自らスポンサー集め! 18歳レーサー・加藤潤平から学ぶ“自分自身の売り込み方”
幼少期からカートに興味を抱き、小学3年生で東日本最大のジュニア大会で初優勝。高校進学のタイミングでレーシングスクールへ進み、F1レーサーを目指している加藤潤平君。カートというスポーツは練習や試合ごとにかなりの費用がかかるため、スポンサー探しも自ら行っているという。駅前でのビラ配りなどを行っている加藤君に、自らを売り込むコツを聞いた。
佐藤琢磨選手の映像を見ながら「自分もF1ドライバーになりたい」と思った
時速240kmを出すフォーミュラーカーを操っている加藤君自身は、穏やかで落ち着いた青年。――加藤君がレーサーを目指し始めたきっかけは?
4歳の時に、お父さんに連れられてレーシングカート場に行ったんです。そこに4歳から乗れるカートがあって、乗せてもらったのが最初です。お父さんは車に携わる仕事をしているんですけど、もともとレースも好きだったみたいで、その影響が大きいですね。4歳の時の経験があって、レーシングカートが好きになっていったと両親から聞きました。自分ではあんまり覚えていないです(苦笑)。
――覚えていないということは、物心ついた時にはレーサーを目指していたということ?
そうですね。小学生になった頃に、佐藤琢磨選手がF1で活躍していて、レースの映像を見ながら「自分もF1ドライバーになりたい」って思っていました。小学生の頃から思い描いている夢は「F1ドライバーになって優勝すること」。――小さい頃から数々のレースに出ていますが、特に印象深いレースはありますか?
どのレースも印象に残るものばかりなんですけど、一番を上げるとしたら今年のレースです。これまでの中で、特に自分が成長していることを感じられたレースばかりなんです。レースごとにタイヤの使い方やコーナーの攻め方、学ぶことが多くて、細かなテクニックによってタイムが大きく変わることを体感しているところです。タイムが縮まって、順位もどんどん上がってきています。
――小学生の頃から試合には出ているけど、練習はいつしていたんですか?
週末にレースがある時は、木曜日からサーキット場に行っていました。木金は学校をお休みして、土曜日まで練習して、日曜日にレースってスケジュールでしたね。両親は一緒にサーキット場まで来てくれたし、学校の友だちや先生も僕がカートに乗っていることは知っていたので、応援してくれていました。
――レーシングスクールに通い始めてからは、どんな生活でした?
昼間はほとんど勉強なんです。基本的にカートに乗るのは朝6時~9時までで、10時から15時まで国語や数学などの授業。16時から19時までカートの整備をして、寮に帰る生活でした。朝も早いしクタクタだから、寮に帰ったらすぐ寝ていましたね。ぎゅうぎゅうのスケジュールだったけど、好きなことだから続けられたんだと思います。
“結果”をアピールしないと興味を持ってもらえないことに気づいた
――企業に電話したりビラ配りをしたり、スポンサー探しの活動もされていますが、いつ頃から始めたんですか?
去年から行っています。カートは練習1回だけでも数十万かかるスポーツなので、資金集めをしないとレースに出られないんです。ただただ「レースに出たい」という一心ではじめました。同世代のレーサーだと、スポンサー活動をしている人の方が少ないです。
――始めた頃は、やっぱり難しかった?
僕は八王子出身なので、八王子の企業に支援してもらおうと思って、企業に電話をかけることから始めたんです。最初にかけた会社の社長さんが興味を持ってくださって、結果的に今支援していただいているんですが、その後は話も聞いてもらえなくて、途中で「もうやめようかな」って思うこともありましたが、意地で続けました。多分、八王子の企業にはほぼすべて電話したんですけど、なかなかスポンサーは見つからなかったです。そこで、直接人の顔を見て訴えかけようと思い立って、駅前でのビラ配りを決めました。
――ビラ配りを始めるわけですね。
すごく恥ずかしかったです。ほとんどの人が受け取ってくれなくて、「何がダメなんだろう?」って考えました。最初はアピール力が足りなかったんですよね。だから、「八王子出身のレーシングドライバー、加藤潤平です。応援よろしくお願いします!」って大きく声を出して、人に見てもらえるようにしました。こっちを見てくれた方にビラを差し出すと、詳しく話を聞いてくれる方もいました。人通りの多い八王子駅北口に絞って、ビラ配りを決行。地元の人に発信している。――その中で、支援者になってくれた方はどのくらいいました?
