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旧車が棲む都心の狭小ガレージハウス【edge HOUSE】

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▲銀座まで徒歩圏内という立地に、憧れのガレージハウスを。邸内のいたるところから愛車を眺めて過ごせる建築家のアイデアとノウハウが満載された作品を紹介しよう。

▲銀座まで徒歩圏内という立地に、憧れのガレージハウスを。邸内のいたるところから愛車を眺めて過ごせる建築家のアイデアとノウハウが満載された作品を紹介しよう

都心にある多層階ガレージハウス|建築家・濱里豊和(濱里豊和建築事務所)

今回の取材場所は、都心のさらにど真ん中。銀座まで徒歩圏内という東京都中央区にある。このようなロケーションに一軒家、それもガレージハウスを所有するなど夢のような話である。都心だけあって当然、周辺はオフィスビルが建ち並んでいるのだが、古くからの住宅が点在していることもこの界隈の特徴。

その街並みの一画、ビルと古い商店との間にN邸はあった。間口が狭いので、油断をしていると通り過ぎてしまいそうな佇まい。単に間口寸法だけではなく、外壁にスチールパネルを採用したりグレー塗装を施したりすることによって、あえて外観をすっきりした印象に整えていることも周囲に溶け込む理由となっているようだ。

施主のNさんがガレージハウスを建てようと思い立ったのは、当連載を読んだことがきっかけだという。誌面からいろいろなイメージを抱き、理想のガレージハウスを建てるべく住宅プロデュース会社に紹介されたのが、建築家の濱里さんだ。Nさんは濱里さんが手掛けたオープンハウスを訪ねるなどして、自身が抱くガレージハウスのイメージを次第に高めていったという。

設計にあたり、Nさんが濱里さんに依頼したのは「インナーガレージに収まる2台の愛車がリビングルームから眺められること」。それに尽きた。その2台とはディーノと27レビン。ディーノは、N邸計画が始まったあたりから探し始めたというから、「新築のガレージハウスにはディーノを!」という強い思いは当初からNさんの胸にあったに違いない。ちなみに念願叶って入手したディーノについては「まだ月に数回しか乗る機会がなく、クセのあるシフト操作など乗りこなすにはまだまだ練習が必要」と、Nさんが嬉しそうに話してくれた。かたやすでに20 年の付き合いという27レビンは、丁寧に磨き上げられ絶好のコンディションにレストアされた自慢の1台だ。

Nさんの思い、そして2 台の愛車たち。これらに基づいて濱里さんが提案したプランは、1階を寝室、2階をリビングルーム、3階をキッチン&ダイニングルーム、その上階にバスルームを設けるというもの。そして、2階リビングルームからリフトアップしたディーノを眺められる……というレイアウトだ。

設計プランと同時に土地探しも進行していた。Nさんはいくつかの候補地を住宅プロデューサーや濱里さんと一緒にまわり、プランに適するかどうかのアドバイスをもらったという。そうして時間をかけ、最終的に現在の土地に決めた理由は、Nさんがお気に入りだという銀座が至近であるということ。さらに、周辺エリアが容積率660%の商業地域であることから、高さについての制約が緩く、縦に空間を活用した住宅が建てられること、である。それにより、リフトを採用したガレージハウスが現実のものになったわけだ。

完成が待ちきれず、夜な夜な竣工模型を肴に酒を飲む

設計プランを煮詰めていくにしたがって濱里さんは、「Nさんと打ち合わせを重ねていくと、車への愛情がとても強く伝わってきました。そこで、もともと考えていたリビングルームから車(ディーノ)が眺められるように……というオーダーも、邸内のあらゆる場所から眺められるようにしたほうがいいな……と考え始めたのです」と、当初のプランを修正。

横幅よりも奥行きが長いという土地の特徴から、当初はガレージのすぐ前にリビングルームなどの居住スペースを設けることを考えていたが、ガレージと居住空間との間にある程度の距離をおいたほうが、車のスタイリングの特徴がよくわかるだろうと配慮した。そこで、間取りのいちばん奥に予定していたラセン階段をあえてガレージと居住空間の間、つまり邸内の中央部分に変更して車の見え方を工夫した。

