【メシのはてな】アイス専門家に聞く、「アイスを食べても太らない」はウソ?ホント?

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三大欲求のひとつである、「食欲」。栄養を補給するため、おいしいものを食べるため、空腹を満たすため――。食事をする理由は人によってさまざまですが、朝昼晩と口にしている食べものに、疑問を持ったことはありませんか?

本連載「メシのはてな」は、ふだん当たり前のように食べている“メシ”の疑問を解き明かし、そこに隠された文化や歴史、よりおいしく楽しむための作法を識者に教えてもらう企画。

今回は夏を代表するスイーツ、「アイス」に関する疑問を解決します。

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フリー素材モデルの大川竜弥です。

トレーニングをはじめてから体を露出する仕事が増えたため、体型維持に気をつけています。消費カロリーと摂取カロリー、PCF(たんぱく質・炭水化物・脂質)バランスの計算を徹底し、常に腹筋が見える状態を心がけています。少しでも油断すると、お腹にぜい肉がついてしまいますからね……。

とはいえ、無性に甘いものを食べたくなるときがあります。「アイスを食べても太らない」という噂を聞いたことがあるので、そんなときはアイスを食べるようにしているのですが、このうわさ本当なのでしょうか?

当たり前に食べているアイスですが、ふと立ち止まって考えてみると、次々に疑問が浮かんできます。

アイスに賞味期限がないのはなぜ? 冷凍庫がない時代はどうやってアイスを管理していたの? 一気に食べると頭がキーンとなるのはなぜ?

アイスの謎は深まるばかり。誰か詳しい人に聞いてみたい……。

「アイスを食べても太らない」はウソ

f:id:Meshi2_Writer:20170831122605j:plain その疑問、私が解決します! もしかして、あなたは……? アイスクリーム評論家のアイスマン福留です。 やはり! いつもテレビで拝見しています! ありがとうございます! f:id:Meshi2_Writer:20170831122628j:plain

アイスマン福留(あいすまんふくとめ)

アイス評論家。一般社団法人日本アイスマニア協会代表理事。年間に食べるアイスの数は1000種類以上。情報サイト「コンビニアイスマニア」を開設し、2010年から「アイス評論家」として活動を開始。業界紙にてコラムを連載するほか多数のメディアに出演。著書に「日本懐かしアイス大全」(辰巳出版)がある。

アイスを食べても太らない」といううわさは本当ですか? それは、ウソですね。 え!? 正確には、その人の体質によると思います。アイスを食べて太る人もいるし、太らない人もいる。たしかに「冷たいアイスを食べると、体の熱を戻すためにエネルギーを消費する」といううわさをよく耳にしますが、僕は信じていません。実際、科学的な根拠もありませんからね。 よく考えてみればアイスの主な原料は牛乳と乳製品ですから、太らないことはないですよね……。 そうですね。アイスに限らず食べすぎると、なんでも太ると思います(笑)。

アイスクリーム18,000円の時代があった

f:id:Meshi2_Writer:20170831122702j:plain 日本でアイスが食べられるようになったのは、いつからですか? 明治2年(1869年)ですね。町田房造(まちだふさぞう)さんが、横浜で日本初のアイスクリーム「あいすくりん」を作って販売したそうです。お店があった横浜馬車道通りには、アイスクリーム発祥の地として「太陽の母子像」という銅像がありますよ。 もう150年近い歴史があるんですね。 ちなみに、今のお金で、一つ8,000円ぐらいだったとか。 「爽」や「スーパーカップ」みたいなサイズで8,000円ですか!? そうです。 日給分の値段がしたってことですよね。1日働いて、アイスクリームひとつしか食べられないのか……。 今のお金に換算すると、当時の大工さんの日当が8,000円ぐらいですから、庶民には手の届かないぜいたくな食べ物だったみたいです。 f:id:Meshi2_Writer:20170831122728j:plain まだ、冷凍庫がない時代ですよね? どうやってアイスが溶けないように冷やしたのでしょうか? 天然の氷を使って冷やしていました。アイスクリームが日本で販売されたのと、ちょうど同じ時期に中川喜兵衛(なかがわかへえ)さんという方が、氷の輸送技術を確立しました。函館の氷を木箱に入れ、おがくずに包んで横浜まで運んでいたそうです。 函館ですか……! ずいぶん遠くから運んでいたのですね。 でもそれまではアメリカのボストンから船便を使って輸入していたため、もっとコストがかかっていたんですよ。みかん箱くらいの大きさの氷で30~60万円くらいしたそうです。中川喜兵衛さんの努力で、函館から氷を輸送できるようになり、一般向けに販売できるようにはなったものの、それでも庶民には手の届かない高価なものだったんですよね。 さ、30万円……! 今の時代は冷凍できることが当たり前になっていますが、当時氷は大変貴重なものだったんですね。技術料を考えると、アイスひとつ8,000円は適正価格のような気がしてきました。

