ガジェット通信 GetNews

見たことのないものを見に行こう
ワンダーウーマン

長いキャリアがあるからこそ活躍できる 仕事の選択肢を広く提示し続けたい

DATE:
  • ガジェット通信 GetNewsを≫

3年後の2020年には65歳以上人口が約30%と推計されている、超高齢化社会に突入する日本。また、労働力人口も減少している中で、ミドル・シニアの活躍は重要なテーマです。そんな中、2017年6月17日、「50代、60代のためのキャリアを考えるセミナー」が東京にて開催されました。今回のセミナーを手がけたのは、ミドル・シニアの転職支援に長年取り組んできた柴田教夫と杉江則子。ミドル・シニアの転職における課題と、セミナー開催を通じて伝えたい思いを聞きました。

これまでの経歴と、ミドルシニア採用に課題意識を抱いたきっかけを教えてください。

f:id:carraria:20170724193828p:plain

杉江:私は新卒でリクルートフロムエー(現・リクルートジョブズ)に入社して以来、一貫して人材サービス事業に携わってきました。入社当時は、「働く」とは「正社員でなくてはならない」という従来のキャリア観を打ち破り、自由な働き方をしていこうという考え方が世の中に広まり始めた時代。そんな考え方に私自身も心ひかれていました。お客様(採用側の企業)にも、今後の事業展開を加速させるためには多様な価値観を有する幅広い層の人材を確保し、その能力を最大限発揮してもらうことが必要不可欠であると、フリーター採用を勧めていたのですが、数年後、「正社員じゃないから転職ができない」「正社員じゃないから結婚を反対された」といったカスタマーの声を多く聞くようになりました。自由な働き方を選んだゆえ、社会とのはざまで苦しんでいる人がいるという事実に、そのような方々がイキイキと働き続けられる社会を作ることが私の使命なんじゃないかと考えるようになったんです。NewRING(リクルートの新規事業提案制度)を活用し、「正社員を目指す人たちのための社会人の学校を作りたい」という企画を出したこともありました。その時は事業化には至りませんでしたが、「社会のなかで、マイノリティ(社会的少数派)となってしまった人たちのサポートをしたい」という思いは、ミドル・シニア転職支援への問題意識へとつながっていきます。ミドル・シニアの転職支援事業に初めて携わったのは、リクルートエイブリック(現リクルートキャリア)に移った2000年のことです。NewRINGでマイノリティ支援をテーマに毎年のように企画を提案していたこともあり、事業の立ち上げに参加しないかと誘われたんです。そこで、ミドル・シニアのための求人開拓や転職支援を、企業側、転職希望者側の両面から関わり、ミドル・シニアがぶつかっている壁に衝撃を受けました。当時は、中途採用を行う企業の担当者は、「50歳以上の候補者? その年齢層は当社にはマッチしないな」と、年齢を理由に話すら聞いてくれませんでした。少子高齢化により今後50代、60代が確実に増えていくのに、それまで培ってきた力を使って社会に貢献できないなんておかしい。その思いは、かれこれ17年持ち続けています。

 

柴田:私は人事総務経験が長く、95年からリクルート人材センター(現:リクルートキャリア)で総務人事経営企画など管理部門全般を見ていました。それまでバブル崩壊など激動とともに生きてきましたが、最大のターニングポイントは、99年、39歳のときに脳梗塞で倒れたことでした。左半身不随となり、車椅子で2年間のリハビリ生活を送った後に復帰。ただ、組織長は物理的にむずかしく、メンバーのひとりとして仕事を続けたいという意思を伝え、キャリアアドバイザーをすることになったのです。当時だと辞めざるを得なくても仕方ない状況で、救ってくれた会社に恩返しをしようと始めたのが、ミドル・シニア層の転職支援でした。私は「40代で大病を経験した人が転職するのはむずかしい」という現実に直面して今があるのだから、同じように転職に苦労している層をサポートしようと考えました。しかし、杉江も言っていたように、転職支援をしようにも求人企業がない。年齢を聞いただけで「採用は難しい」という企業も多くありました。そこで、50代、60代の候補者と1カ月100人ペースで面談をし、彼らの職務履歴をインプットした上で、求人開拓をする営業担当についていき商談を重ねました。商談の最後の5分だけ時間をもらって、「ところで、貴社の海外工場での管理部門長の次を担う方っていますか?」などと採用課題をヒアリングし、「実はこんな経歴の人材がいるんですよ」と切り込むことで、年齢ではなく職歴や実績に注目してもらえるように話を進めていきました。勤めていた企業の規模や業種にかかわらず立派な実績を持つ候補者ばかりなのに、転職できない現実。これを何とかしないといけないという焦燥感は常にありました。ミドル・シニアの問題は、超高齢化社会を迎えるこれからは、マジョリティ(社会的多数派)の問題へと変わります。今までの社会を支えてきた層がイキイキと働き続けられない世の中はおかしいという思いが、私の原動力になっています。

 

 

