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PandoraのウェスターグレンCEO 突然辞任の衝撃、混乱続きで経営陣は刷新、チケット事業も売却

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PandoraのウェスターグレンCEO 突然辞任の衝撃、混乱続きで経営陣は刷新、チケット事業も売却

音楽ストリーミングサービスで伸び悩見続ける米国の「Pandora」(パンドラ)が、創業者でCEOのティム・ウェスターグレン(Tim Westergren)が同職を退任する組織変更を発表しました。ウェスターグレンはCEO職だけでなく取締役も辞任。Pandora取締役は直ぐにCEO探しに取り掛かります。CFOのナヴィーン・チョプラ(Naveen Chopra)が暫定CEOとなります。

Pandoraはまた、社長のマイク・ハーリング(Mike Herring)と、チーフ・マーケティング・オフィサーのニック・バートル(Nick Bartle)も辞任したと発表しました。ウェスターグレンはCEOに返り咲いて15カ月、バートルは2016年10月からわずか9カ月と、短期間でその役割を終えることとなりました。

関連記事 PandoraがCEO交代を発表。定額制、海外進出を狙うラジオ型音楽ストリーミングの経営陣に何が起きたのか?

定額制音楽ストリーミングの急成長によって、事業が低迷し続けるPandora。今月始めには、デジタルラジオの最大手「Sirius XM」(シリウスXM)から4億8,000万ドル (約532億円)の資金を新たに調達し、ビジネスの立て直しを図ることを発表したばかりでした。

■関連記事:Pandora Strengthens Balance Sheet and Sharpens Focus on Core Priorities(Pandora)

この戦略的提携によって、Sirius XMはPandoraの株式19%を取得、取締役会で会長を含む3人の役員を選出する役割を担うことが発表され、Pandoraの取締役会のシートは現在の5名から9名に拡大することが、今回のウェスターグレンの辞任と、取締役会のシェイクアップに大きな影響を与えたと見て間違いないでしょう。Pandoraの経営陣で今後大きな変化が見られると予想されます。

17年前の2000年にPandoraがまだ「サベッジ・ビースト・テクノロジーズ」という企業名だった時の創業者の一人、ウェスターグレンの辞任は、音楽ストリーミングという分野で、リスナーデータ解析や自動レコメンデーション技術などでいち早く成功したパイオニア企業であるPandoraが、創業以来、最大の分岐点に立っていることを意味しています。「音楽リスニングを永遠に変えた」Pandoraは、わずか数年で孤立無援にまで追い詰められているのが現実で、もはや経営にメスを入れる道をえらばなければならないほど、見通しは明るくありません。

近年、SpotifyやApple Musicなど定額制の音楽サービスの急成長に追いつけず、業界内で遅れを取ってきたPandoraにとって、喉から手が出るほど欲しかった資金援助は、今後のビジネスだけでなく、経営にもますます影響をもたらしそうです

チケット販売のTicketflyも売却

Pandoraはまた、2015年に買収したオンラインチケット販売サービス「Ticketfly」(チケットフライ)を、イベント・チケット販売プラットフォームの「Eventbrite」(イベントブライト)に売却することを発表。

売却額は2億円。買収額は当時のレートで4億5,000万ドル。Pandoraは、音楽ストリーミングサービスとは別の収益源の獲得を目指して、ライブビジネスと密接に成長するTicketflyを買収しましたが、結果を出す前に方向転換する結果となってしまったことは残念です。

さらにPandoraは今年3月に従業員の7%をリストラする計画も発表済み。

ここ数年に渡り、注力するビジネスへの投資と事業の方向転換を急ピッチで目指していたPandoraですが、今年3月にようやく開始した定額制の音楽ストリーミングサービス「Pandoraプレミアム」では、すぐに結果が出るほどの成果はあげられておらず、ライバル企業に迫る勢いを音楽業界内で見せることが出来ていません。

なぜPandoraは苦戦するのか?

