体験を伝える―『ガジェット通信』の考え方

面白いものを探しにいこう 本物を体験し体感しよう 会いたい人に会いに行こう 見たことのないものを見に行こう そしてそれをやわらかくみんなに伝えよう [→ガジェ通についてもっと詳しく] [→ガジェット通信フロアについて]

【荒川ケンタウロス】 荒川ケンタウロスが自主レーベルを立ち上げ、 完全セルフプロデュースで再スタート!

半年間休んでいたライヴ活動を再開するとともに自主レーベル『MY UNCLE IS VERY FAMOUS TENNIS PLAYER RECORDS』を立ち上げ、完全復活を果たした荒川ケンタウロス。早速、8月16日に3カ月連続配信シングルの第一弾「暁」をリリースした。そんなシングルに併せてお届けする全3回のインタビューの第1回目。懐かしさと切なさが入り混じる“歌心”という荒ケンの一番の魅力が凝縮された「暁」の話はもちろん、曲作りに対する信念や自主レーベルを立ち上げた経緯、理由についても訊いてみた。
L→R 尾越(Dr)、土田(Ba)、一戸(Vo)、楠本(Gu)、場前(Key) (okmusic UP's)
──半年間のライヴ活動休止を経て、6月3日(@TSUTAYA O-nest)と8月19日(@新代田FEVER)の2回、ワンマンライヴを開催しましたが、まずはその感想と手応えを教えてください。
楠本
「8月はちょっと特殊な感じで、初めて観に来る人も多かったと思うんですよ。」
──チケット1枚で2名入れるという太っ腹のライヴでしたね。
楠本
「初めて来た人には“荒川ケンタウロスはこんな音楽をやっている”ということを示せたと思いますし、新曲もいっぱいやったことで、いつも来てくれている人にも驚いてもらえたと思います。改めて、自分たち自身も含めて、荒川ケンタウロスがやっていることを再認識できるライヴになりましたね。」
場前
「未発表曲を含めて新曲が多いライヴだったので、自分はまだCDを出していない頃の感覚に近かったですね。それはそれで新鮮で楽しかったです。初めてやった曲もあるし、何回かライヴでやっているけど、まだ音源化していない曲もあって。そういうプレミア感をお客さんはどう楽しんでくれるのかな?っていうのはありましたね。」
土田
「いつも以上に楽しくできて、もっとライヴしたい!という気持ちになりました。」
尾越
「6月のライヴも、8月のライヴも、前より全然自由にできるようになりました。緊張しなくなったんですよ(笑)。ライヴ活動を休んでいたにもかかわらず、すごく伸び伸びとできたし、不安は全然なかったです。開き直ってできるようになったのかな?」
──8月のライヴを観せてもらった時、みなさんが楽しんでいることはとても伝わってきましたよ。
一戸
「休んでたから忘れられてるんじゃないかな?っていう不安もあったんですけど、6月のライヴは思っていたよりも早くチケットがはけたんですよ。ライヴもお客さんがガッと盛り上がってくれて、かなり作ってくれた印象がありました。8月は1枚でふたり入れるってことで、知らないバンドのライヴに連れて行くというのは、もしかしたら若干ハードルが高いかもって思っていたんですよ。“埋まらなかったらどうしよう…”と思ってたんですけど、多くのお客さんが友達を連れて来てくれて。他のバンドが同じことをしたらどうなるか分からないですけど、そこは人に勧められるバンドなんだなってちょっと思いましたね。多くの人に勧めやすい、幅の広い音楽をやっているって再認識しました。ただ、ライヴの内容に関しては納得がいってなくて…もっとライヴを重ねなきゃダメだなって。6月も8月もワンマンという雰囲気は出ていて、お客さんとの距離もすごく近かったんですけど、もうちょっとプロフェッショナルな部分は出していかなきゃいけないと思いました。」
──その2回のワンマンライヴは、バンドの復活とか、自主レーベルを立ち上げて再出発するとか、そういうことをアピールするという意味合いもあったのですか?
楠本
「それほど気負っていたわけではないんですけど、改めて自分たちがやりたいというか、やりやすい環境で再スタートするという気持ちは、みんなあったんじゃないですかね。」
──なぜ自主レーベルを立ち上げたのか、その経緯や理由を教えてもらってもいいですか?