「チョコモナカジャンボ」をよりおいしく食べる方法

f:id:Meshi2_Writer:20170831122759j:plain 「アイスには賞味期限がない」、これは本当ですか? 本当です。マイナス18度以下、かつ一定の温度で管理していれば雑菌が増えないという理由で、賞味期限は基本的には設定されていません。ちなみに家庭にある冷凍庫の温度が、大体マイナス18度くらいです。 家庭でも適切な温度を維持できると。 いえ、家庭の冷凍庫は扉の開け閉めがあったり、他の食材も詰められていたりするので、温度が上がってしまうことがあります。アイスの容器に霜がつく、コーンが湿気るなどの変化があったら、鮮度が落ちていると思ってください。 えっ、アイスにも鮮度があるんですか? もちろんです。できるかぎり早めに食べたほうが、おいしくいただけますよ! 大川さんはアイスを食べて、いつもよりシャリシャリしてるなと感じたことはありませんか? ありますね。特に冷凍庫に入れっぱなしにしているアイスに多いかもしれません。 古いアイスクリームを食べてシャリッとした食感があったら、「ヒートショック」を起こしている証拠です。 「ヒートショック」? それはなんですか? 温度の変化によって品質が変わることを専門用語で「ヒートショック」と呼びます。この「ヒートショック」を起こすと二度と元の状態には戻りません。よく半分だけ食べて、残りはまた今度食べるという方がいらっしゃいますが、一度溶けてしまったアイスを再び凍らせてしまうと「ヒートショック」が起きてしまうので、なるべく一回で食べきることをおすすめします! 勉強になります。今後はアイスの鮮度と品質に注意して、おいしく食べたいと思います! f:id:Meshi2_Writer:20170831122820j:plain 数々のアイスを食べてきた福留さんが、「これはすごい」と驚いたアイスはありますか? それはズバリ、「チョコモナカジャンボ」です! 「チョコモナカジャンボ」ですか! すごいポイントはどんなとこなんですか? 「チョコモナカジャンボ」は鮮度管理を徹底しているんですよ。パッケージに「パリパリッ!」と書いてある通り、モナカが湿気なくパリパリでいられるのは、森永製菓が長年培った製造技術と、製造してから5営業日以内に店舗に届けるという鮮度管理がなせるわざです。他の商品は多めに作って店舗にストックしてありますが、「チョコモナカジャンボ」はできる限り少ない量を高頻度で納品することで、商品の鮮度をコントロールしているんです。 それはすごい!! こうした鮮度管理を徹底することで、あのパリパリ感を実現しているんです。これはアイスクリームすべてに言えることですが、賞味期限がないからといって、1年後2年後でも大丈夫というわけではなく、やはり早めに食べたほうがよりおいしく楽しむことができますよ。 少しでもおいしいアイスが食べたかったら、常に商品が入れ替わっているお店に行ったほうがいいということですか? そうですね。お客さんの回転率が高いコンビニがベストだと思います!

アイスにも種類が! どんな種類があるの?

f:id:Meshi2_Writer:20170831122849j:plain パッケージに「アイスミルク」「ラクトアイス」と書いてあるのですが、アイスにも種類があるのでしょうか? あります。アイスの種類は食品衛生法にもとづく、「乳及び乳製品の成分規格に関する省令」「食品、添加物等の規格基準」という法律で決められています。 なんだか難しいですね……。 ざっくり説明すると、乳成分の量の違いです。種類は、「アイスクリーム」「アイスミルク」「ラクトアイス」「氷菓」の4つ。この図を見るとわかりやすいですよ! f:id:Meshi2_Writer:20170831122918g:plain

