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世界が注目すべき次世代の日本映画監督10人

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世界で活躍できる次世代の映画監督は誰か?

ヴァラエティ・ジャパンでは、日本映画界に注目する海外の業界人が抱くこの疑問に答えるため「日本映画界で注目されるべき監督たち」というテーマで元CUT副編集長でライターの門間雄介氏に分析と寄稿を依頼。世界の映画監督に引けをとらない、実力と個性を兼ね備えた日本の監督10人を選出してもらった。

今村昌平『うなぎ』がカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞し、北野武『HANA-BI』がヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した1997年。この頃、日本映画に対する国際的な関心は高まり、是枝裕和、河瀬直美をはじめ、後進の監督たちが世界の檜舞台に立つ機会は増加した。

日本国内に目を向ければ、メジャー各社がテレビ局資本のブロックバスター作品に商機を見出し、一方で低予算のビデオストレート作品市場が活況を呈して、そこから黒沢清、三池崇史らがブレイクスルーしたのも同時期。2000年代半ばまでは日本映画バブルと呼ばれる好景気が続き、規模の大小、質の優劣を問わず、数多くの作品が生み出された。

しかしリーマン・ショックを境に状況は変わる。

意欲的な中規模作品が急減し、大作と低予算作品の二極化が一気に進んで、日本国内における映画の多様性は失われた。そして気がつくと、是枝、河瀬、黒沢、三池に続き、国際的な注目を集める日本の監督はいなくなった。(カンヌのコンペティション部門に上記以外の監督がラインナップされたのは、2005年『バッシング』の小林政広が最後。00年代中盤から国内外で人気を集めた園子温は例外かもしれないが、そもそも彼は是枝、三池と同世代の作家だ)

そんな日本映画の「ロスト・ジェネレーション」を経て、近年注目すべき監督たちが登場している。確固たるオリジナリティがあり、社会への視座と日本映画への批評性を備えた、革新的なフィルムメイカーたち。「ロスト・ジェネレーション」の焼け跡に現れた10人の監督たちを紹介しよう。

深田晃司

2013年『ほとりの朔子』でナント三大陸映画祭金の気球賞(最高賞)、2016年『淵に立つ』でカンヌ国際映画祭ある視点部門審査員賞を受賞した、次世代をリードする一人。『淵に立つ』では、平穏に暮らす家族が謎の男に侵食され、崩壊させられていく様子を描き、贖罪や孤独といった彼の映画の主題を浮かび上がらせた。諸外国との合作を積極的に推進し、インディペンデント映画への支援を訴えるなど、アクティビストとしての顔もある。

濱口竜介

2012年『親密さ』は255分、主演女優4人にロカルノ映画祭最優秀女優賞をもたらした2015年『ハッピーアワー』は317分。長尺の非商業作品が多いのは、素人や無名の役者たちを起用して、彼らの息づかいや生活、人生をそのままドキュメントするかのような彼の作風と、おそらく無関係ではない。『なみのおと』に始まる「東北記録映画三部作」(酒井耕との共同監督)では、東日本大震災の被災者が語る言葉や声、表情をそのまま記録した。

石井裕也

1983年生まれの石井は、7本のメジャー作品を含む、十数本の映画を既に監督している。名実ともに次世代の中核的存在だ。2005年のデビュー作『剥き出しにっぽん』以来、彼の映画の根幹を成してきたのは、不況下の日本で人はどう生きるべきかという思想や哲学。物質的な欲求から逃れ、精神的な豊かさを追う人々の姿を、2013年『舟を編む』や2017年『夜空はいつでも最高密度の青色だ』では、恋愛劇のスタイルをベースに軽やかに描いた。

白石和彌

2013年『凶悪』は、死刑囚の告白によって新たな凶悪殺人事件が発覚した実話を映画化したもの。2016年『日本で一番悪い奴ら』でも、実在した汚職警官の半生を一級のピカレスクロマンに仕立てて、コンプライアンス重視のメジャーシーンに一石を投じた。もともとは若松孝二に師事し、深作欣二らが築いた実録映画というジャンルを今に受け継ぐ唯一の存在。2017年『雌猫たち』ではロマンポルノに挑み、女たちの性を哀切に浮かび上がらせた。

真利子哲也

自主映画時代から才能を高く評価されていたが、商業映画デビューまでに長い時間を要し、その名前だけが伝説化していた。晴れて商業デビューを果たした2016年『ディストラクション・ベイビーズ』は、閉塞した田舎の港町を舞台に、理由なき暴力を振るう野獣のような青年と彼の力に魅入られた少年の凶行を、叙情を排して映像に焼き付けた問題作。過激な題材ながらメジャーキャストが多数集い、日常に潜む純粋な暴力の姿に肉迫した。

富田克也

製作から配給、宣伝まで、すべて自身の手で行う映像制作集団「空族」を結成し、日本の映画界において自主独立の道を貫く。2011年『サウダーヂ』は、ヒップホップクルーの若者たちと肉体労働や水商売に従事する移民たちの姿を、地方都市の過酷な現実の中に映した群像劇。本作でナント三大陸映画祭金の気球賞を受賞した。タイ、ラオスでオールロケを敢行した2017年『バンコクナイツ』など、作品のスケールは自主映画の枠に止まらない。

三宅唱

これまでに劇場公開された長編作は2012年『Playback』のみだが、その1作で監督としての潜在能力を証明した。人生の岐路に立たされた男の現在と過去が交錯する『Playback』は、モノクロの映像に滲む叙情性と随所に登場するスケートボードの疾走感が、奇妙な余韻を残す大人の青春劇。敢えてパッケージ化せず、劇場上映をくり返している。2014年のヒップホップドキュメンタリー『THE COCKPIT』など、ストリートカルチャーとの親和性も高い。

山戸結希

2014年の中編作品『おとぎ話みたい』で、地方都市に暮らす少女の夢と希望を、詩的なモノローグやエモーショナルな音楽、そして自意識が吹きこぼれるようなダンスで描出。観る人の、とりわけ少女たちの心を揺り動かした。映像と音楽の力で観客を情感の渦に巻き込むスタイルは、さながら日本のグザヴィエ・ドラン。胸の高鳴り、苦しさといった思春期特有の心情表現に本領を発揮する。2016年の長編作『溺れるナイフ』も話題を呼んだ。

小林勇貴

2015年、製作費5万円の超低予算作品『孤高の遠吠』で一躍センセーションを巻き起こした。故郷の静岡県富士宮市を舞台に、地元の素人たち、しかもリアルな不良を起用して、アウトローたちの凄惨な抗争劇を容赦なく描いたバイオレンス作品。激しい手ぶれの映像に刻まれた反社会的なシーンの数々は、メジャー作品では100%不可能なものばかりだが、予算的な不自由を映画的な自由に変える作品作りに、かつての三池崇史や園子温がだぶる。

山内ケンジ

妻との離婚を決意した男が、娘の親友に誘惑される2015年の恋愛劇『友だちのパパが好き』で、期待の新鋭監督の地位に躍り出た。1958年生まれ、現在58歳。CMディレクターから劇作家に転じ、50歳を過ぎて監督デビューした彼は、友人や恋人、家族など身近な関係性に着目し、そこから社会の歪みを透かし見る。コメディの表皮を剥がせば、そこに映るのは小津安二郎から是枝裕和に至るまで、日本映画が描き続けてきた現代日本の家族の姿だ。

(執筆/門間雄介)

『Harmonium』Comme des Cinemas/Kobal/REX/Shutterstock

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