楠本
「フルアルバムを作りませんか?って話が、それまで一緒にやっていた日本コロムビアからもあったんですけど結論から言うと、もう一度自分たちの思ってるやり方でやってみたかったんです。今回はセルフプロデュースでやっているんですけど、メンバーの中で作る曲の割合が僕が一番多いのもあり、アレンジをはじめ、“自分がカッコ良いと思うもの”に対して最終ジャッジをする人間が自分じゃないっていうのに疑問が大きかった。それによってプラスになった効果ももちろんあるんですけど、“自分のセンスは間違っていない”とも思っていたのでプロデューサーを入れずやることに決めました。それでも日本コロムビア側は一緒にやりましょうと言ってくれてたみたいなんですけど、フルアルバムを作るとなるとレコーディングに半年ぐらいかかってしまうので、それが精神的にも疲れるんじゃないかなって。“そんな環境で、いいものが作れるのか?”と思い始めた時、場前くんが(低音部感音性)難聴になってライヴ活動を休止することになったので、メンバーといろいろ話し合って、マイペースってわけではないんですけど、自分たちの思うやり方でやってみようということになったんです。」
土田
「曲を作っている人間にしてみたら、変わったところや削ったところにも表現したいことが詰まっていたのかなって見ながら思っていたので、一度、自分たちがジャッジしながら作ってみてもいいんじゃないかって。そういう話をみんなでしましたね。」
楠本
「作っていて楽しくない瞬間が少なからずあったんですよ。それなら…って。もともと自分たちでやれていたし、そこには自信があったからまったく怖くはなかった。これから出すものに関しても、それは変わらないですね。これまでもアレンジに関しては、僕が作った曲はデモの段階から大部分変わってないんです。だから、すでにやっていたことをもっとシンプルにというか、目標に辿り着くまでの過程を最短距離にしていこうってことなんです。今回のレコーディングではリズムパターンを決める時、リズム隊のふたりと僕とでスタジオに入って、キーボードをレコーディングする時は場前くんとふたりで入って詰めていくという作業をやっていたので、結果的に僕は休めなくなったんですけど(笑)、僕が直接伝えたことですごく良い効果が生まれたというか。細かいところまでしっかり作れたんじゃないかと思いますね。」
──現在、自主レーベルから3カ月連続でシングルを配信リリースしている真っ最中ですが、そのアイデアはどんなところから?
楠本
「曲を溜めてフルでドーン!といくのではなく、録っては出してみたいな感じにしたかったんですよ。今回、レコーディングの期間がこんなに短いのは初めてじゃないか?ってぐらい短くて。でも、短期間でこれだけできるんだ!?ってメンバー全員が感じていると思います。逆に今まで時間をかけすぎていた。しっかり詰めた上でフレッシュなうちに録ることも大事じゃないかなって思ったのと同時に、待たせるのも違うかなって思って、まずは配信でやってみようって話になりました。」
尾越
「今までCDありきでやってきたんですけど、録ったらすぐに聴いてもらいたいという気持ちもありますからね。配信だったらそれができるじゃないですか。」
──活動を休止している間も曲は書き続けていたそうですが、その中から配信リリースの第一弾が「暁」なったのはどんなところから?
楠本
「これは、みんなが選んでくれたんですよ。」
場前
「持ち曲の中から配信する3曲を選んだんですけど、その中で順番として1番は「暁」だよねって、すんなりと。」
尾越
「「暁」以外の2曲に関しては悩んだりもしたんですけど、「暁」は満場一致で決まりました。個人的にもこの曲をプッシュしたいという気持ちで話し合いに参加しましたし。」
──その「暁」は楠本さんの作詞作曲ですが。
楠本
「一番最近作った曲なんですよ。僕、二児の父なんですけど、曲を作りながらいつもメロディーと一緒に歌詞が出てくるんですよ。で。こういう歌詞が出てきたんだったら、きっと息子の曲なんだろうなと思って仕上げていきました。最初にサビのメロディーが出てきたんですけど、これが泣けるようなメロディーで。メロディーが歌詞を呼んできたんですよね(照)。“無償の愛”と言いますか、シンプルに子供のためなら死ねると思ってるんですよね。いろいろな曲があっていいと思うんですよ。僕らには恋愛の歌もありますし、友達の歌もありますし、懐かしい歌もありますし…人生全てを歌っているんです。何かしらに対して、ノンフィクションで作っていることが多いんじゃないかな。」
──歌を聴かせるシンプルな曲ですけど、アレンジはどんなふうに作っていたのですか?
