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「継ぎたい」「継いで欲しい」 「でも、継がせられない」。ある離島の物語

「継ぎたい」「継いで欲しい」 「でも、継がせられない」。ある離島の物語

みなさん、こんにちは。「CAMPFIRE」の菅本香菜です。副業では旅するおむすび屋さん「むすんでひらいて」としても活動しています。

今回は、私が出会った離島でのお話です。

「本当は、息子と一緒に漁したいんやけどな」

「継ぎたい」「継いで欲しい」 「でも、継がせられない」。ある離島の物語

青い空と、青い海。でも、いわゆるリゾート観光地ではなく、漁業を暮らしの中心に置いた、営みの美しさが残る島。

早朝に帰ってくる漁船、漁港でじゃれ合う猫、畑仕事をする島民…。

初めての場所なのに、なんだか懐かしさを感じるような風景たち。”のんびり”を許してくれるような空気のなかで、海を眺めて深呼吸をする幸せを感じられます。

私が上甑島(かみこしきしま)を初めて訪れたとき、漁師さんと飲みながら話していると、こんな言葉と出会いました。

「漁師の仕事が好きで、仕事にも誇りを持ってる。でも、この前息子が『島に帰って一緒に漁をしようか?』と言われたとき、素直に頷けんかったんよ。息子の家族のことを考えたら、その幸せを保証ができんと思って。本当は、一緒に漁をしたいんやけどな」

全国的にも漁獲量や魚価が低下していますが、甑島は離島ということもあり、食卓に魚を届けるまでに多くの中間業者が入ります。そのため、現状の流通の仕組みに乗せると不利な状況になることが多いそうです。

”後継者不足”という言葉はよく耳にしますが「継ぎたい」「継いで欲しい」「でも、継がせられない」——。その言葉の裏には、いろんな感情が絡まっていることに気づき、胸が痛みました。

「島の人みんなが幸せじゃないと
 本当に幸せだとは思えない」

「継ぎたい」「継いで欲しい」 「でも、継がせられない」。ある離島の物語

そんな漁業の課題に対して、漁師ではない若者が島の漁業の流通を変えようと模索しています。上甑島でお豆腐屋さんを営む「山下商店」のヤマシタケンタさん。

今、取り組んでいるのは『漁師に会いに行く参加型フェス KOSHIKI FISHERMANS FEST』の開催と、漁師さんから直接食卓に魚を届ける新しい流通の仕組みづくりです。

「島を支えてくれている漁師さんの想いやかっこよさを直接伝えるきっかけを作ることで、島の漁師ファンを増やしたいですね。『あの漁師から魚を買いたい』という、漁師と消費者との新しい関係を作りたい。そして、お客さんに喜んでもらっている漁師の姿を見て、子どもたちにとって漁師という仕事が憧れの仕事になってほしいですし、『継ぎたい』と子どもに言われた漁師が、素直に喜べるような島の未来を作りたいです」

ケンタさんの想いの根底にあるのは「漁師を応援したい」でも「新しい挑戦にワクワクする」でもありません。島に育てられ、島に受け入れてもらってきたからこそ、恐れや責任感を背負いながらも、すべて自分ごととして一歩を踏み出しています。

「甑島には高校がないので、高校に進学する人はみんな島を離れます。僕も中学を卒業して島を離れたひとりです。ジョッキーになるという夢を追いかけて島を出ました。有力騎手として期待されていて、島の人も応援してくれていましたね。だけど、減量に苦戦して挫折してしまい、絶望的な気持ちで島に戻りました。そのときにまた受け入れて支えてくれたのも島の人たちだったんです」

小さな島の集落では、通りすぎる人はほとんどが知り合いという状況。関わる人の流れが緩やかだからこそ、関わる人との関係が積み重なっていく。集落全体が家族のような空気が流れています。

「この島で暮らすなかで、僕ひとりで幸せになったって心から喜べない。島の人みんなが幸せに暮らせないと、本当に幸せだとは思えないですよ。島の人口減少が進むなかで、島外の人たちとの交流は不可欠です。だからこそ、島の未来のために島外の人たちとも継続的な関係を築いていきたい。ただ人が流れていき消費していく観光地ではなく、ずっとつながり合える島の姿を作っていきたいです」

またこの島に帰って来たい。
素直にそう思いました。

「継ぎたい」「継いで欲しい」 「でも、継がせられない」。ある離島の物語

島の人に支えられ、島の人に育てられた上甑島の人たちは、お互いを想い合う気持ちを大切にしています。それが島外の人だとしても、関わる人のことを想ってくれます。 

私にも「兄(あん)ちゃん」と呼べる漁師さんの存在ができました。家族との夜ご飯に招待してくれて、私のルーツについて聞いてくれました。そして、私が島を離れるフェリーに乗る前に1通のメールをくれたんです。

「仕事が入っとって、見送りに行けんでごめんな。また会えるのを楽しみにしてます」

またこの島に帰って来たい。素直にそう思いました。

島の営みに惚れ、人に惚れ、いつの間にか「帰ってくる場所」になる。そうやって島に関わり続ける人が増えることで、積み重ねてきた島の美しさを未来にも伝えられるはずです。その一歩が、ケンタさんが取り組む、島の漁師と食卓とを結ぶ流通づくり。

共に島を想う仲間を集うため、クラウドファンディングにも挑戦しています。みなさんも、甑島の未来をつくるひとりになりませんか?Licensed material used with permission by CAMPFIRE

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