Pandoraが苦戦することは議論されてきましたが、それほどまでに、音楽ストリーミング市場における他社の動きが活発になっている証拠です。ではなぜ、2億人以上のユーザー数を集めてきたPandoraがここまで苦戦するのでしょうか?

Pandoraのビジネスモデルでは、フリーで聴き放題の音楽ストリーミングサービスを提供する代わりに、リスナーには視聴の合間に広告を入れる広告収入を主な収益源としてきましたが、近年はアクティブリスナー数が約7,000万台で頭打ちとなり低迷。

2017年1-3月期(Q1)の収支報告書では、収益が前年同期比6%増の3億1600万ドル。広告売上は前年同期比1%増の2億2330万ドルと微増に終わり、過去最低の広告売上を記録しています。

Pandora Reports Q1 2017 Financial Results(Pandora)

今年に入ってようやく定額制の音楽サービス「Pandoraプレミアム」にも着手し、フリーと有料の2つのサービスを同時展開して軌道修正を図っている最中ですが、Pandoraの定額制サービスからの売上はQ1でわずか6490万ドル。前年比でも19%の伸びと爆発的な成長には寄与していないことが分かります。

そして何よりも、Pandoraは現在も赤字経営を続けています。2017年Q1の純損失は1億3230万ドルで、前年同期の1億1510万ドルからさらに拡大してしまいました。

ご存知の通り、定額制音楽ストリーミングサービスは競争の激しい市場。Pandoraは2015年11月に経営破綻した音楽サービス「Rdio」の資産を買い取り、新サービスの準備を始めますが、その間にもSpotifyは日本を含む世界展開を急ピッチで進め、アップルもApple Musicの原型となるBeats Musicを2014年5月に買収し定額制サービスの開発に着手していました。

2016年には「Tidal」、アマゾンからはAmazon Echoと連動する「Amazon Music Unlimited」がプライム会員以外にも提供が始まりました。

Pandoraが今後直面する課題であり、生き残りをかけた可能性は、「海外進出」です。

定額制音楽ストリーミングサービスは、各国のレコード会社とライセンス契約を結び、ライセンス料と利益を分配することで、世界の音楽市場へ進出を果たしてきました。しかしアメリカのネット放送の法律に則って運営してきたPandoraに海外進出という選択肢はありませんでした。それが、Pandoraが日本を含む海外に進出できない大きな理由です。

YouTubeも、無料サービスと併せて、広告が消せるオプションや、オリジナルコンテンツが視聴可能な定額制の「YouTube Red」を海外では展開していますが、グーグルの狙いの一つは、オリジナルコンテンツをフックにした収益であるため、Pandoraの戦略とは大きく異なります。

「定額制」ビジネスと、「海外進出」の二つのエリアで経験が無いPandoraは、音楽ストリーミング市場で苦戦することは必然的でした。

背後には巨大メディア企業リバティ・メディアの影

資金提供を行ったSiriusXMは、衛生を使ったデジタルラジオ放送と、あまり日本では話題になりにくい分野でビジネスで実績を収めてきました。ラジオの領域では最大手の一つとして、有名パーソナリティを起用した音楽番組やトーク番組が好調で、有料会員向けサービスでは3100万人以上の会員をすでに獲得している、デジタルラジオの中でも特出したビジネスを成功させてきました。

SiriusXMは、Pandora買収に名乗りを上げた企業の一つで、2016年に2社が議論を始め一度は話し合いが止まりましたが、2017年にも買収に再び関心を示していると言われてきました。

19%と大きな株主となったSiriusXMが、今後Pandoraの買収に乗り出しても、おかしくないでしょう。

Pandora買収に成功すれば、音楽ストリーミングの分野で競合する企業を傘下に収められるSiriusXMにとって大きな価値となりそうですが、SiriusXMの背後にある企業にとっても大きな勝利となることに違いありません。

