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パディ・マクアルーンを擁したプレファブ・スプラウトの名作『スティーブ・マックイーン』

70年代中期のパンク革命から80年代のデジタル革命まで、当時の音楽シーンは早送りのように目まぐるしく、流行りの音楽が移り変わっていった。特にデジタル機材を多用したシンセポップやディスコ音楽の台頭は凄まじかったが、機材の進化はどんどん進み、10年も経つと音が古くなってしまっていた。そんな中で、時代の音にとらわれずに良い音楽を追究していたアーティストも少なくなかった。今回紹介するプレファブ・スプラウトもそんなグループのひとつ。本作『スティーブ・マックイーン』に収録されたナンバーはどれも秀逸で、何年経とうが古びない、上質のメロディーがいっぱい詰まった80年代を代表する名盤だ。
『Steve McQueen』(’85)/Prefab Sprout (okmusic UP's)
トーマス・ドルビーのシンセポップ

シンセポップ全盛の1983年、打ち込みとシンセを多用したトーマス・ドルビーの「彼女はサイエンス(原題:She Blinded Me With Science)」が大ヒット、収録アルバム『光と物体(原題:The Golden Age Of Wireless)』(‘82)ともども素晴らしい仕上がりであった。しかし、1年も経つと新しいデジタル機器を使ったサウンドが登場し、古いものはあっと言う間に忘れ去られていく。才能にあふれていたにもかかわらず、ドルビーが輝いていたのも少しの期間だけである。80年代とはそんな時代であった。
当時、僕も最初こそ面白がってシンセポップを聴いていたのだが、派手なサウンドと複雑な打ち込みのリズムに、だんだんついていけなくなっていた。ダンスしやすい打ち込みやシンセの奇抜な音などで勝負するグループやシンガーに、次第に飽き飽きするようになっていたのだ。ポップスの醍醐味はメロディーにあるのではないのか…ひとりで勝手に憤慨し、人力演奏を続けていたジャズ、ブルース、カントリーへと興味は移り、知らず知らずのうちにデジタル機器ばかりのロックを聴かなくなっていた。
突然やってきたネオアコのブーム

まだまだ世間はテクノとディスコの時代であったけれど「良いメロディーを味わいながら人力演奏で聴きたい」という僕のような人は少なくなかったようで、83年頃からスタイル・カウンシル、アズテック・カメラ、ベン・ワット、ペイル・ファウンテンズ、ザ・スミスなど、アコースティック楽器を中心にして、60年代や70年代のフォークロックやソウルを模範にしたグループやシンガーが増えてきていた。生音を中心にしたサウンドが徐々に認知されるようになり、僕もまたロックのアルバムを聴くようになった。
ただ、ネオアコのアーティストたち、雰囲気は良いんだけれど、良いメロディーを書けるソングライターが少なかった。レノン&マッカートニー、ポール・サイモン、デビッド・ゲイツ、キャロル・キング、ジャクソン・ブラウン、スティーリー・ダンらのような、60年代〜70年代のすぐれたメロディーメイカーたちに太刀打ちできるのは、イギリスではアズテック・カメラのロディ・フレーム、ザ・スミスのジョニー・マー&モリッシー、そしてポール・ウェラーぐらいではなかったか。
プレファブ・スプラウトというグループ

そんな時、エルヴィス・コステロがプレファブ・スプラウトのリーダーであるパディ・マクアルーンのソングライティングが気に入り、オープニングアクトとして抜擢したという記事が音楽雑誌に出ていて、良いメロディーを探し求めていた僕は大いに興味を惹かれた。レコード店に行ってみると(ていうか、いつも行ってるのだが…)、デビューアルバムの『スウーン』(‘84)はなく、新譜の『スティーブ・マックイーン』(’85)があった。ジャケット(当時はLPで購入)を見ると、バイクの周りに4人のメンバーがいるだけのプロフィール写真で、デジタル時代にしては古臭い感じであった。
プレファブ・スプラウトはイギリスの炭鉱都市として知られるニューキャッスル近郊のダラム出身。パディ・マクアルーン、マーティン・マクアルーン(パディの実弟)、紅一点のウェンディ・スミス、ニール・コンティからなる4人組だ。ソングライティングはパディ・マクアルーンがひとりでこなしている。彼の書く曲は凝ったものが多く、流行りには目を向けずに、タイムレスな良い曲を書くことを自らに課しているそうだ。
本作『スティーブ・マックイーン』について

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