この新しいプランをイメージしやすくするために、濱里さんは模型を製作してNさんに提案した。もちろん大喜びで賛同したNさんは、「濱里さんの提案はとても素敵で、完成が待ちきれませんでした。なんといっても、毎週のように現場に足を運んでいたくらいですから……! そして自宅に帰ると、模型を眺めながら毎晩のように酒を飲む日々でした(笑)」と、当時を回想する。濱里さんも、2、3ヵ月を要したプランニング期間を振り返り、「Nさんとお会いするたびにいろいろなヒントが得られました。その都度、新しいアイデアが盛り込まれるなど、つねに提案内容は更新されていきました。他にも、Nさん宅にお邪魔すると、奥様の美味しい手料理を振る舞っていただけるので、それも楽しみでした」

このように建築家と施主とで良好な関係が築かれたことにより、N邸には愛車と暮らす空間として様々な工夫が施されるに至った。リビングルームや寝室からも愛車をちょうどいい角度で眺められることをはじめ、1階から2階へ続く動線から愛車を身近に感じられることもNさんの満足感を高めている。じつは2台の愛車は、外出先でのトラブルも少なくないという。その際、同乗していたN夫人は不安になったことも多かったというが、そんなエピソードをリビングで楽しい思い出として語り合う様子もじつに微笑ましい。

今回、初めてN邸の前に立ったときには、一般的な狭小住宅……というイメージをもったが、それは取材を進めていくうちに驚きをもって変化をしていった。濱里さんのこだわりと工夫を知るにつれて、ここが狭小住宅であることを忘れてしまうほど巧みに空間がデザインされていた。施主が抱く愛車への思いを、建築家が一つひとつ丁寧に感じ取り、限られた制約のなかで惜しみなくエネルギーを注ぎ込むことで、施主の期待を超えたサプライズが生まれたといえるだろう。

▲リフトの採用で狭いスペースに2台格納でき、上階から愛車を眺めることも可能となった

▲リフトの採用で狭いスペースに2台格納でき、上階から愛車を眺めることも可能となった

▲移動のための階段ではなく、2 台の愛車やコレクションを観賞するルートでもある

▲移動のための階段ではなく、2台の愛車やコレクションを観賞するルートでもある

▲寝室からの眺め。視点を下げることで、ベッドに横になったまま愛車が眺められる設計に

▲寝室からの眺め。視点を下げることで、ベッドに横になったまま愛車が眺められる設計に

▲ミニカーや絵画の他、リフトにはレッドのアクセントを入れるなどガレージはじつに華やかな雰囲気

▲ミニカーや絵画の他、リフトにはレッドのアクセントを入れるなどガレージはじつに華やかな雰囲気

▲キッチンは手料理がすぐに味わえるように対面式を選択。座る部分は畳の小上がりとした

▲キッチンは手料理がすぐに味わえるように対面式を選択。座る部分は畳の小上がりとした

【施主の希望:2台の愛車の気配を感じながら、一緒に暮らしたい】

■濱里さんに設計を依頼するにあたりNさんが出した要件は、ディーノと27レビンが収まるビルトインガレージであること。そしてリビングルームから愛車たちを眺められること、というシンプルなもの。当時Nさん夫妻は、東京都中央区勝どきのタワーマンションに住んでおり、車はマンション内の駐車場で保管していた。必然的に愛車との距離感は否めず、2台の愛車を身近に置き、一緒に暮らしたい……という思いが強まっていったという。

【建築家のこだわり:指摘されて初めて気づく、広がり感を演出するワザ】

■奥行きに対して幅が狭い……という制約のなかで、いかにスケール感を出すか。例えばリビングルーム正面の引き戸が収まる建具を天井までピタリと埋めることで高さを強調するなど「抜けた感じ」がもたらす効果を追求した。また、階段の手すり部分に入るフラットバーの数を少なくして視覚的なスッキリ感を演出するなど、言われなければ気づかないような細かい部分にまで神経を使っている、濱里さんのこだわりがいたるところに生きている。

■主要用途:専用住宅

■構造:鉄骨造

■敷地面積:58.15平米

■建築面積:43.60平米

■延床面積:117.02平米

■設計・監理:濱里豊和建築事務所/濱里豊和

■TEL:03-6666-9084

【関連URL】

【edge HOUSE】他のガレージハウスを見てみるtext/菊谷 聡

photo/木村博道

※カーセンサーEDGE 2017年1月号(2016年11月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています

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