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夏休みの読書に最適?『村上海賊の娘』誕生秘話(3)

夏休みの読書に最適?『村上海賊の娘』誕生秘話(3)

出版界の最重要人物にフォーカスする『ベストセラーズインタビュー』!

 第59回となる今回は、『村上海賊の娘』(新潮社/刊)が2014年本屋大賞に選ばれた和田竜さんです。

 戦国時代の瀬戸内海で活動していた海賊・村上水軍と織田信長の軍勢の戦を描いたこの作品は、これまでの歴史小説にはない圧倒的スケールと臨場感で、読者を魅了し続けています。

 今回は、話題を呼んだ圧巻の戦闘シーンや、主人公・村上景のキャラクターについて、一度シナリオを書いてから小説に直すというちょっと変わった執筆スタイルについてなど、和田さんにたっぷりと語っていただきました。注目の最終回です。

 

■絵空事でなく、現実に存在した人間が動くのが歴史小説の魅力

―和田さんは小説を書く時に、まずセリフだけのシナリオを書いて、それを小説の形に直していくとお聞きしました。なぜこういった方法を取られているのでしょうか。

和田:僕は、元々小説家ではなくシナリオライターになろうと思っていて、シナリオを書いてはコンペに応募してということをやっていたのですが、運良く城戸賞というシナリオの賞を受賞し、その作品を映画化したいというプロデューサーが現れた。でも、歴史ものって製作にすごくお金がかかるんですよ。それもあって撮影するだけのお金が集まらなかったんです。

しょうがないから、このシナリオを一回小説として出版して世の中の人にアピールしようとなった。それで小説の形に書き直したのが、デビュー作になった『のぼうの城』なんです。これがうまくいったこともあって、その後の小説も同じやり方で、まずシナリオから書いています。

― 一般的な小説は作者が物語を考えて作っていきますが、歴史小説は史実があるので「ストーリー」はあらかじめ決まってしまっているとも言えます。こういった条件下で書くことの難しさとおもしろさはどんなところにあるのでしょうか?

和田:新しいことを知っていく面白さはありますね。書こうとしている題材について調べていると、それまで知らなかった色々な事実がわかってきます。それらを知ることも喜びですし、それを作品としてどう料理していくかを考えるのも楽しさの一つです。

ただ、調べていると「余計なこと」がわかってしまうこともあるんですよ。

たとえば、僕は調べるまで村上海賊は一家しかいなかったと思っていたのですが、実は因島村上・能島村上・来島村上と三つの家に別れていた。それを知ってしまったからには、それぞれの家の当主を出さないといけない。それぞれ家の事情が違いますし、それぞれに兄弟家族がいる。その書き分けって結構面倒ですからね。難しさはそういうところだと思います。

―歴史小説専門に書かれているというイメージがある和田さんですが、ご本人としてはそういう意識はありますか?

和田:歴史小説を専門にしているつもりはないのですが、読者がいる限りは書いていこうと思っていますし、まだ戦国時代で書いていない題材もあるので、専門といえば専門ということになるのかもしれません。

ただ、そもそもの始まりはさっきお話した城戸賞を取った時なんですよ。受賞パーティの時、いろんなプロデューサーに向かって「自分は歴史ものしか書きません」ということを言っていたんです。

脚本家って基本的に何でも屋で、サスペンスを書けと言われたら書くし、歴史ものを書けと言われたら書きます。それが悪いということではないのですが、「この人の作品はコレ!!」と一般の人に認知されにくい。これに対して、三谷幸喜さんといったらコメディ、山田太一さんといったら家庭ドラマというように、名のある脚本家はちゃんと自分の領域を持っています。自分もそうならないといけないなということで「歴史ものしか書かない」と言ったんです。

当時とは状況が変わっていますが、今のところ書いているのは歴史小説ばかりですから、その時のことが影響しているのかもしれません。

―さかのぼりますけども、シナリオを書きはじめたきっかけはどんなことだったのでしょうか。

和田:小説家でなくてシナリオライターになりたかったというお話をしましたが、最初の志望は映画監督だったんです。高校生の時に見た『ターミネーター』がものすごくおもしろくて、こういう作品を創る仕事に就きたいと思ったのがきっかけですね。

ゆくゆくは映画監督になって、自分で脚本を書いて自分で撮りたいと思っていたのですが、僕が大学を出て就職するくらいの時期には、もう映画会社が映画監督を会社員として雇うということがほとんどなくなっていました。

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