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【鈴木心】スタイルを持たない写真家が、社会をアップデートする

【鈴木心】スタイルを持たない写真家が、社会をアップデートする

NHK大河ドラマ『平清盛』、JR東日本『JR SKISKI』、サントリー『角ハイボール』。これらの広告のポスターを見たことがない人は、どれくらいいるだろうか? 限りなく少ないのではないか、と私は思う。

これらを撮影したのは、写真家、鈴木心である。

私はそこに必然を感じている。
それは、アマナ時代に徹底的にカメラのテクニックを磨いたことだけではなく、そもそも鈴木心という人間が、社会というものをはっきり意識して生きてきたことが大きいと思っている。つまり、承認欲求やアートとしての写真表現ではなく、色でいえば「白」の表現ができる人間。世の中にいる青の人にも赤の人にも受け入れられる表現は、自意識を排除した「白」の表現でなければ成立しない。鈴木心はそれができる写真家だ。

そしてその社会性を示すように、写真の楽しさを多くの人に知ってもらう出張写真館「鈴木心写真館」、コミュニケーションとしての写真を伝えるワークショップなど、従来の写真家の枠を超えた活動を展開している。

でも、心さん。
その社会性ってどこからくるんですか?
そして、写真で社会はよりよいものになりますか?

これは、鈴木心の社会的な活動にスポットを当てながら、そのルーツに迫り、そして「社会をよりよいものにしていく」という課題に向き合ったテキストだ。

「写真で人の能動性を開発する。
 それがモットーなんです」

——まず、「鈴木心写真館」を始められた経緯についてうかがってもいいですか。

鈴木心(以下、鈴木):最初は、2011年の震災の後にフリーマーケットをやったんですよ。そこでうちからの出し物として、SNSのポートレートを撮りますよって——僕が即興でできることってそれくらいしかなかった。写真を販売するのはちょっと違うなあと思ったから。

——手応えとしてはどうだったんですか。

鈴木:「自分のことをちゃんと撮るということが、今こんなに需要があるんだ」って体感して。そこで、写真展や写真集みたいな「自分が写真で主役になる表現」じゃなくて、いらっしゃる方が主役で、その人たちに写真でできることをやろうという気持ちが芽吹いたんですよね。

そっち側を強化していくなかで、写真を好きな人たち・写真を撮ってる人たち——潜在的にたくさんいますよね。そういう人たちと、写真家の間に大きな溝があると思って。

——溝?

鈴木:例えば音楽なら、みんな、好きなミュージシャンのことを知りたがるじゃないですか。だけど多くの人は、写真を撮っているのに写真家のことは何も知らない。これは大変な溝だなと。「鈴木心写真館」はそこを埋める手段になっていくに違いないと考えて、行動したのが始まりですね。

——これまで何人くらい撮影してきたんですか?

鈴木:だいたい年24回開催していて、年間だとのべ3,000〜4,000人、これまでのトータルでいえば14,000人は撮っていますね。【鈴木心】スタイルを持たない写真家が、社会をアップデートする

鈴木:僕は鈴木心写真館を「写真のアトラクション」って言ってて。アトラクションって、お客さんが楽しむもんじゃないですか。だから、撮られることを楽しんでもらうっていう。

——なるほど。

鈴木:鈴木心写真館の体験を通して、写真を撮られること、写真を見ること・見せることが楽しいということを知ってほしい。自分がいつもよりよく撮られてる写真を見ることは、写真のよさを知るための、一番わかりやすいきっかけだと思うんですよね。それで「プロってすごいな」「写真っていいな」と思ってもらって、僕に興味を持ったり、写真がうまくなりたい人はワークショップに来てもらって、写真館のお手伝いもしてもらう。写真で人の能動性を開発するっていうのがモットーなんです。

——さっき、写真を「自分が主役になる表現」じゃなくて、とおっしゃったんですけど、心さんの写真も活動もまさにそこが一貫されていると思うんですよね。やっぱり、シャッターを押した瞬間、プリントができた瞬間がピークな人もいるわけじゃないですか。その中で心さんは写真を本当にツールとして考えていて。

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