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国際機関に勤める日本人のジェンダーバランス

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今回はkenさんのブログ『Tokyo Life』からご寄稿いただきました。

国際機関に勤める日本人のジェンダーバランス

途上国に勤務したり、途上国に出張したりすることが多いのですが、そういう国でお会いする日本人は国連など国際機関に勤務されている方が多いです。そして、そういう仕事をしている人たちには圧倒的に女性が多いんですよね。男性が珍しく見えるくらいに。

国連機関職員への道として知られているJPO*1 試験の合格者も圧倒的に女性が多いそうで。

*1:「JPO派遣制度」『外務省 国際機関人事センター』
http://www.mofa-irc.go.jp/jpo/index.html

国際機関で途上国勤務というと、“困っている人を助ける”という仕事が多いので、“母性”と親和的だから女性が多いというのもあるのかもしれませんけど、話を聞いているとどうもそれだけでは説明できません。あるいは、以前よく言われていましたが(今でも聞かれますが)、実は男性のほうが臆病で女性のほうが肝が据わっていてたくましいからだとか、女性のほうが異文化に柔軟に適応できるからだとか、はたまた外国語を学ぶのは女性のほうが得意だからだとか、男女の性差の特徴だけにその理由を還元してみても、それだけではないような気がします。

むしろ女性が多い理由は日本の労働慣行、社会の倫理観にあるように思います。北海道大学大学院教授の山岸俊男氏*2 が、日本社会は実はリスクが大きいという話をよく書いていらっしゃるのですが、それが理由の説明になるんじゃないでしょうか。

*2:『Toshio Yamagisi WEB』
http://lynx.let.hokudai.ac.jp/members/yamagishi/

山岸先生のお話は、ものすごく要約すると、日本ではまだまだ正規雇用で定職に就くことが“よいこと”と考えられていて、その道を外れると再起が難しく、仕事の仕方や生き方を自由に選ぶことのリスクが高いという趣旨なのですが、これは特に男性の方に覆いかぶさっている世間の“空気”です。

女性には結婚なり出産なりで適当なところで退職し、子育てが落ち着いたらパートタイムで働きに出る、という古典的なイメージがあって、仕事を辞めてもそれで社会から落伍(らくご)したとかいうようには見られません。ところが男性は、今でこそ違う意見も聞かれるようになってますけど、それでもまだ正規雇用でちゃんとした会社に勤めるのが当たり前という考え方は消えたわけではありません。結局、経営者かフリーランスか、あるいは最近よく聞くノマドで食っていけるような才能がある人でない限りは、社畜の道を選ぶか、そこから脱落してワーキングプアか引きこもりになっちゃうか、という極端なパターンしかないように見えてしまっています。

国際機関の仕事というのは、基本は有期契約です。ポストに応募して、数か月から数年の仕事を得る。そして契約が終わる頃に次のポストを見つける。そういう契約を繰り返していく働き方です。ジョブ・セキュリティ(職業の安定性)という観点からは不安が多い働き方に見えます。そして、この働き方は日本人男性の今までの働き方の常識からすると、受け入れ難いほどリスクが高いと映っているのではないでしょうか。

日本は、特に男性の場合、余程の才能がある人でもない限り、転職したり起業したり、職業人生の中で何かチャレンジをすると、それが失敗した場合のリスクが高過ぎる社会です。それが当たり前と思っている世界から見ると、2、3年おきに契約満了を迎え失職するような働き方は、リスクが高過ぎてとてもじゃないがやってられないと映るかもしれません。あるいは本人が納得していても、親や家族がいい顔をしない。

典型的だったのが、国際機関の途上国にある事務所で、日本でサラリーマンやってるより相当高い待遇を得て母子保健の専門家として働いている人が、未だに親から「いつまでフラフラしてるのか。いい加減にちゃんとした仕事を見つけて落ち着いたらどうか」と言われると話していたことでした。契約をつないでいくような働き方が“ちゃんとした仕事”とは思われていないのです。“ちゃんとした仕事”に就けなくなるリスクが高くなるから、早くそこから足を洗えと言っているのです。

実際には、有期契約の契約期間が満了したら次のポストが見つかるか、あるいは民間や政府機関の仕事に就くか、さらには大学院に行ってみたり、しばらく仕事に就かず主婦・主夫で子育てに専念したり、自分の事業を始めてみたり、まあみんなそれなりになんとかなっているんですけどね。

国際機関で働くという選択は、複線的な生き方を選ぶことになりがちです。しかし、日本人男性は、どこかに就職して勤め続けるという単線的な生き方を標準的とする見方がまだまだ根強くて、国際機関での仕事に挑戦しにくいのでしょう。女性のほうがそういう束縛からはより自由だったので、結果、国際機関にいる日本人は女性ばかりということになっているんじゃないかと思うのです。

国の雇用政策は、相変わらず労働者の正規雇用化を促進させる方向で、会社が正規雇用を維持すれば補助金まで出すようなことまでやっています。安定した正規雇用が正しいのだというメッセージを出し続けているようにも見えます(安定しているのかどうかは大いに疑問ですが)。

正規/非正規の区別の意味がなくなり、仕事を辞めても辞めさせられてもそれでたちまち食い詰めるということがなくなり、解雇もしやすいが転職もしやすい、そういう雇用環境が当たり前になる時代がこないと、国際機関で働く日本人男性は増えないんじゃないかなぁと思う次第です。

追記:
選挙で選ばれるような国際機関の上級幹部や機関代表の職についてはまた別の話です。各国政府が候補者を立てて選挙に挑み、日本の場合は候補者に高級官僚、大学教授、財界人等が選ばれることが多く、男性のほうが多くなりがちなようです。

執筆: この記事はkenさんのブログ『Tokyo Life』からご寄稿いただきました。

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