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アマゾンの経営戦略をドラッカー理論で説明すると?

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『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、P・F・ドラッカーの名言を解説いただくコーナー。第13回の今回は、「目標設定に必要な三つのバランス」についてです。

【P・F・ドラッカーについて】

ピーター・F・ドラッカー(1909〜2005)は、オーストリア出身の著名な経営学者。激動のヨーロッパで古い価値観・社会が崩壊していくのを目撃。ユダヤ人の血を引いていたドラッカーはナチスの台頭に危険を感じて渡米、ニューヨーク大学の教授などを経て、執筆と教育、コンサルティング活動等に従事する。

ドラッカーが深い関心を寄せていたのは、社会において企業が果たす役割についてであり、生涯にわたって、組織内で人をよりよく活かす方法について研究、思考し続けた。「マネジメントの父」と呼ばれ、GE社のジャック・ウェルチ氏やP&G社のアラン・ラフリー氏など、ドラッカーを師と仰ぐ世界的な経営者は数多い。

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こんにちは。俣野成敏です。

著名な経営学者であるP・F・ドラッカー氏の言葉に「私なりの解釈を付けて読み解いていく」というこのコーナー。

世界中に支持者を持つ一方で、難解と言われることも多いドラッカー氏ですが、残された著書を紐解くことによって、長年にわたり世界的企業の第一線で指導を続けた氏の真髄に触れることができます。これを機会にぜひ氏に親しんでいただき、氏の英知をご自身の仕事に取り入れていただくきっかけとなりましたら幸いです。

本日は、下記名言解説の2回目となります。

【本日の名言】

「目標を設定するには三種類のバランスが必要である。目標は利益とバランスさせなければならない。現在と将来とをバランスさせなければならない。異なる目標を互いにバランスさせなければならない。そのためには目標間のトレードオフが必要となる。

…何もかもできる組織はない。金があっても人がいない。優先順位が必要である。あらゆることを少しずつ手がけることは最悪である。いかなる成果もあげられない。間違った優先順位でも、ないよりはましである」

(P・F・ドラッカー『マネジメント』)

前回は、ドラッカー氏の主張した「三種類のバランス」について解説しました。三種類のバランスとは、「目標と利益のバランス」「現在と将来のバランス」「異なる目標間のバランス」の3つです。

この名言の趣旨とは、「二律背反をどう両立させればいいのか?」ということです。今回は実例を見ていきながら、両者をどのようにバランシングさせていけばいいのかを考えてみたいと思います。

アマゾンはどう二律背反を成り立たせているのか?

二律背反とは、「重要な二つの事柄が、相互に矛盾し合って存在している」ことを言います。二律背反で成り立っているもののひとつに、「企業の利益」と「顧客の利益」があります。この二律背反関係において、従来にはなかった新しい考え方を持ち込み、成功しているのがアマゾン社です。

アマゾンを立ち上げたのは、ジェフ・ベゾス氏。ベゾス氏はもともとシステムエンジニアとして職歴をスタートさせましたが、すぐに経営者としての頭角を現します。他人の元で副社長などを経験した後に、1994年に起業。その後の快進撃は、ご存じの通りです。

アマゾンが、ドラッカー氏の言う「三種類のバランス」をどのようにバランシングさせているのかを見てみることにしましょう。まずは「利益とのバランス」についてですが、もともと同社は創業以来6年間、赤字を続けていました。その理由は、今に続くまで、同社が利益のほとんどを次の事業投資へと振り向けていることにあります。

同社の奇抜な利益戦略とは、「自社が利益を確保するための価格」を設定するのではなく、まずは「顧客を利するための価格」にし、自社は「それでも利益を出せる体制に変化する」というものです。この逆転の発想が、同社が躍進した最大の理由です。

