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清川進也さんに聞いた「湯〜園地」の舞台裏と、これからのクリエイティブ。

清川進也さんに聞いた「湯〜園地」の舞台裏と、これからのクリエイティブ。

前編)では、シンフロの音ができあがるまでの舞台裏や、地方との取り組み、地元にも愛されるPRコンテンツについて話してくれた、クリエイターの清川進也さん。

後編では、さらに「湯〜園地」に仕掛けられていたこと、また彼の作品のテーマでもある「音の未来」についてディープダイブしていきたいと思う。

「みんなの夢を叶えること。
 それが地域PRの本質かもしれない」

清川進也さんに聞いた「湯〜園地」の舞台裏と、これからのクリエイティブ。

—— 前回、『湯〜園地』プロジェクトについて詳しく聞きましたが、別府市民からのボランティアの方って、どのくらい集まったんですか?

「1,200人です。こうやって集まって下さったのにも、じつはひとつ仕掛けがありました。当初から当日券の販売をやる予定がなく、7/29〜31日の3日間限定の前売り券のみでした。理由としては、受け入れる側の運営がほとんど別府市の方々で編成されているチームなので、なにが起こるかわからない状況のなか、せめて何人来るかだけは事前に把握しておきたかったんです。

そうしたら、早い段階で土日のチケットが売り切れてしまった。実際、県外の人たちのほうが盛り上がっていたのも事実なんです。

SNSが中心のプロモーションだったので、どうしても地元の人より情報感度の高い人たちが多く、売り切れで話題になったころ、ようやく市民の人たちに『湯〜園地』がこれだけ盛り上がっているのか、っていうのが浸透し始めたタイミングだったんです。

今まで半信半疑だった地元の人も『本当にやるんだ』『1日に6,000人、3日で最大1万8,000人も来るんだ』って、そこで初めて実感して、『あ、でも私たちチケットがないから行けないわ』と。

そこでスタートしたのが、ボランティアの募集でした。ただ遊ぶだけではなく、運営に関わることが街の人たちのモチベーションにつながっていったんだと思います。

で、こちらの告知は一切SNSを使いませんでした。市報と地元新聞の折り込みチラシを2万世帯に配布できるようにして、本気でローカルに絞って募集をかけたんです。そしたら、1,200人もの人たちが集まりました。

その瞬間『たぶんこの湯〜園地プロジェクトは、僕らが想像している以上のところで着地するんだろうな」っていうのが見えた気がします。ボランティアの方々が今回のMVPでもあるんです。

演出の目線で言うと、これだけの人員がいると贅沢な使い方ができるというのもメリットでした。炎天下のなかで実はジェットコースターは4時間待ちで、それ自体が危険でしたし、列をはぎとる訳にもいかないので1,200のうちの100人はうちわを持ってお客さんを仰いでもらったんです。100人が1列になって一斉に仰ぎだすっていうこと自体、ひとつのアトラクションですよね」

—— お客さんと地元のボランティアの方で交流も生まれそうですね。絶対に話しかけちゃうと思います(笑)。

「そういう意味では、100万回再生クリアにしても、税金を使わないクラウドファンディングで3,000万円集めたことにしても、寄付を募ったら最終的に8,200万円になったことも、1,200人のボランティアが集まったことも、結果的に周りの旅館の宿泊客が増えたことも『湯〜園地』というプロジェクトのなかで、ひとつずつ夢を叶えていったのかもしれません。

みんなが夢に向かって投資してくれたわけで、そのお返しとして夢を実現させてあげることが、本当の意味で僕らがやらなくてはいけないことなんだと思います。それが動画から始まる地域活性の本質なのかな、と。

もちろん、その前には『バカでかい夢を語る』ってことから始まっていくんだと思います。信じられないような夢を語っていいんだ、って。

—— その吸引力に驚かされます。

「もちろん最初はみんな、キョトンです。『この人は何を言ってるんだろう?』と。ただ僕はこう説明します。『明日からはみなさんがこれを周りに言わなきゃいけないんです』と。そして、どんどん自分ごと化してもらうんです。だから序盤はひたすら“口説く”のがミッションです。何度も足を運んで、講演依頼もすべて受けましたし、夜は交流の場を設定して、その街の顔みたいな人たちと出会ってきました。

たとえば別府は観光都市なので、1年で大小さまざま80個くらいのお祭りをやっているんです。そこで実際に観光客の方たちがお金を落として、街が潤う。その大規模なお祭りを運営している実行委員長と呼ばれる人たちって、結局僕らのような映像やイベントを作るプロフェッショナルとさほど変わらない考え方で、むしろそれよりもすごいアイデアやマンパワーを持っていたりするんですね。そういう人たちをどんどん起用して、口説いて、仲間になっていただく、ということが序盤に僕がやっていたことです」

「ディレクションはシンプルに
 “未来の別府”につながるかどうか」

清川進也さんに聞いた「湯〜園地」の舞台裏と、これからのクリエイティブ。

—— 想像以上に泥臭いというか、人と人との関係性を築いてからできあがっていったんですね。

「今回はとくに大きな規模になってしまったけど、細かいことまでやっていくと到底時間が足りないから、僕が肝に銘じていたのはディレクションをとにかくシンプルにすることでした。たとえばボランティアの方々とも開園前にミーティングをするわけですが、『あの場所でこうして欲しい、何時にこれをする』みたいなことまでやってしまうと、到底間に合わないんです。だから僕が言うのは、自由にうちわで仰ぐのも誰かに声をかけるのも自由だけど『自分のやったアクションが、“未来の別府”につながるかどうかっていうことだけを考えて欲しい』と言ったんです。ルールはこの1つだけ。

ゴミが落ちていたとして、そのゴミを拾うことによって未来の別府の印象が良くなるかどうか。暑くて苦しんでる人がいたとして経口補水液を持ってきてあげることが未来の別府のためになるかどうか。すべては、そのルールに即してさえいれば何をやっても問題ない、っていうのが僕のディレクションでした。

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