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いつでもどこでもできる論理的思考力向上トレーニング

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いつでもどこでもできる論理的思考力向上トレーニング

ビジネスにおいて、とても難解で答えがないような問題と対峙することがままある。

完璧な正解がないのであれば、最適解を導き出すことが重要になるが、その際に余計な情報や感情、偏見が邪魔することもあるだろう。

では、本当に導き出すべき解答に向かうためにはどうすればいいのか。

そこで必要なのがロジカルシンキング――論理的思考力だ。

論理的思考力は最適な解を出すのに適した思考術である。合理性、妥当性を検討し、目的を達成するための意思決定を下すための筋道を立てる。

とりわけビジネスの現場は意思決定の連続だ。合理的な判断をすることも求められれば、それを他者に納得させる力も求められる。そこで論理的思考力が役に立つ。

ただ、ロジカルシンキングの本が出版され続けていることが示しているように、この思考術を会得するのは相当難しい。だから、「テクニック」として身につけるのではなく、常日頃から思考力を養う必要がある。思考は「癖」とも言える。とことん自分の頭に染み込ませて、癖付けをするのだ。

そこで役立つのが、いつでもどこでも可能な「思考実験」である。

『論理的思考力を鍛える33の思考実験』(彩図社刊)は有名な哲学や論理学、数学の問題を引用しながら、筋道を立てて自分なりの答えを見出す思考力を高めてくれる一冊だ。

普通、ロジカルシンキングに関する本は経営コンサルタントやセミナー講師などが執筆することが多いが、本書はパズル作家の北村良子氏が執筆している。パズルを解くためには、論理的思考力だけでなく、物事を多角的に見る力、裏を想像する力など、さまざまな思考力が求められる。その思考力を鍛える問題が本書に詰まっているのだ。

本書では33の思考実験が用意されているが、そのうち2つを簡単に紹介しよう。

■自分の手が論理的思考を阻む「暴走トロッコ問題」

これはハーバード大学のマイケル・サンデル教授が「正義」をテーマにした講義の中で提示したことでも有名な問題。

暴走したトロッコが5人の作業員に向かって突き進んでいて、もし自分がすぐ近くにある分岐器の切り替えスイッチを作動すれば、5人は助かる。しかしそうなると、切り替え先の進路にいる作業員1人が犠牲になってしまう。どちらを選択すべきか。

この問題に対する解答は統計が取られており、85%の人がスイッチを切り替えると答えている。5人を助け、1人を犠牲にするという、単純な数としての思考が働くとこの結果になるのは当然だ。

面白いのは、少々残酷ともいえる派生問題に対する答えである。

同じように5人の作業員に向かってトロッコが猛スピードで突き進んでいる。それを橋の上から見ている自分の隣に、かなり大柄な男性がいる。彼を橋から線路上に落とせば5人は助かる。彼を橋から落とし5人を助けるか? それともそのまま5人が犠牲になるのを見るのか?(起こした行動によって罪は問われない)

自分が行動を起こせば、1人が犠牲になってしまうものの、5人を助けられる。

しかし、この問題に対する回答の比率は最初の問題と逆転する。75%~90%ほどが「そのまま静観している」と答えたそうだ。

「より多くの人を助ける」という目的からいえば、合理的な判断とはいえないだろう。しかし、自分が「突き落とす」という直接的な行為が発生することにより、強い抵抗が生まれ、5人を犠牲にするという意志決定が下される。

もし、「大柄な男が誤って落下する」ということであれば、比率は最初の問題と変わらないだろうと北村氏は指摘する。

確かに、自分が直接的に関わらないことなら合理的な思考ができるのだが、直接関わるとなると途端に合理的に考えられなくなることが多々ある。いかに理に適っているとしても、自分が十字架を背負うかもしれないとなれば、怖気づくのは当然だ。

ありえない状況を現場にできる「思考実験」は、どんな時でも理に適った判断をするために必要な思考力とメンタルを身に付けさせてくれる。

■すべての材料が取り換えられた船は「本物」といえるのか?

もう一つ、本書で取り上げられている有名な「思考実験」を紹介しよう。

古代ギリシャのアテネに「テセウスの船」という船が長い年月にわたり大切に保管されていた。そして、材料の老朽化が進むと、その度に修理が施され、いつの間にか元々あった材料はすべて新しいものに取り換えられていた。

しかし、ここである疑問が提示される。現役当時の船の材料は一切ないのに、あれは「テセウスの船」と言えるのだろうか? さらに、職人たちは取り換えられた元の材料を集め、船を作り上げる。これは「テセウスの船」と言えるのか?

問題の焦点は、何をもってすれば「テセウスの船」といえるのかということだ。

再び船としての使うことを目的として保管されているならば、修理が施された「テセウスの船」が本物と見なされるべきだろう。ただ、すでに船としての機能は必要ないのであれば、最初の材料を使って復元された「テセウスの船」の方が本物とされるはずだ。

つまり、何をもって「同じ」とみなすかということで答えは変わる。そして、この「同じ」は時と場合、そして人によっても変化する。

そこまで思考を張り巡らし、誰もが納得する形に落とすことが論理的思考の役割なのだ。

ビジネスの現場では、正しい答えがない問題に対峙することも多く、最適な解を導き出し、選ぶことが求められる。

そのために必要な思考力を身につけるには、やはり考え抜くことである。さまざまなテクニックを駆使しながら、考えることを途中でやめないことで思考の癖付けをしていくのだ。

本書では、他に「アキレスと亀(パラドクス問題)」「モンティ・ホール問題」「囚人のジレンマ」などの有名な問題から、北村氏オリジナルの思考実験までさまざまな問題が揃っている。

問題を読んだら一度本を置き、通勤列車や休憩時間、トイレの中などで自分なりに考えてみてほしい。そうやってロジカルに考える癖が身に付くのだ。

(新刊JP編集部/金井元貴)

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