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デキる人は「鳥の目」で大局を「虫の目」で多角的に「魚の目」で変化を見極める――ドラッカーからの伝言

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『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、P・F・ドラッカーの名言を解説いただくコーナー。第16回の今回は、「人口1億人を割った日本の未来とは?」についてです。

【P・F・ドラッカーについて】

ピーター・F・ドラッカー(1909〜2005)は、オーストリア出身の著名な経営学者。激動のヨーロッパで古い価値観・社会が崩壊していくのを目撃。ユダヤ人の血を引いていたドラッカーはナチスの台頭に危険を感じて渡米、ニューヨーク大学の教授などを経て、執筆と教育、コンサルティング活動等に従事する。

ドラッカーが深い関心を寄せていたのは、社会において企業が果たす役割についてであり、生涯にわたって、組織内で人をよりよく活かす方法について研究、思考し続けた。「マネジメントの父」と呼ばれ、GE社のジャック・ウェルチ氏やP&G社のアラン・ラフリー氏など、ドラッカーを師と仰ぐ世界的な経営者は数多い。

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こんにちは。俣野成敏です。

著名な経営学者であるP・F・ドラッカー氏の言葉を「私なりの解釈を付けて読み解いていく」というこのコーナー。

世界中に支持者を持つ一方で、難解と言われることも多いドラッカー氏ですが、残された著書を紐解くことによって、長年にわたり世界的企業の第一線で指導を続けた氏の真髄に触れることができます。これを機会にぜひ氏に親しんでいただき、氏の英知をご自身の仕事に取り入れていただくきっかけとなりましたら幸いです。

本日は、下記の名言について前回に引き続き解説いたします。

【本日の名言】

「人口構造の変化が企業家にとって実りあるイノベーションの機会となるのは、ひとえに既存の企業や公的機関の多くが、それを無視してくれるからである。彼らが、人口構造の変化は起こらないもの、あるいは急速には起こらないものであるとの仮定にしがみついているからである」」

(P・F・ドラッカー『イノベーションと企業家精神』)

私は若かったころにドラッカー氏の書籍を読んで、「未来はすでに起きている」という言葉に衝撃を受けました。

私たちは普段、「未来はまだ起こっていない」と思い込んでいます。しかし未来とは現在の延長線にある以上、その多くがすでに起こっています。その顕著な例が「人口」です。

日本が「1億人割れ」となるのは確実

前回、「見通しが甘い人」に“決定的”に足りない視点――ドラッカーからの伝言の中でも言及したことですが、20年後に20歳になる人は今、生まれていなければなりません。

これが意味することをご理解いただくには、日本と他国のデータを比べてみるのが一番でしょう。IMFが発表した2016年の「世界人口 国別ランキング」によれば、日本の人口は世界で10番目に多い約1億2690万人でした。それに対して最近、成長著しいフィリピンは12位の約1億420万人でした。

日本の厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所の試算によると、このままでいくと日本の人口は2065年には8808万人になると予想されています(2017年4月発表の「将来推計人口」より)。一方、フィリピン統計庁(PSA)の2015年の発表によれば、当国は2010年から2045年までの35年間に約4900万人増え、1億4200万人に達する見込みであるということです。

近い将来、日本とフィリピンの人口統計順位が入れ替わるのは間違いないでしょう。それどころか、日本は経済成長に必要とされる人口1億人を保つのも難しい状況です。

その国の人口構造から見えてくるもの

そもそもなぜ、人口ピラミッドや平均年齢、出生率といったものに注目するのかと言うと、これらを見ることによって、経済的な予測が立てやすくなるからです。日本の人口ピラミッド図も、かつては綺麗な三角形を形づくっており、それがちょうど高度経済成長期と重なっていました。現在、フィリピンの人口構造もくっきりとした三角形の形をしています。

