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賃貸で音を楽しむ! 部屋に自作スタジオを設置したクリエイター集団を取材してみた

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CD不況と言われて久しい昨今の音楽業界に、賃貸マンションの一室から新たな風を吹き込むクリエイター集団がいた

メジャーにこだわらない理由とは

音楽業界に詳しくなくても、メジャーとインディーズという言葉くらいは聞いたことがあるだろう。ソニーミュージックの音楽プロデューサーを経て独立し、東芝EMIやファンハウスで新人発掘を手掛けたスティーヴ小山さんは、まさにメジャーの本流を歩んできた人だ。

現在、一緒に活動をしている工藤江里菜さんと知り合ったのは、東芝EMIで新人発掘をしていた2004年頃。音大で作曲を学んでいた江里菜さんが「歌もやってみたい」と決意してデモテープを送ったことがきっかけだった。

スティーヴさんのご自宅且つレコーディングスタジオ

「当時は、メジャーデビューを目指して頑張っていました」と江里菜さん。
スティーヴさんは「その頃は音楽で食べるには、メジャーに行くしか方法がなかった」と挑戦を後押しした。しかし、2003年に誕生した「iTunes®Music Store」から広まった音楽配信サービスは、2000年代後半にかけてCDの売上減少を加速させる。

その状況にスティーヴさんは、「アーティスト一人ひとりが独立して表現することで収入を得なければ、音楽で食べていくことは難しい」と感じた。

そして、「別にメジャーにこだわらなくても、ライブや動画配信などでファンになってもらい、ノベルティとしてのCDやグッズを買ってもらうビジネスモデルを構築できるはず」と考え、肩書きを音楽プロデューサーから方向を指し示す人を意味するインディケーターへと改めた。

今は、「自らの経験から、音楽を仕事にするためのノウハウを若い人に伝えている」という。

その一つの形が、スティーヴさんと江里菜さんが組んでいる「えぼし~ず」だ。「えぼし~ずは、クリエーターの集合体。それぞれが個人事業主で、仕事の内容や役割によってギャラを案分しています」と江里菜さん。

現在は、江里菜さんと音楽プロデューサー兼アドバイザーのスティーヴさん、江里菜さんの妹でマネージャー兼アーティストの亜妃菜さん、CDジャケットやグッズのデザインを担当するデザイナーが所属している。

活動は、ホールコンサートやライブハウスでのライブに加えて、全国各地のショッピングモールでのライブなど。そこでCDやグッズの物販も行う。

数々のオリジナルグッズ。皮作家や外部クリエイターとのコラボも多い

ポップなジャケットデザインが印象的なCDの数々手作りスタジオで本格レコーディング!?

「レコード会社に所属していないので、グッズもCDもスティーヴや私の部屋で作っているんです」と江里菜さんは笑う。

特に、CDはスティーヴさん宅のリビングがレコーディングスタジオになるという。とはいえ、ごく一般的な3DKのリビングに電子ピアノとギター、音楽制作ソフトがインストールされたノートパソコン、そしてスピーカーがあるだけ。

確かに、これだけあれば楽曲の制作は可能かもしれないが、歌入れは厳しいのではないだろうか。そう尋ねると、リビングの片隅にある手作り感満載の部屋を見せてくれた。

高さは約18cm、広さは半畳程度。人が1人入ればいっぱいになるこの空間が、レコーディングスタジオだという。

手前のマットレスを閉じれば、四方を囲まれた空間に
「アルバム制作に入ると、1ヵ月くらいはほぼ毎日、このスタジオに通いますよ」と話す江里菜さんに「といっても、1万円弱の手作りスタジオです。ニトリでウレタンマットレスを4つ買ってきて、アクリル板で作った壁に養生テープで貼り付けるだけ。天井には吸音材を取り付けています。誰にでも簡単に作れますよ」とスティーヴさん。

しかし、そこは長年第一線で活躍した音楽プロデューサー。基本的な原理は本格的なレコーディングスタジオと同じだというから驚きだ。

「ウレタンは音を吸収するので、ムダな反響を抑えられる」というだけあり、実際に歌う江里菜さんは「ここで録音するとエンジニアさんが処理しやすいと言ってくれます。声がフラットになるので、曲調に合わせて声質を調整しやすいそうです」と絶賛しきり。

さらに、ウレタンには防音効果もあるので、大声で歌っていても話し声程度の音漏れで済むという。隣人も、ごく普通の賃貸物件でレコーディングが行われているとは夢にも思わないだろう。

「今後は動画配信にも力を入れていきたいと思っている」という江里菜さん。これからは、手作りスタジオからの番組実況や生歌配信も見られるかもしれない。

ソロ活動のほか、妹・亜妃菜さんとのユニットでも活躍中マンションの一室から新しい音楽ビジネスに挑戦

最後に、気になっていた「スティーヴ小山」というニックネームについて尋ねると、「丸メガネを掛けていた時期に、江里菜さんが付けたもの。スティーブ・ジョブスに見た目の雰囲気が似ていたそうです」と教えてくれた。「iTunes Store」によって音楽ビジネスを大きく変えた彼に敬意を表して、といった深い意味ではないようだ。

しかし小山さんも、スティーブ・ジョブスがガレージで立ち上げたAppleが世界を変えたように、マンションの一室で音楽ビジネスに新しい風を吹き込もうと挑戦している。その姿が本家に重なるといったら言いすぎかもしれないが、この部屋に音楽への夢が詰まっていることは間違いない。

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文=林田孝司
写真=阿部昌也

※「CHINTAI2017年4月6日号」の記事をWEB用に再編集し掲載しています。
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