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認知症高齢者の一人暮らしが抱える課題と解決策

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認知症高齢者の一人暮らし課題と解決策

一人暮らしの認知症高齢者が増えている昨今。認知症になっても住み慣れた地域で安心して暮らし続けるには何が必要なのでしょうか。現状の課題と解決策について解説します。

認知症高齢者の一人暮らしは増加傾向

高齢化が進むつれ、当然高齢者の単独世帯は増加しています。平成15年の時点で既に「2025年には高齢者単独世帯が680万世帯に上る」(国立社会保障・人口問題研究所:日本の世帯数の将来推計)と予測されており、現実にその数は増加の一途を辿っています。

一人暮らしを続けたいと思っている高齢者は意外と多い?

 平成26年度の内閣府による調査では、現在一人暮らしをしている高齢者に「今後どなたかと一緒に暮らしたいか」という問いに「今のまま一人でよい」と答える人の割合が最も多く、7割以上の人が一人暮らしの継続を望まれています。

同様の調査は平成14年度にも実施されておりこの時も回答者の7割が「今のままでよい」と答えています。個々に事情が異なるため、一概には言えませんが、誰かと同居する=自宅を離れることになるため、もしくは子や孫に面倒をかけたくないといった言葉も聞かれています。

高齢者の一人暮らしの中にある課題

俗に言う「事故」は一人暮らしに限らず生きている限り起こりうるものです。しかし、事故が起きた場合、一人暮らしであることで初動が遅れるケースが見られます。以下に自宅内で多い事故について簡単にまとめます。(参考データ:高齢者の生活環境|平成28年版高齢社会白書)

家の中で事故が起きる場所

1位:居室 45%
2位:階段 18.7%
3位:台所・食堂17%
4位:玄関5.2%
5位:洗面所2.9%

以下、風呂場・廊下・トイレと続きます。
65歳以下の年齢層と比較すると、ほぼ全ての場所で高齢者層の方が事故の割合が高くなっていますが、台所・食堂での事故については若年層の方が多い事実が示されています。これは加齢による身体機能低下によるものではなく、年齢や認知症の発症によって自宅内での役割や行動に変化が生じていることが要因だと考えられます。

室内での事故内訳

1位:転落 30.4%
2位:転倒 22.1%
3位:触る・接触する 14.5%
4位:誤飲・誤嚥 9.3%
5位:ぶつかる・あたる 6.8%

以下、挟む・有毒ガスの吸引・その他と続きます。特徴として高齢者層ではシンプルな動作での事故が増えていると言えます。認知症に起因するパターンとしては、視空間認知の程度によって転落や転倒が起きるケースが見受けられます。高温多湿による日本家屋の特徴である玄関の上がり框や階段は特に発生しやすい場所です。

一人暮らしによる認知症への影響

認知症を持つ方が一人暮らしを継続する中では、さまざまなリスクがあります。

認知症が人知れず進行するリスク

一人暮らしをしていても、誰かがよく尋ねてきたり、定期的に外出する等、対人関係が保たれていれば、いざ認知症が進行しても周囲がすぐ気がつくことができます。しかし、一人暮らしで引きこもりがちになった場合、症状が進行しても、すぐには気づきにくくなります。

家族やその他の人間関係が存在しなくなることで、生活そのものに刺激が失われていくのは認知症高齢者に限った話でありません。そうした刺激がなくなると、認知症が進みやすくなり、悪循環が生まれます。

近隣トラブルのリスク

認知症の症状が進行むと、記憶障害や精神不安定などの症状により日常生活の中で近隣住民とのトラブルが起こることもよくあります。

実際にあった近隣トラブル例として、ある日突然庭でゴミを燃やすようになった男性高齢者がいました。今から30年ほど前であれば家庭のゴミを庭の焼却炉等で燃やすのが日常の光景でしたが、今は違います。男性宅では連日消防隊員が訪れての注意が繰り返され、近隣住民との口論が繰り広げられていました。その男性のケースでは「ウチの箪笥を盗んだだろう」と隣家に怒鳴り込み、警察が出動することが度々ありました。

詐欺や強盗の被害に遭うリスク

一人暮らしの高齢者が増えると同時にそれを狙った詐欺師も増えています。他者との関わりが少なくなり、孤独を感じる高齢者、もしくは認知症により詐欺師を自分の子供や孫・信頼する人物と認知する高齢者。そういった人につけ込み、高額の商品が売りつけられています。

また、強盗については、通常イメージされる強盗だけとは限りません。一度は普通に訪問し、相手が認知症だとわかった時点で強盗に早変わりするというケースも存在しています。