ここからわかることは、生産年齢が増えれば「生産」と「消費」も同時に増える、ということです。働き手が増えれば当然、それが経済を牽引します。その人たちが消費をすることによって、その分、経済が成長することになります。これがドラッカー氏の言う「人口構造の変化に着目せよ」の言葉の背景にあるものです。

世間の人々は、「今は景気が良いか悪いか?」ということや「今、何が流行っているのか?」といったことには関心を持っています。しかし消費の原動力・生産の原動力である人口について関心を持っている人は、意外に少ないように感じられます。それが今回、私がこの名言を取り上げた一番の理由です。

過ぎ去った過去でも経験することはできる

人がまだ見ぬ未来を想豫するのは簡単なことではありません。しかし未来ではなく、「過ぎ去った高度成長期」に関してであれば、今の私たちでも実際に体験することは可能です。

私の事例をお話しましょう。私はサラリーマンだった時に、海外赴任で香港に駐在していたことがあります。あれは2000年頃のことでしたが、仕事でたびたび香港から中国の深センを経由して東莞の工場にいく機会がありました。当時の深センは道も舗装されていない有様でしたが、安い土地と人件費を求めて、世界中から資本が集まってきていました。

その頃の中国はようやく開発が始まったばかりで、人々の着ているものや住んでいる家、建物なども簡素なものでした。それまで日本の景色が当たり前だと思っていた私は驚き、「日本の高度成長時代もこうだったのだろう」と考えたものです。

私はそれ以降、中国の著しい成長を間近に見ました。今、仕事でフィリピンのダバオ(Davao)という都市に行く機会があるのですが、あの時の中国で感じた変化と同じ光景を目の当たりにしています。これが「すでに起こっている未来」の意味です。日本ではすでに過去のことであっても、海外に行けばまだまだこうした機会はたくさんあるということです。

最大の年齢集団が経済に与えるインパクト

ドラッカー氏は、『イノベーションと企業家精神』の中でこのように述べています。

「人口の総数そのものにはあまり意味はない。年齢構成のほうが重要である。この人口の年齢構成に関して、特に重要な意味を持ちかつ確実に予測できる変化が、最大の年齢集団の変化、すなわち人口の重心の移動である」

通常、同一世代の消費活動はたいてい似通っていますから、人口の多い世代の行動がその時代を象徴しやすいのは事実でしょう。前回、アメリカの靴屋チェーン・メルビルが、10代のベビーブーマーに勝機を見出した事例をお話しました。日本の「最大の年齢集団」とは、団塊世代のことです。

日本でこれから高齢者が増えていくのは、すでに「決まった未来」です。実際、ここ数年で介護ビジネスは著しい伸びを示しており、シニア産業の市場規模は100兆円前後になるとも言われています。しかしその反面で過当競争に陥り、人手不足や度重なる法改正、参入企業の倒産や撤退など、業界は依然、流動的な状態です。

過去のイメージに捉われない

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現在、日本では団塊世代を中心としたアクティブシニアが増えていると言われます。アクティブシニアとは、自分の価値観に従って積極的に行動し、社会と関わっている活動的な高齢者のことです。総務省の平成25年版情報白書によれば、2002年の高齢者の歩行速度は、1992年の高齢者の歩行速度と比べて速くなっており、男女とも11歳若返っているとの研究結果もあるそうです。

確かに、年齢に対するイメージは随分と変化しています。たとえば国民的TVアニメ『サザエさん』の主人公・サザエさんの年齢は、フジテレビのHPによると24歳。サザエさんの父親(波平)が54歳、母親(フネ)は50歳位という設定です。この2人が50代前半の設定と聞いて驚く人も多いのではないでしょうか。ここからも、アニメが始まった1969年当時の50代と今の50代のイメージがかなり違うことがお分かりいただけると思います。

以後は先進国を中心に、世界中で高齢者が増えていきます。少子高齢化は、決して日本だけの問題ではありません。今、世界中が日本の行方を見守っています。これを機に、あなたもぜひ人口問題に関心を向けてみていただければと思います。

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』が11刷となっている。著作累計は34万部超。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

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