「50代、60代のためのキャリアを考えるセミナー」開催に至った経緯を教えてください。

f:id:carraria:20170724190345p:plain

杉江:13年に、リクルートキャリアが社長直下で、ミドル・シニア領域への取組みを本格化させました。それを機に、柴田と一緒に異動となり、事業に取り組んでいます。ミドル・シニア層は、ひとつの会社に長く所属してきた方が多く、経験やスキルを活かして同業種・同職種転職を目指そうと考えがちです。しかしそれでは求人とのマッチングが非常にむずかしくなります。そこで、異業種・異職種転職を視野に入れ、人生経験の長さを活かせる仕事へとシフトチェンジしていく必要があります。そこで私たちが取り組んだのは、異業種・異職種でも戦える武器としての“ポータブルスキル”、つまり、業界を越えた持ち出し可能なスキルの開発と啓発でした。

 

柴田:私は、人材業界が集まった業界団体で(一般社団法人人材サービス産業協議会)、年齢・業界・職種の壁を越える「キャリアチェンジプロジェクト」を立ち上げ、そのリーダーをやっていました。ポータブルスキルの開発には、大学教授やリクルートワークス研究所(人と組織に関する研究機関)の研究員、リクルートマネジメントソリューションズのほか、経済産業省、厚生労働省も携わっていただくなど、世の中のニーズを強く感じていました。そこで、ポータブルスキルを活かして転職する重要性を広めようと、企業へのシンポジウムや人材業界へのセミナーを開催。人材業界が理解しないことには始まらないと、同業他社へのセミナーも実施しました。人脈を最大限に使い、100社3000人余に向けてミドル・シニア層の課題意識やポータブルスキルの活用についてお話しさせて頂きました。

 

杉江:当時から、カスタマーへのセミナーは月1回ペースで小さく行ってきたのですが、ミドル・シニアの方の声から、異業界へと踏み出すハードルの高さを実感することが多くありました。業界や雇用形態にとらわれず、活躍できる道があることをもっと広く伝えたい。そんな思いから、今回のセミナーの開催を企画してきました。本セミナーの特徴は、リクルートグループ4社が合同で主催していることです。中途採用を手がけるリクルートキャリア、制作・ブランディングを手がけるリクルートコミュニケーションズ、再就職支援のリクルートキャリアコンサルティング、アルバイト・パート領域のリクルートジョブズが、それぞれが持つメディアやサービスに登録のある、55歳以上のカスタマーを計90人招待しました。会社に勤めなくても、独立・開業という道もあるし、アルバイトとして空いた時間を活用してもいい。いろんな選択肢があることを伝える場を設けたかったのです。

 

セミナーの具体的な内容と反響について教えてください。

f:id:carraria:20170724190252p:plain

 柴田:セミナーは、大きく3部構成で、「自分のキャリアを振り返るワークショップ」「異業種・異職種転職に関するプレゼンテーション」「実際にミドル・シニア採用を成功させている企業事例紹介」を行いました。ワークショップでは、これまでのキャリアを「自分のために仕事を頑張った20代」「周囲の期待に応えようと頑張った30~40代」とわけて振り返り、では「これからは何のために働くのか」をお一人おひとりに考えてもらいました。事例紹介では、メーカーのエンジニアから介護業界へと転職した男性を紹介しました。ただ、私たちは特定の業界を勧めているわけではありません。まったくの異業界であっても、長い社会人キャリアで培ってきたコミュニケーション能力や専門分野に対する肥えた目が、あらゆるジャンルで活用できることを広く伝えたかったのです。実際に「異業種への可能性を感じました」「働き方、生き方を考え直すいい機会になりました」という声が多く寄せられ、次回のセミナー開催を望む意見もいただいています。 

杉江:50代以上を対象にした転職セミナーとしては、非常に大きな規模で実施でき、やりたかったことをひとつ達成できた思いはあります。ただ、「ミドル・シニア層の働き方の選択肢を広げたい」というこの取組みにゴールはありません。「この課題に向き合い続ける」という意志を持って、今後もセミナー開催含めた支援活動を企画、実施していきたいです。

 

 ————————————————–

柴田教夫(しばた・のりお)

1982年、日本リクルートセンター(現:リクルートホールディングス)に新卒入社。新卒採用担当、広島/福岡拠点の総務人事課長、本社総務課長等を経て、91年のバブル崩壊瞬間には中途採用求人広告の営業所長に異動。95年、リクルート人材センター(現:リクルートキャリア)に転籍し、総務人事経営企画など管理部門全般を管掌。99年、脳梗塞で左半身不随となり車椅子でリハビリ生活を送るも、キャリアアドバイザーとして復帰。以来50~60代のビジネスパーソンの転職支援に特化してこれまで7000人余の方々に向き合い、1000人余の転職実現をサポート。社内の人材育成、業界他社への研修講師、業界団体のプロジェクト推進委員なども兼務している。

 

杉江則子(すぎえ・のりこ)

1990年、大学在学中にリクルートフロムエー(現:リクルートジョブズ)にアルバイト入社。パート、アルバイト領域の求人広告営業を担当。2000年にリクルートエイブリックに異動し、再就職支援事業の立上げに携わり、営業、事業企画、マーケティング、組織長など広く経験。2010年より、ミドルシニア層のキャリアアドバイザー、ミドルシニア事業開発に従事。現在は社内の人材育成、業界団体の委員として“ミドルシニアの力で日本を元気にする“活動を行っている。

 

 

 

カテゴリー : デジタル・IT タグ :
carrariaの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。