SiriusXMの大手株主、それは米国の巨大メディア企業「Liberty Media」(リバティ・メディア)。

SiriusXMの株式53%を保有するLiberty Mediaは、世界最大のプロモーター「ライブ・ネイション」に出資している企業で(34%を保有)で、Liberty MediaのCEOでディールメーカーと言われるグレッグ・マフェイ(Greg Maffei)は事あるごとに公の場でPandoraとSiriusXMのシナジー(特にPandoraの広告ビジネスの価値)を主張してきた人物です。
Liberty Mediaは、F1の運営権や、MLBのアトランタ・ブレーブスの運営、ケーブルテレビ局QVCなど、メディアビジネスやエンターテインメントビジネスを多角的に仕掛けています。Liberty Mediaの資産にPandoraが加われば、ネットビジネスでの領域へ事業を拡大することができるという仮説が立てられます。

しかし、今回なぜSiriusXMとPandoraは「戦略的提携」で合意し、なぜ「Pandora買収」まで至らなかったのか、という点が気がかりです。

Pandora買収話の歩み

Pandoraは、クルマ社会の全米では圧倒的な存在感を放ってきましたけれど、近年の衰えは深刻の域に入りつつあり、数字もその低迷ぶりを物語っています。

Pandoraが報告した2017年Q1決算書で、月間アクティブユーザーは7,670万人で、前年同期の7,940万人からは減少し、視聴時間総数も2016年Q1の55.2億時間から52.1億時間へ減少。定額制音楽サービスの煽りを受けるだけでなく、2億人以上が登録している巨大サービスの優位性も維持することが困難なほど、成長が止まっています。

2000年の創業と歴史が古いPandoraには、2010年代に入って常に買収の話が業界内で囁かれてきました。

2012年には、グーグル、アマゾン、デジタルラジオ大手でSiriusXMと競争するiHeartMedia (前クリア・チャンネル)が、買収に関心を示していると報じられた事が火種の元となります。

2014年には再びアップル、グーグル 、ヤフーが買収に向けて動いていると噂が報じられてきました。

2015年に1株25ドルのオファーの提案があったとして噂が広まり、売却に向けてゴールドマンサクスが動いていると言われ、買収路線が具体化してきた兆しがあります。

2016年に入り、Liberty MediaのCEOグレッグ・マフェイ(Greg Maffei)が触手を伸ばし、1株15ドルで買収提案を行うもPandora取締役がオファーを拒否。12月にはSiriusXMと買収の協議に入ったとされましたが、具体的な実現までには至りませんでした。

関連記事 音楽配信Pandoraの身売り話に新展開。Sirius XM親会社から3600億円の買収提案受けるも却下

世界では、オンデマンド型の定額制音楽ストリーミングサービスが勢いを増しており、オンデマンド型のサービスに乗り遅れたPandoraは、

先日、電気自動車の大手テスラが、レコード会社とライセンス契約の協議を重ね、自動車向けの音楽ストリーミングサービスを準備していると、音楽業界の情報がレポートされたばかり。

Tesla is talking to the music labels about creating its own streaming service (Recode)

情報では、テスラが初めに取り組むのは、Pandoraスタイルのラジオ型ネットラジオのストリーミング配信で、徐々にオプションを増やしていきたいと伝えられています。スタンドアローンの音楽サービスを作るのか、どこかを買収するか、詳細は定かになっていませんが、テスラが本気で音楽ストリーミングに参入を考えるなら、Pandora買収の路線も可能性としては無きにしもあらず。

これまでウェスターグレンはPandora売却を度々否定してきましたが、その彼も今は外の人となってしまい、もはや身売りを妨げる声を失ったも同然です。

Pandoraの低迷は、フリーでユーザーをかき集めてきた音楽サービスの終焉を意味し、着実に成長している定額制音楽サービスが今後は主流になっていくという立場の逆転が音楽業界で本格到来したと言っても過言ではないでしょう。

投資家からのプレッシャーを受けてPandoraが本当に身売りするのか、今後の動向が注目されます。

■記事元:http://jaykogami.com/2017/06/14184.html

記事提供:All Digital Music

Jay Kogami(ジェイ・コウガミ)
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