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このおうち、「幸せなお家」っていうんです。

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このおうち、「幸せなお家」っていうんです。

YouTubeのCMは基本スキップしてしまうのだけど、最近、最後まで観たものがある。それは三井のリハウスのCMだった。

CMは、リハウスガール・田辺桃子演じる孫娘と、彼女だけに見える、樹木希林演じる亡くなったおばあちゃんとのやりとりで進んでいく。

おばあちゃんの家を売ることに戸惑いがある孫娘は言う。

「おばあちゃん。この家、やっぱり……」

するとすかさず、おばあちゃんは言う。

「家ってね、人が住まないとダメになっちゃうからね。
 いい人が買ってくれるといいわね」

さて、本題に入ります

この記事は『幸せなお家』についてである。

『幸せなお家』は、どこかの家族の話でも、建物の話でもない。プロジェクトの名前だ。

プロジェクトが行われているのは、岐阜県多治見市笠原町。ここは、施釉磁器モザイクタイルの発祥の地であり、全国一の生産量を誇る、モザイクタイルの町だ。2016年6月にはモザイクタイルミュージアムもオープンし、笠原町で培われてきた技術や歴史を発信している。 このおうち、「幸せなお家」っていうんです。このおうち、「幸せなお家」っていうんです。

『幸せなお家』
プロジェクトの全貌

このおうち、「幸せなお家」っていうんです。

舞台はこの家。
ここは「カネ鹿大岩鹿兵商店」が営む、タイルの貼場だった。建てられたのは昭和20年後半(1950年代)ごろとのこと。

タイルの貼場として活用されたあとは、タイル商社「株式会社カネシカ」の管轄で遺されてきたものの、数年前、解体の話が浮上。そのときストップをかけたのが、モザイクタイルミュージアムの職員でもある木村尚子さんだ。

「建物を解体してしまうから、モザイクタイルミュージアムのオープンにあたって何かほしいものがあれば譲りますよ、と所有者の方からご連絡がありました。でも私自身、タイルも古い建物も好きなので、当時のまま遺しておくことができればと思ったんです。私と同じような人もきっといるはずだから」

タイルと古い建物への愛着、それを未来へ遺したいという思いが、木村さんを動かした。

ここをもう一度
活気のある場所にしたい

木村さんの発案により、プロジェクトはスタートした。

「モザイクタイルミュージアムの学芸員が紹介してくれて、まずは名城大学の学生にボランティアをお願いすることになりました。学生さんたちには、以前この場所で展示をした際にテーブルを作っていただいたんですよ」

さらに、学生たちを指導していた名城大学・谷田真准教授が、この家が地域のコミュニティとしてどのような場になるべきか、企画書を作ってくれたのだという。

そうして徐々に立体的になっていった『幸せなお家』プロジェクト。現在は、8人ほどのレギュラーメンバーと、その都度募集したボランティアに参加してもらい、修繕作業を進めているそうだ。

「一緒にタイル貼りませんかって、Facebookで募集をかけていて。先日は、東京から1人と、名古屋から1人来てくれましたよ。どうやってタイルを貼るのか知りたかったって」

タイルに興味がある人には相当魅力的なプロジェクトだが、『幸せなお家』を支えているのは、タイル愛好者たちだけではない。

「地元の左官屋さん、建築屋さん、建具屋さん、それからタイルのメーカーさんなどにもお手伝いいただいています。このプロジェクトに賛同してくださっている有志の方を中心に、という感じですね」

そうして現在、ビンテージもののタイルを少しずつ集めながら、みんなで『幸せなお家』に貼っていく、という活動をしている。解体寸前だった工場を、新たに生まれ変わらせるために。

プロジェクトはまだ
始まったばかり

今はまだ家の一部にしかタイルを貼っていないが、今後は床にもタイルを貼り、きれいにしていく予定だという。このおうち、「幸せなお家」っていうんです。このおうち、「幸せなお家」っていうんです。このおうち、「幸せなお家」っていうんです。

いくらタイル好き、古い建物好きと言えど、木村さんは一般の方。そうまでして『幸せなお家』プロジェクト進める理由は何なのか。
そこには、いつかこの場所で見たい風景があった。

「私はここで商売をしようとか、そういうことは思っていないんです。いつか、それまで一生懸命働いてきたお年寄りが、あの家で集えたらいいなと思っています。他府県の人たちが『幸せなお家』を見に来て、そこでおばあさんたちが野菜を売っていたりして……そういう交流ができてくれたらいいですね」

『幸せなお家』は、ただ古いものを守る、ただきれいにする、それが目的のプロジェクトではない。その目的は、この家を地域のコミュニティとして、末長く活かしていくことなのだ。

家は、人が作るもの

重要なのは遺すことではなく、どう遺していくか、なのだと思う。

もしこの工場が解体されずに残って、さらに、業者の手によって見違えるようにきれいになっても、そこに集う人も笑顔もないならきっと寂しい空間にちがいない。そこに、遺す意義はあるのだろうか。

木村さんもそれがわかっているから、解体を防ぐだけでなくこのプロジェクトをスタートしたのではないかと私は思った。

なぜなら、家は、人が作るから。

「家って、人が住まないとダメになるから」 ——三井のリハウスのCMのおばあちゃんのセリフ。『幸せなお家』は住居ではないけれど、きっと、同じことを言っているんじゃないかなあ、と思った。タイムリーだった。だから私は最後まで観たのだ。

木村さんに救われたこのお家は、きっと、これからここに集うたくさんの人によって『幸せなお家』へと生まれ変わっていく。このおうち、「幸せなお家」っていうんです。

幸せなお家
時間:いつでも見学可
住所:多治見市笠原町2930番地
アクセス:モザイクタイルミュージアムから徒歩5分

Photo by 稲垣正倫

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