとニラで味噌炒めに
―― こんにゃくや厚揚げも漬けちゃうんですか!!
稲垣:厚揚げはフライパンで野菜と一緒にゴマ油で炒めておかずにするのもいいですよ。
―― すでに味がしっかりついているから調理しやすいですもんね。もともと稲垣さんは粗食だったんですか?
稲垣:いえ、まったく(笑)。仕事する独身女性の楽しみなんて食べることぐらいしかないですから、話題のレストランにかたっぱしから行き、有名シェフのレシピ本を買い込んでは自宅でワールドワイドな料理を作っていました。当時は「メシ、汁、漬物」なんて地味すぎて“かわいそうな食事”だと思っていましたから。
でも、「時代劇メシ」を食べるようになってから、料理はワンパターンで十分満足ができると気が付いた。ステーキやパエリアを毎日食べると飽きるけど、「メシ、汁、漬物」はまったく飽きない。旅館の夕飯ってごちそうがズラリと並びますよね。1泊、2泊ならうれしいけど、3泊目からは「また天ぷら……」となりません? でも、旅館の朝食は3日続いても食べられる。
―― そうですね。旅館の和食って何日続いても平気な気がします。
稲垣:日本人は勤勉だから、焼き魚の翌日は麻婆茄子を炒め、その翌日はパスタをゆでて、週末は頑張ってシチューを煮込んだりしますよね。食事なんて毎日のことなんですから、日々、違う料理を作るなんて相当な料理好き以外は地獄の行為(笑)。だから「料理が苦手」と思う人が増えちゃうんです。
毎日のことなんですから、頑張りすぎずにワンパターンでいい。そう思ってからラクになったし、食費も減った。そして何より、食事が楽しみになりました。
―― あぁ、それは納得です。
モテたければ鍋でメシを炊き、味噌汁を作れ!
稲垣:あと、男性に強く申し上げたいのは鍋でメシを炊き、味噌汁が作れれば必ずモテます!!
―― 言い切りましたね(笑)。そのココロは!?
稲垣:男性の家に遊びに行って「メシつくるよ」となりますよね。そこで、凝りまくった肉のなんちゃら巻きみたいなのが出てくるより、鍋でゴハンと味噌汁が出てきたらうれしくないですか?
―― そういえばいままで、男性宅で鍋メシや味噌汁を出されたことがありません! 出されたら俄然、うれしいです。なんだかサバイバル能力が強そう気がして。
稲垣:でしょ! この男性は炊飯器がなくてもメシを炊けて、温かい汁を作れると思うと、軸がある人なのではと思いますよね。そして鍋で炊くメシは、炊けば炊くほおいしくなるんです。水はこれぐらい入れたほうがふっくらするとか、蒸らし時間はこれぐらいがベストとか、チャレンジ精神があればいくらでも改良ができる。
温かい汁ものは人の気持ちを「ホッ」とさせる効果があるから、女性がリラックスしやすい。「この肉、どう食べればいいの!?」と思うような派手な料理より、「マイベストな鍋メシと味噌汁」を出せば向上心とサバイバル精神、そして優しさまでをアピールできてモテモテです!
プロフィール
稲垣えみ子
1965年、愛知県生まれ。一橋大学卒業後、朝日新聞入社。論説委員、編集委員をつとめ2016年に退社。最新著書に食への思いを綴った『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)がある。もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓 作者: 稲垣えみ子 出版社/メーカー: マガジンハウス 発売日: 2017/09/07 メディア: 単行本(ソフトカバー)
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※この記事は2017年9月の情報です。
撮影:八木虎造
書いた人:中屋麻依子
21歳で物書き稼業に足をつっこみ、気が付けば10数年。漁師から起業家、ハリウッドスターまで述べ10000人以上にインタビュー。ウマいメシと至福の一杯のために物を書くをモットーに日々、文章と戯れ中。座右の銘は「酒の誘いは断るな」。
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