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「独身税」という意見で波紋 結婚が重負担という現状の打開策は?

「独身税」という意見で波紋 結婚が重負担という現状の打開策は?

独身税の議論が話題に

北國新聞が配信した記事がネットで話題になっています。
参考:かほく市ママ課「独身税」提案 財務省主計官と懇談

実際には、石川県かほく市で8月末に開かれた「かほく市ママ課」と財務省主計官阿久澤氏の意見交換会で、参加した女性メンバーから「結婚し子を育てると生活水準が下がる。独身者に負担をお願いできないか」という質問があり、阿久澤氏は「確かに独身税の議論はあるが、進んでいない」と述べるやり取りが行われただけのようです。

ところが、まるで既婚で子育て中の女性が、自らの生活水準を維持するために独身税の導入を提案したかのように受け取る人が後を絶たず、「独身者に対する逆差別だ」という非難が出ています。

この意見交換会で本当に「独身税」の導入が議論されたかどうかは別として、「独身税」という聞き慣れない言葉が出てきている背景には、税負担、未婚率の上昇、少子化そして過疎化など現代社会が抱える問題点が隠されています。そこで、「独身税」を入口にして、こうした諸問題の解決のために、本質的にどのような視点を持つ必要があるのかについて、3つの視点からアプローチしていきたいと思います。

税制から見た「独身税」の是非

一つ目は、税制の視点です。「子育て中の夫婦世帯への経済的支援」として独身税を新設するという新たな政策を実現するためには、同時に新たな財源が必要になるという考え方で、旧態依然とした役所的発想と言えます。もし本当に「子育て中の夫婦世帯への経済的支援」をしたいのならば、税金を徴収して給付するという面倒な手続きを踏まず、該当する世帯へ「減税措置」をとる方が、行政コストも安上がりですし、実質的な効果も変わらないはずです。

独身税は、今回新たに出てきた税金ではなく、日本では2004年に自民党の子育て小委員会が提案したことで広く知れ渡りました。世界的に見ると、ブルガリアで1968~1989年まで導入されていた実績があります。ただし、ブルガリアが独身税を導入した目的は、独身者から徴収した税金を子育て中の世帯へ再配分して、子持ち家庭の生活水準を維持するためではありません。ブルガリアでは、1960年代から少子化が進行していたために、将来的に労働力人口が不足することが懸念されていました。

そこで、独身者に収入の5~10%という高率な独身税を課し、早期に結婚に踏み切ることを促すことが目的でした。そういう意味では、今回話題にあがっている独身税とは目指すところが異なります。しかも、ブルガリアの場合、出生率は上がらずむしろ下がりました。高率な独身税が、独身者の可処分所得を下げ、結婚への準備にマイナスになったことが原因と言われています。

税金というものは、基本的に受益者負担という要素がなければ、支払う側にインセンティブが働きません。ブルガリアで導入した独身税は、インセンティブが働かないペナルティとしての税金ですから、その点においても独身税が意図した成果が上げられなかった可能性があります。同様に、今回日本で話題となっている独身税にも受益者負担という要素がまったくなく、独身者に対してペナルティとしてしか機能しないため、おそらく期待する導入効果は得られないと思われます。

首都と地方 安易なばらまき行政での部分最適は本当に有効か?

二つ目は、首都と地方という視点です。今回、話題の舞台となった石川県かほく市は、住宅取得、家賃、子育て支援などの面で補助金や行政サービスが手厚い街で、東洋経済新報社が2017年6月20日に公表した「住みよさランキング2017」で全国4位にランクしています。

しかし同時に、2014年民間シンクタンクの日本創成会議がまとめた全国の「消滅可能性都市」896市町村に、かほく市はリストされています。そのため、同市は少子高齢化が進む将来を見越し、住民の減少が大きくなると市そのものの存続が危ぶまれることから、「日本一ママにやさしい街」というスローガンを掲げて、住民の誘致に力を入れています。「ママ課プロジェクト」も、そうした一連の動きの中で創設されました。

ここで考えなければならないことは、各地方自治体が税金をかけ街の魅力度をアピールする住民の誘致合戦に、どれだけ意味があるかということです。少子高齢化が進めば、現在の行政サービスを維持するために必要な住民数を維持できなくなる地方自治体が現れるのは、残念ながら当然のことです。しかしながら、こうした部分最適を目指す活動が、全体最適で考えればマイナスになる可能性に目を向けるべきでしょう。自分の街だけ存続できれば良いという話ではないということです。

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