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【機織り姫と軽トラ王子】苦手なタイプだった彼は意外と…【旅×恋愛小説】

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【機織り姫と軽トラ王子】苦手なタイプだった彼は意外と…【旅×恋愛小説】 【機織り姫と軽トラ王子】苦手なタイプだった彼は意外と…【旅×恋愛小説】

幸せだけど、なんだか満たされない――。

そんな毎日に漠然とした不満を抱えていたリサだったが、

ある募集広告がきっかけで、彼女の運命が大きく変わることに……!

登場人物

山口リサ(24) 都内の中堅商社のOL

佐々木良太(27) 地方の観光協会に勤務。

久松先生(58) 機織りの先生

STORY

一人っ子の私は、子供の頃、本を読んではいろんなことを空想するのが好きだった。

特に好きなのは、お姫様と王子様が出て来る物語だ。

シンデレラ、

白雪姫、

眠り姫、

私もいつか、お姫様になって、王子様と白馬でお散歩したい――。

会社に入って、4年目。

仕事があって、健康で、友だちもいて、それなりに楽しくて。

贅沢を言えばキリがないけど、何かが足りない、何かが満たされない。

でも、何をしていいのかわからない。

「ああ、このまま年をとって、お局化していくのかぁ……」

そんなとりとめもない想いが、自分の中で、グルグルしていた。

そんなある日。

駅で見つけたのが、壁に貼られた、こんな募集広告だった。

『ものづくりの喜びを、手仕事の素晴らしさを。

憧れの伝統工芸を、一日体験してみませんか?』

伝統工芸

某地方都市が、伝統工芸の魅力を知ってもらうために開くという、一日体験教室の告知だった。

「そういえば、私、モノを作ったり、細かい作業するのって好きだったな……」

中学と高校では、手芸部に入っていた。

針と糸を使って、無心で作業するのが好きだった。

何でもない材料から、モノが形になるのがうれしかった。

でも、そんなこともすっかり忘れていた。

これ、やってみたい――。

都心から電車で一時間半ほどの某地方都市。

指定された駅の前で待っていると、迎えの人が現れた。

しかも、なんと白い軽トラで……。

軽く動揺していると、中から人が降りてきた。

長身にがっちりとした体形。小麦色の肌が健康的。

顔立ちは割と整っていて、どちらかと言えば好みかも――。

「……山口さんですか?」

言われてはっとした。

何を考えているのだ、と自分を叱咤する。

そういう目的できたわけでもないのに。

「は、はい、あの、観光協会の方ですか」

男性はうなずいて、おもむろに名刺を差し出す。

「佐々木です」

名刺には、「○○市観光協会 佐々木良太」と書いてある。

「今日はよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

沈黙。

えっと、この間はなんだろう。

私が何か言うべきなの?

でも、こういう場合、そっちが主導で説明すべきなんじゃないの?

そんなことをグルグル考えていると、

「じゃあ……とりあえず、乗ってもらえますか」

おもむろに私の荷物を手に取り、ずんずん先に行ってしまう佐々木さん。

大丈夫だよね、人さらいじゃないよね。

名刺ももらったし、ちゃんと地元の人だよね。

キョロキョロしながら、人生初の軽トラに乗り込むと、いきなり車内で流れ始めたのは、こぶしのきいたド演歌。

そして以降、無言を貫く佐々木さん。

なんだか口数少ないし、笑顔もないし、無愛想でちょっとこの人、苦手かも――。

そのまま5分ほど車で走って、今日の目的地の工房に到着。

中から、優しそうな女性の先生が出てきた。機織りの先生の、久松先生だと紹介される。

「今日の体験者の山口さんです。お願いします」

「ええ、また夕方お願いね」

ペコリと頭を下げて、佐々木さんは軽トラで走り去っていった。

とりあえず、無事に目的地に着いてひと安心。

でもまた、夕方、あの人が来るのか……。ちょっと憂鬱……。

今回、私が体験したのは、伝統的な手織り物の技術だった。

縦糸が張られた機織り機に、一回ずつ「ひ」と呼ばれる横糸をかけるための道具をさし、丁寧に織り込んでいく。

縦糸と横糸が重なり合うことで、一枚の布ができる。

布作りって、本当はこんなに大変なことなんだな。

黙々と作業しながら、ずっとそんなことを考えていた。

機織り

お昼休憩をはさんで、午後も作業。モクモク、モクモク、ひたすら作業。

座りっぱなしで、大変なはずなのに、一日の体験講座は、あっという間だった。

何、これ、超楽しい!! 久松先生も、超やさしい!!!

