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南極で働くKDDI社員、真冬を乗り切るべく「雪かき」する【南極連載2017第3回】

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日本から1万4,000km離れた「南極」に赴任中のKDDI社員による連載企画。2016年11月に日本を出発し、その後14カ月も日本に帰れない彼の南極滞在中のミッションは、「昭和基地の通信環境をひとりで守る」ということ。日々の業務の様子から、食事や暮らし、そして休日の過ごし方まで、現地からのレポートをお届けしていきます。

7〜8月の南極は「真冬」。雪かきが重要な任務です

TIME & SPACE読者のみなさん、こんにちは。KDDIから国立極地研究所に出向している笹栗隆司です。

今回は7月から8月にかけての様子をお伝えします。

7〜8月は南極の真冬にあたり、ブリザード(吹雪)が毎週のようにやってきました。風の強さと見通しの悪さで「複数名での外出」「外出禁止」という二段階の判断がなされ、外出禁止と決まると、隊員は基地に缶詰となります。一晩で吹雪が収まることもあれば、3日ほど続くこともあります。風も20m(台風)程度から30m(強い台風)を超える日もあり、風雪を逃がすために高床で建てられた基地は吹き付ける風で飛行機のように揺れます。

晴天時、建物の中からこのような風景が見えるのですが……。

ひとたびブリザードがやってくると、このように、外はまったく見えません。

風に雪が混じると一気に視界が悪くなり、方向感覚がなくなります。さらに強風で水平間隔も狂い非常に危険なため、ブリザード中に別の建物に移動したいときは、建物と建物の間に張ってあるロープをカラビナで身体につないで移動します。

越冬隊の重要な任務は、この吹雪の「後」にあります。吹き付ける雪で建物が埋まったり、風で計器が破損したりするので、吹雪が収まったら急いで確認と補修作業、そして雪かきです。

建物の足元を掘り、風雪の逃げ道を確保。吹雪のたびに埋まってしまうので、根気と体力で乗り切ります。広い場所は重機で一気に雪を運び、建物の周囲はひたすら手で掘ります。観測の維持という仕事の重要さを感じます。

手前のオレンジの箱は、第1次南極観測隊が使用した基地の遺構です。このように地面に建物を建ててしまうと、雪がたまってしまい埋まりやすくなります。奥の銀色の建物は、現在の基地主要部。風を逃がすために足元が骨になっています。これだと雪に埋まりにくく、除雪がしやすいのです。

なお、LAN・インテルサット隊員の私は、7月と8月は衛星通信機材の調整を行うのですが、吹雪と雪かきでなかなか予定通りに作業ができませんでした。活動は天候に大きく影響されるため、計画や準備が難しいです。

日本との衛星中継による授業や講座も

夏休みは日本でも南極観測に関連したイベントが行われ、科学館などに向けて中継を実施しました。主に質疑応答となりますが、参加した子供たちの好奇心あふれる姿に元気をもらいました。

夜の長い6月から9月にかけて、「南極大学」という講座が始まります。余暇に観測隊員が得意テーマで授業を行う催しです。

観測隊はそれぞれの分野の専門家の集まりです。研究機関だったり、会社だったり様々な組織で多様な経験をしてきた人ばかりなので、その経歴や経験を聴講するだけでも勉強になります。

厳しい環境を乗り切るための装備の数々

最後に、南極における装備についてご紹介します。1〜2月の白夜に対して、7〜8月は夜が長いため、隊員はヘッドライトを携帯します。外出時は厚手の手袋を着用し、凍傷を防ぎます。細かい作業時でも薄い手袋を付けます。冷え込みが強く、屋外では素手で金属工具を触ると凍傷の恐れがあるんです。

左が防寒手袋、右が油や海水を触るための防寒ゴム手袋です。気温が低いときは内側にさらにもう一枚手袋をつけます。

夏場は岩山のようだった基地周辺も、雪が積もり、様子が変わります。7月ごろから簡易アイゼンを装着して活動しています。

現在の南極の装備は、登山用品などが高品質なため、特注品ではなく市販のものから選定されています。

南極到着から半年が経過し、食料の在庫も半分になりました。当初はビールやウイスキーを毎晩がぶ飲みして余暇を潰していましたが、いよいよアルコール在庫も底が見えてきたことが恐ろしいです。在庫を飲みつくして禁酒生活を迎えるか、みんなで節制して控えめに半年過ごすか、隊員の協調性が試されています。

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