アマゾンにとっての「三種類のバランス」

アマゾンの利益戦略を知る好例としては、2000年の夏に『ハリーポッターシリーズ』を赤字で販売したことが挙げられます。

当時、アマゾンはこの話題作を40%値引きするとともに、通常配送料金のままで発売日に配送できるように手配。予想される総額赤字は100万ドル(約1億円)でした。しかし反対者の多い中で行われたこのキャンペーンは大成功。同社は顧客から絶大な支持を獲得、メディアにも大きく取り上げられ、高い宣伝効果をあげました(『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』より)。

ベゾス氏の先見性は、本来あげられるはずの、目の前の利益を放棄している点にあります。「現在と将来のバランス」で言うと、明らかに未来の比重を大きくしていることがわかります。同社は今でこそ利益を出すようになりましたが、利益について、氏は「利益を出すのは簡単です。同時に愚かなことでもあります」と述べています。

アマゾンは、「エブリシング・ストアをつくる」という夢の実現に向けて多くの目標を掲げ、それに邁進しています。当然、「数ある目標とのバランス」も考えているでしょう。とはいえ、少なくとも短期的利益の獲得に関しては、氏の目標の中には含まれていないようです。

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「何年経っても変わらないもの」をビジネスの根幹に据える

もともと、商売とは「利益が出ること自体がクレイジー」といってもいい性質のものです。なぜなら、企業利益は基本的に顧客の利益と相反する関係にあるからです。

周りの人々には、経営者が見ている未来の姿は見えません。どんなに懇切丁寧に説明したところで、他人にはそのうちの一部しか理解することはできないでしょう。それに納得できない人は当然離れていくことになりますが、経営者にその態度を貫き通せるだけの自信がなければ、やがて二律背反のバランスは崩れることになります。

ベゾス氏が自信を持って進める理由のひとつに、アマゾンが簡単には変化しないものをビジネスの根幹に据えていることが挙げられます。同社が「ビジネスにおいて、5年後、10年後も変わらないものとは何か?」という問いに対して、出した答えが「ユーザーは低料金、早い配送、幅広い品揃えを求めている」というものでした。

氏の信念は、「顧客第一主義は顧客のためになると同時に、長期的に見てアマゾンの利益になる」という確信から生まれたものです。氏はかつて「『顧客にとっていいことは株主にとって悪いこと』という二者択一でしかものを考えられないのは素人だ」と喝破しています。一見、極端にも見える氏の言動ですが、実際は誰よりもバランスの大切さを理解しているということが、この言葉から察せられるのではないでしょうか。

我々はどう二律背反をバランスさせれば良いのか?

今回は、二律背反について述べてきました。締めくくりとして、この考え方をどのように私たちの生活に取り込めばいいのかを、お話したいと思います。

ドラッカー氏の名言の中には、「あらゆることを少しずつ手がけることは最悪である」とあります。これをそのまま解釈するのであれば、「どちらかを取り、どちらかを捨てる」という意味にも受け取れます。しかし二律背反の場合、一方を取ってしまえば、もう片方も成立しなくなります。

もう少し身近な例で説明しましょう。たとえば、「ビジネス書を読んで勉強したいが、読書の時間が取れない」という人がいたとしましょう。 ここで、「時間がないからビジネス書を読まない」という選択をしてしまうと、いつまで経っても時間のない状態から抜け出すことはできません。これを変えるために必要なのが「ビジネス書を読む」という行為だからです。

現状から変化しようとすれば、そこには必ず摩擦が生じます。今の「当たり前の状態」を変えようというのですから、矛盾と葛藤を感じるのは当然のことです。しかしここで、その摩擦を避けようとしてはいけません。それよりも、まずは「今、行なっていることが自分の目的に適っているかどうか?」と考えることです。もし、考えた結果、答えが「イエス」なのであれば、後はそれを「どう自分に取り入れるか?」ということが大切になってきます。

ぜひ、これからは「両方を取るにはどうしたらいいのか?」という視点も持つようにしてください。今までにはなかった新しいアイデアがひらめくようになるに違いありません。

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』が11刷となっている。著作累計は34万部超。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

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