1回で300~500枚くらい配るんですけど、それでもいままでの合計で40~50人くらいですね。でも、やって損はないと思っています。今は関心がなくても不意にカートを知って興味を持ってくれる人がいた時に、僕の名前を思い出してくれるかもしれないので、続けようと思っています。あと、テレアポやビラ配りを通じて、お金を集める大変さを学びました。
――さらに、その中から見えてきた“自分を売り込むコツ”は?
どれだけ電話をしても、長い時間ビラを配っても、レースで結果が出せていないと興味を持ってもらえないことに気づきました。リザルト(結果票)に残る成績を出してアピールすることで、「こいつ、すごいな」って思ってもらえて、支援してもらえるんだと思います。
――バイトの面接や就活でも、近いことが言えそうですね。自分が残してきた結果をアピールすること。
そうだと思います。あとは、今の自分がやれることをやっていく。無意味に思えても、環境がガラッと変わると意味のあるものに変化するかもしれないので、いろんなことをしておいて無駄はないかなって。
「自分はこれだけやってきた」という自信は結果につながる
――レーシングスクールは卒業されたのですよね。
はい。今はチームに所属しながら、資金を集めるためのスポンサー活動やアルバイトに励んでいます。あと、体力をつけるためにトレーニングも頑張っています。
――アルバイトは何をしているんですか?
昼間は知り合いの方の通院時の送迎、夜は運送会社の仕分け作業のアルバイトをしています。じっとしている時間があったらバイトを入れて、お金を稼いでレースに出られるようにしたいんです。
――練習はその合間に?
練習はレースが控えている時だけです。週末にレースがあったら、その直前の金曜日に練習走行します。短い期間でどう速さに磨きをかけるかが、今の課題です。最近は短い練習でもいい走りができるようになってきているので、成長できているのかなって思います。「カートを一般的なスポーツとして広めたい」という目標も掲げて活動中。――今後のレースの予定は?
FIA-F4選手権に参戦していて、8月の鈴鹿サーキット、11月のツインリンクもてぎのレースに出る予定です。今年の最終戦となるもてぎまでに優勝できるよう、チームと力を合わせて頑張りたいと思います。
――最後に、目標ややりたいことを実現させるために必要だと思うことはなんですか?
やっぱり努力ですね。僕の場合、トレーニングやスポンサー活動でレーサーとしての土台を作り、レース当日に「自分はこれだけやってきた」っていう自信が持てると、走りにも出てくるんです。何に対しても言えることですが、自分が今できることに努めることが一番大事だと思います。
まとめ
取材中「レーサー以外の職業に就くとしたら?」と聞くと、悩み抜いた上で「…レーサーしかないですね」と答えた加藤君。幼い頃からの目標をブレずに追い続けている彼は、資金集めという現実の壁に果敢に立ち向かっていた。人に自分を知ってもらうためには、結果を出すことが1つの方法。「今の自分がやれることをやっていく」そう話す姿も印象的だった。今できることを後回しにせず、立ち向かってみることで見えるものはたくさんありそうだ!
■プロフィール
加藤潤平
1998年生まれ、東京都八王子市出身。4歳で初めてレーシングカートに乗り、F1レーサーを目指し始める。2015年からFIA-F4に参戦。
取材・構成・文:有竹亮介(verb)
撮影:中川文作
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