引用元:アイスクリームの種類|日本アイスクリーム協会 http://www.icecream.or.jp/ice/kind.html

乳固形分15.0%以上、そのうち乳脂肪分8.0%以上のものがアイスクリームの規格です。アイスミルクは乳固形分10.0%以上、うち乳脂肪分3.0%以上、ラクトアイスは乳固形分3.0%以上といった感じですね。それより下のものは、氷菓です。 氷菓といえば「ガリガリ君」ですか? そうですね。 それぞれの規格で、代表的な商品は? 同じ商品でもフレーバーによって規格が異なる場合もありますが、アイスクリーム規格の代表的な商品といえば「ハーゲンダッツ」ですね。あとは森永乳業の「MOW」。2015年に大幅にリニューアルをして、バニラの風味とミルクのコクがアップしました。先ほどの「チョコモナカジャンボ」はアイスミルク規格です。ラクトアイスの特徴は、乳脂肪分の代わりに植物性脂肪が使われています。代表的な商品は、「明治エッセルスーパーカップ」ですね。 f:id:Meshi2_Writer:20170831122935j:plain ラクトアイスの値段が安いのは、コストの差ですか? そうですね。乳原料を多く使うより植物性脂肪を使ったほうがコストを抑えられます。しかしその分、大容量にするなど何かしらの付加価値をつけないとアイスクリーム業界で生き残っていくことはできません。 アイスクリーム業界も熾烈(しれつ)な争いをしているんですね。 アイスクリームの味わいの決め手でいうと、もうひとつポイントがあります。それがアイスクリームに含まれる空気の含有率。空気が多ければ多いほど、フワッと軽い食感になります。逆にハーゲンダッツはフワッとしていないですよね? どちらかというとずっしりとしたボディー感があると思いますが、あれはアイスクリームに含まれている空気の量が少ないからなんですよ。 僕が今食べているアイスも、フワッとしていますね。 そうですね。それも空気が多く含まれているので、カチカチにはなりにくいはずです。ただ、勘違いしてほしくないのが、乳固形分の量や空気の量だけでアイスクリームのおいしさが決まるわけではありません。 どういうことですか? 結局のところ好みなんです。商品のコンセプト、特性がそれぞれあって、それに合わせた仕様になっています。濃厚なものがおいしいというイメージがありますが、メーカーは味のバランスまで考え抜いて商品開発をしています。例えば、チョコレートが主役になっているアイスはカカオが含まれているから、植物性脂肪の量が増えます。そうすると、アイスクリームではなく、アイスミルクかラクトアイスという規格になります。種類別(規格)だけで味を判断するのではなく、好みのアイスを見つけてもらいたいですね!

かき氷を食べると頭が痛くなる理由

f:id:Meshi2_Writer:20170831123005j:plain 最後に、もうひとつだけ聞いてもいいですか……? どうぞ! アイスやかき氷を一気に食べると、頭が痛くなる理由はなんですか? ああ、「アイスクリーム頭痛」ですね。 そのままのネーミングだ……。 二つ説がありまして、ひとつは口の中の温度が急激に下がり、頭に通じる血管が一時的に膨張するため、痛みが発生するといわれています。この対策としては、食べる前に冷たい水を飲むということですね。 なるほど、あらかじめ口の中を冷やしておくわけですね。 もうひとつは、喉に冷たいものが通ると三叉神経(さんさしんけい)が刺激されて、痛くなるという説です。僕はこっちで、頭は痛くならないですが、喉や首の横あたりが痛くなるんです……。 そこが痛くなるという話ははじめて聞きました! 以前イベントでアンケートを取ったことがあるのですが、圧倒的に頭が痛くなる人のほうが多かったです。 f:id:Meshi2_Writer:20170831123027j:plain アイスとかき氷、どちらが「アイスクリーム頭痛」を引き起こしやすいと思いますか? かき氷のほうがキーンと痛くなるイメージありますね……。 そうなんです! かき氷の温度は、マイナス2度。先ほどアイスの保管はマイナス18度以下と言いましたが、かき氷の方がかきこみやすい分、「アイスクリーム頭痛」を引き起こしやすいのです。 なるほど……。 だから、一気に食べず、ゆっくり食べることも痛みを抑える対策のひとつです。 いやー、今日は勉強になりました! ほら、もう一度アイスを食べてください! f:id:Meshi2_Writer:20170831123050j:plain

パクッ! ウ、ウ、ウマくなっている!!!

アイスマン福留さんのおかげで、「アイス」の疑問を解決することができました。

「アイスを食べても太らない」はウソだったこと、アイスには150年近い歴史があり、昔はひとつ8,000円の高級品だったこと、アイスに賞味期限がない理由、アイスには4種類の規格があること、「アイスクリーム頭痛」の対策など、これまで知らなかったことばかり。

普段当たり前のように食べている「アイス」に隠された、奥深い世界。今まで以上に「アイス」を身近に感じられるようになったのではないでしょうか?

みなさんも今回紹介した知識を踏まえ、作法を実践することで、よりおいしいアイスライフを堪能してください!

「メシのはてな」を知ると、食はもっとおいしくなっていきますよ。

※この記事は2017年9月の情報です。

書いた人:大川竜弥

大川竜弥

1982年生まれ。アパレル販売員、Web開発会社、ライブハウス店長、ザ・グレート・サスケ氏のマネージャーなどさまざまな職を経て、現在は”自称・日本一インターネットで顔写真が使われているフリー素材モデル”として活動している。 Twitter:@ryumagazine

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