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部下のやる気はメシで釣れ!破天荒落語家、立川談志の弟子、立川談慶に聞く【落語家メシ】

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立川談慶師匠。「食への執着はすさまじかった」という談志氏の数々の無茶ブリ(修行)に耐えた、食の思い出を聞いてみました!

談志がお店に贈るサインの言葉は「我慢して食え」

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――立川談志さんは相当、食にこだわりがあった人だそうですね。

談慶師匠:戦後、食べ物がない時代を経験している人ですから、食への執着は強かったですよ。師匠と食事に行くと、お店の人からサインを頼まれるんですが、色紙に必ず書いていたのは「我慢して食え」の文字でしたね。

――まるで、お店の食事がまずくて「我慢せよ」と言っているみたいですね(笑)。

談慶師匠:そのあたりのシャレがわかるかどうかを判断していたんだと思いますよ。それで怒るようなお店には二度と行きませんでしたから。有名作家が書いた「この店の一口が至福を与える」なんて色紙の横に、師匠が書いた「我慢して食え」が貼ってあるようなお店は好みましたね。

談志行きつけの「伊豆栄」でうな重をいただく(お代は出版社)

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▲談志さんがこよなく愛した「伊豆栄」のうな重

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▲取材の際は上野本店を指名することが多かった

――談志さんとよく行ったお店はありますか?

談慶師匠:上野にある「伊豆栄」という鰻屋ですね。ここは師匠のお気に入りのお店で、雑誌のインタビューなんかがあるとここを指定していました。インタビュー中、師匠が気に入った質問をされてご機嫌になってくると「おい、お前らも食べてさせてもらえ」と私たちも高級うな重にありつけることがあってね。もちろん、お代は出版社持ちです(笑)。

「伊豆栄」は鰻の味はもちろん、お店の雰囲気や女将さんをはじめとする人への信頼感もあって気に入っていたようです。今では私もVIPを連れて行ったりしていますよ。

――師匠との食事で、さまざまな思い出があるんですね。

談慶師匠:一緒に同じものを食べるという行為によって、弟子と師匠の結びつきは強くなりますからね。私も弟子のときは師匠の自宅に呼ばれてあれこれ修行と言う名の雑用をやっていましたけど、師匠の機嫌がいいと「出来そこないのハヤシライス食うか?」と自分で作った料理を食べさせてもらうことも多かった。そうすると、さっきまで怒鳴られていても「師匠、いい人だな……」とか思っちゃうわけです。まさにメシで釣られている状態ですよ(笑)。

師匠は料理に対しても創意工夫がスゴイ人でね。餃子を作ろうってときは冷蔵庫の中をひっくり返して「まい泉のかつサンドがあるからこれをあんにしよう」なんて言って、くるりと包むんですよ。赤貧の我々から見たら、そんな高級なモノを餃子にするなんてと思うんですけすけどこれが絶品! 落語でも食でも既成概念に捉われない人でした。

食べ物の恨みは恐ろしい! 恐怖の「冷蔵庫事件」

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――談志さんの冷蔵庫の中は、すごい豪華な食材が入っていたんでしょうね。

談慶師匠:私、その「すごい豪華な食材」をすべて腐らせたことがありまして。

――えっっっっ!!!

談慶師匠:夏休みに師匠が海外旅行へ出かけたときに、良かれと思って冷蔵庫の霜取りをしたんですよ。まぁ、ご機嫌取りってヤツです。ところが掃除中に抜いたコンセントを入れ忘れてしまって、冷蔵庫の中のお宝が異臭の山に……。

――すべて腐ってしまったんですね。あぁ、考えただけで恐ろしすぎます。

談慶師匠:師匠から般若の形相で「追って沙汰を下す」と宣告を受け、クビを覚悟しましたが、一枚のFAXが事務所を通じて我が家に届き「原状回復せよ」とのこと。つまり入っていた食材をすべて買ってこいという指令です。しかし、そこは談志。伊勢海老、ヒラメなど入ってなかった高級食材も追加されており、真っ青ですよ。

でも、クビ回避のために築地に顔のきく兄弟子の力を借りてそこらじゅう駆けずり回りました。当時はネットもないですから、図書館に行って何がどこに売っているのか調べて、現地に行って買ってきての繰り返し。屋久島漁協で旬のトビウオが揚がっていると聞けば即座に電話して窮状を訴えて同情してもらい、そこでしか手に入らないトビウオの卵をつけて送ってもらったりして、師匠からやっとお許しをもらいましたよ。

――食べ物の恨みは恐ろしいですね……。でも、その恨みはよりよい食材を提供して許されるという。

談慶師匠:だからか、私が二つ目に昇進したときに、お礼として師匠の自宅へうかがったら、「好きなもん持っていくか」と冷蔵庫を開けてくれてね。普通、二つ目昇進のときは師匠から弟子へ「着物」を贈るのが通例ですが、ウチは「干物」でしたから(笑)。

部下とメシに行くなら領収書は絶対に切るな!

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――そんな弟子時代を経て、いまは談慶師匠が弟子を持つ立場となりましたが、企業に例えると、部下とのメシはコミュニケーションの大切なツールだと思いますか?

談慶師匠:まずいものでも、うまいものでも一緒に食べることで「共感」が生まれますから、食事は仕事での人間関係において大切なツールだと思います。ただ、時代は変わっていますから、メシをおごればいいってもんじゃありません。

「上司におごってもらえるなら行く!」なんて若者は減りました。だから上司が

「おごってやるから来い」なんて感覚を持っていたら、それは間違い。あくまで上司が部下の立場まで下りて行って「話を聞くからメシに行こう」と誘う。

このとき、できればサシメシではなく、部下を数人呼ぶのがベター。そうすると部下も来やすくなりますし、食事の際、部下同士のやり取りを見て、新たな一面がのぞけることもメリットです。

また、会話は部下の話を聞くことに徹するべし。間違えても自らの仕事論なんかを語り続けちゃダメです。会話はしゃべるより、聞いた方が財産になるんです。

そして最後に大事なのはおごることはもちろん、領収書を切らないこと。どんなに話が盛り上がっても、領収書をもらう瞬間を目撃すると「あぁ、仕事なのね」となんとなく興ざめしちゃうものです。給料もなかなか上がらず、お小遣いも減らされる一方なのは重々承知ですが、1回のメシ代は仕事で回収できるはず。

私たちが今後、食事を取れる回数は限られています。だからこそ、1回の食事は有意義、かつ楽しいものにしたいじゃありませんか。

プロフィール

立川談慶

慶応義塾大学卒業後、会社員経験を経て、1991年、立川談志の18番目の弟子として入門。9年半の前座修行の後、2000年に二つ目昇進。2005年に真打に昇進。最新著書に『なぜ与太郎は頭のいい人よりうまくいくのか 落語に学ぶ「弱くても勝てる」人生の作法』『人生を味わう古典落語の名文句』など著書多数。

※この記事は2017年9月の情報です。

撮影:八木虎造

書いた人:中屋麻依子

中屋麻依子

21歳で物書き稼業に足をつっこみ、気が付けば10数年。漁師から起業家、ハリウッドスターまで述べ10000人以上にインタビュー。ウマいメシと至福の一杯のために物を書くをモットーに日々、文章と戯れ中。座右の銘は「酒の誘いは断るな」。

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