帰り支度をする中で、思い切って言ってみた。

「……先生、私、またここに来たいんですけど」

「あらうれしい。じゃあ、良ちゃんに言っておくわね」

「……良ちゃん?」

「朝、一緒に来た人。彼のおうちでも、機織りをやってるのよ」

「そうなんですか……」

それからほぼ毎週末、私は、機織りのためにこの町を訪れた。

手仕事で、美しい布が出来上がるのがうれしかった。

会社の事務仕事では、味わえなかった達成感――。

朝夕の送迎は、相変わらず佐々木さんだった。

いつも無言で、最初、「嫌われているのかな」と思ったけど、ある時、迎えの車が途中で止まったことがあった。

「ここで、少し待ってもらえますか」

「……?」

何ごとかと思ったら、畑の中に、機械と一緒に立ち尽くしている、おばあちゃんの姿があった。

佐々木さんが何度か操作したら、機械が動き出した。

おばあちゃんが感謝している感じが、遠くからでも伝わってきた。

この人、意外と優しい人なのかも。

車が再び走り始めたとき、思い切って話しかけてみた。

「……どうして、いつも演歌なんですか」

「え?」

「音楽」

「……ああ、これ? 中学の同級生なんです」

「え、この歌手の人?」

「同じ野球部のヤツで、応援してて。まだまだこれからなんですけど」

全力でお詫びします。

ずっとダサいと思ってて、ごめんなさいっ!

何、この人、

友達想いの、めっちゃいい人じゃん!!

「演歌、お嫌いでしたか?」

「いえいえいえいえ、そんな!」

「普段はどういう音楽を?」

その後少しだけ、音楽の話題で盛り上がった。

私も佐々木さんを警戒していたように、

佐々木さんも、私とどう接したらいいのかわからず、緊張していただけみたいだ。

その日を境に少しずつ会話が増えた。

少しずつ佐々木さんのことを知った。

代々、機織りを家業にする家に生まれた長男であること、

今は、地元の観光協会に勤める傍ら、実家の機織りを手伝っていること。

男ばかりの三兄弟で、女性と話すのが、苦手なこと――。

機織りだけではなく、車中の佐々木さんとの会話も楽しみになっていった。

こんな風に何度か通いつめた、ある日の帰り道。

ふた手に分かれるY字路の前に車を停めて、佐々木さんが、ボソッとつぶやいた。

「……電車、何時でしたっけ?」

「……18時35分ですけど」

「……そうか」

おもむろに、いつもと違う方向にハンドルを切り、グングン山道を進む、佐々木さん。

表情が真剣なのが、怖さを増していた。

口下手なのはわかってるけど、この状況は、ちゃんと説明して欲しい。

ってか、山道というより、もはや、けものみちだし、何かあっても、絶対、見つけてもらえない場所なんですけど。

私、いたいけな女子1名なんですけど――――――!!


続きはこちら

そんなことを心の中で叫んでいたら、いきなり視界がパッと広がった。

そこは、駅周辺の平野部分が見渡せる、小高い丘の上。

目の前には、真っ赤な夕焼けと街並みという、夢みたいに美しい風景が広がっていた。

夕焼け

「……いつも、工房と駅の往復だけだから……」

と、恥ずかしそうに、ボソッとつぶやく佐々木さん。

不安と安堵と感動が一緒になって、自分でも、気持ちがよくわからなくなっていた。

「だったら、最初からそう言ってくださいよっ!

どこに連れて行かれるのかと思って、不安だったんですからっ!!」

喜んでもらうつもりが、私の思いがけない反応に、戸惑う佐々木さん。

「……あっ、す、すみません。この時間に間に合うか、わからなかったもんで……」

その瞬間、ハッとした。

この人は、私に、一番きれいな瞬間を見せたかったんだ。

約束できないことを、軽はずみに口にしない人なんだ――。

そう思ったら、今度は笑いがこみ上げてきた。

そんな私の反応に、ますます戸惑う佐々木さん。

「……あの、……大丈夫ですか?」

「ごめんなさい。ありがとうございます。本当にきれい……」

「よかった、ココ、俺の秘密の場所なんです」

しばらく、二人で無言の時間が流れた。

無理に話そうとしなくても、気持ちが通じる感じが心地いい。

佐々木さんのことを、もっと知りたいと思った。

そんな修行を重ねたある日。久松先生に、声をかけてもらった。

「山口さんさえよかったら……。あなた、筋がいいし、この仕事が本当に好きみたいだから」

久松先生の工房で、正式なアシスタントとして働かないかという思いがけないオファー。

「ありがとうございます。少し、時間をいただいて、考えさせてもらえますか?」

久松先生からも快諾を得て、一度、持ち帰ることにした。

機織りを本業にするということは、今の家を引き払って、こちらに住むことになるだろうし、

今までのように月々のお給料が入る、安定した仕事はなくなり、向こう三年くらいは、薄給を覚悟しなければならない。

そんなことを考えながらの帰り道、いつもより口数が少ない私に気づいた佐々木さんが、心配して声をかけてくれた。

今日の出来事を話して、思わず、

「修行の身じゃ、とても食べていけないし……」

と本音を漏らしてしまった。しばし無言となる佐々木さん。

まぁね、夢ばかりじゃ、生きていけないのも、大人は知ってるからね。

駅に着いて車を降り、いつものように、

「それじゃ、また来週」

と行こうとしたところ、後ろからガッと腕をつかまれた。

え、何? どうしたの?

「……あの、俺の嫁さんになるっていうのはどうですか?」

「!!!!!」

真剣な表情の佐々木さんの背後に控えるのは、演歌がBGMの真っ白な軽トラ。

私の王子様は、白馬ならぬ、白い軽トラに乗って現れたのだ。

(おしまい)

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