楠本
「ギターソロはありますけど、間奏がほぼないんですよ。駆け抜けるような感じで、出来上がってみたら3分なかった。ザ・ビートルズって1曲が短いじゃないですか。ザ・ビートルズと比べたらおこがましいんですけど、意図して間奏をカットしたわけではないんですけど、無意識のうちにいらないと思ったんでしょうね。で、最後にピアノが初めて登場するメロディーで終わるっていう。そこがグッとくるんですよ(笑)。」
──1番で前へ前へと演奏を引っ張っていったベースが、2番ではメロディアスになるじゃないですか。その変化が歌詞を書いた楠本さんや、それを歌っている一戸さんの気持ちを代弁しているように感じました。子供は日々、どんどん成長していくけど、歌詞にある“そんなに急がないでもいいんだよ”という気持ちを巧みに表現しているんじゃないかって。
土田
「楠本くんってデモを深夜に上げる癖(へき)があって…」
楠本
「癖じゃないよ!(笑)」
土田
「「暁」のデモを受け取った翌朝、たまたま電車の中で座れて、デモを聴くのにちょうど良い環境だったんですよ。で、イヤホンで大音量で聴いたらすごく良い曲だったし、子供に対して書いた曲だってすぐに分かったんですよ。それですぐにメールしたんです。“すごく良かった”って。」
楠本
「ありがたいです。」
土田
「子供を見る親の目線っていうか、やさしい目や柔らかい雰囲気が自分たちのバンドにもあるんじゃないかって。絵もすぐに浮かんだし、すぐ歌ってもらえそうだなって王道感も感じられたし。デモの純ちゃん(楠本)の声の感じもすごく良かったから、ぺーじゅん(一戸)の声で聴いたらもっといいだろうなってイメージもできて。」
尾越
「僕もデモを聴いた瞬間、今までにないパワーを感じたというか、すごい曲だと思いました。“いい曲ができた!”って思わずツイートしたぐらいだったんですけど(笑)。だから、ドラムは邪魔しないようにしようと思いました。8ビートの美学と言ったら大袈裟かもしれないですけど、それぐらい削ってやろうと思ってフレーズを作りましたね。その後、足りないところや、もうちょっと遊んでもいいんじゃないかなってところは楠本さんに肉付けしてもらいましたけど。」
──作り上げたって言うよりは、そのまま出てきたものを曲にしたという感じだったのですね。一戸さんはどんなことを意識しながら歌ったのですか?
一戸
「いい声で録りたいと思いましたね。あとはいつも通り、歌詞の意味に寄りすぎたり、気持ちが入りすぎないように歌ったんですけど、ミックスの作業でコンプを掛けるのをやめてもらったんです。そこがいつもと違いましたね。メンバーの間でも意見が分かれたんですけど、せっかくセルフプロデュースで作るんだからっていうのもあったんで、わがままを言わせてもらって、コンプなしで録ったままの歌をそのまま使ってもらったんです。コンプを掛けるのと掛けないのでは聴いた瞬間から違ったんですよ。コンプを掛けたやつは歌の語尾の表情とか高音の伸びやかさとかが消えていて…でも、コンプを掛けたら掛けたで歌がもっとくっきりするから、そこの良し悪しはあるんですけど、「暁」はもっと素朴な、いつもの自分の歌のほうが活きると思って。だから、「暁」の歌は9月と10月にリリースする2曲とは耳触りが違うと思います。あとは、歌から入る出だしの2行を特にいい歌にしようと思いました。そこがこの曲の肝だと思ったんですよ。荒川ケンタウロスを知らない人が聴いた時の、出だしの2行にもなるので絶対にいい歌を入れようと。」
──なるほど。シンプルな曲ではあるけれど、そういう細かい気遣いや試みをやっているからこそ、曲や歌が生きてくるわけですね。
楠本
「はい。それでこそ、セルフプロデュースの意味があると思うんですよね。」
取材:山口智男
配信シングル「暁」
2017年8月16日配信開始

1 2 3次のページ
エンタメ
OKMusicの記事一覧をみる
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。