快適な一人暮らし続けるために

認知症を持ちながら快適に一人暮らしを続けるには、何が必要なのでしょうか。

近隣ネットワークの確立と活用

認知症の高齢者がひとりで自立した生活を継続して送るためには、次のような地域のネットワークがあると安心です。
地域の民生委員
近隣住民の方
町会
新聞配達
配食サービス業者
警察官

こうした地域の人々と関係性があることで、一人暮らしの高齢者を見守りにつなり、いざという時に頼りになります。

生活環境の調整

事故の起きやすい環境や使いにくい家具・電化製品・調理器具は一人暮らしを困難に陥れます。今、その人にできることは何か、していることはなにか、環境によって影響を受けている生活行為や動作はなにか。これらを把握することで認知症の方が住みやすく暮らしやすい環境に調整していきます。

あまりにも改装が進んでしまうと、自宅内でのリロケーションダメージが起きることも考えられます。そしてバリアフリーは重要なポイントではありますが、生活上必要な程度に留めることが重要です。あまりにも事故防止や安全に偏った完璧なバリアフリーを進めるよりも、その人にとって適度なバリアがあることで、今ある身体機能を活用した自然な生活を送ることができます。

お金の管理

買い物の量が過剰になってしまう、不要な契約を結んでしまう(詐欺以外でも)など、その時々の金銭的な計算が困難になるケースも見受けられます。かといって「認知症である」とはっきり示された場合は契約等の法律行為ができなくなるケースもあり、深刻な問題です。

お金の話題は他者が介入しにくい部分でもあり、一人暮らしの高齢者がどんな経済状況にあるのかを把握することは簡単ではないと考えられます。認知症になった後であれば成年後見制度の活用を勧めるのが一般的です。
【参考記事】成年後見制度の基礎知識

しかし、この制度では家裁の介入により財産の管理を自由に行うことは一定の制限が発生します。現在は認知症になる前から家族間信託制度を活用することで、財産管理を家族に任せることが可能です。権利は本人のまま、管理を任せる(預ける)ことになる制度のため、心理的な負担も少ないと言われています。

見守りシステムの活用

一人暮らしを支える見守りシステムも様々なものが登場しています。電気ポットやガスの使用量から状況を把握するシステム、スマートフォンやウェブカメラの機能を活用したもの、介護保険外で行われている家事代行サービス等の人的支援システムも一人暮らしの方の状況把握と対応に活用されています。

中でも成熟したコミュニティやご近所関係が維持されている場合は自然発生的に見守りシステムが機能している地域もあります。

困った時の認知症相談窓口

一般的な相談窓口として「地域包括支援センター」が挙げられます。認知症だけではなく、高齢者の暮らしを地域で支えることが役割の一つです。地域によっては回覧板、民生委員の方からの紹介などで繋がることが可能です。

もうひとつは「認知症の人と家族の会」の電話相談も有効です。フリーダイヤルによる相談を平日10:00〜15:00に受け付けています。

これらを有効活用するためには家族や近隣の方など「本人以外」の方が「気づく」ことが重要になります。一人暮らしの認知症高齢者の場合、自ら相談に赴く・電話をすることが困難となっているケースも多く、やはりリアルな人間関係のベースを日頃から構築していることが必要となってきます。

さいごに

たとえば何年何十年と同じ場所で行われていた井戸端会議で「ここ2日ほど◯◯さんが来なくなった」「毎日犬の散歩中に会っていたあの家のおじいさんを最近見かけない」といった気づきのひとつひとつが超高齢社会においては地域に必要なものとなってきます。

「近隣トラブル」の項目で触れた男性のケースでは、民生委員の方の働きかけで地域の高齢者サークルのメンバーが毎日その方の自宅を訪問し関係性を構築していきました。ご本人は他者と関わる時間が増え、サークルのメンバーもそれぞれがその人を理解しながら自分事として生活のパートナーとなっていくことでトラブルも軽減されてきています。介護保険サービスを適切に活用することも重要ですが、住民同士の「深すぎず浅すぎない快適なつながり」が高齢者の一人暮らしを支える基盤となることを再認識したいところです。

この記事を書いた人

軍司大輔

前介護福祉士養成校学科長。介護療養型医療施設等で介護福祉士として従事した後、介護教員となり、現在は地域での介護事業に携わっている。介護職ネットワーク「ケアコネクト」代表として認知症勉強会や情報交換会を開催。国家試験実技実地委員、実務者研修・初任者研修・福祉用具専門相談員講習講師の他、介護福祉士養成校・各種試験対策講師を務める。教育と臨床の両面から地域で活動する。HR/HMギタリスト。

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