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今は「守り」の時代、“やらされる”ことも多い。でも自分を失ってはいけない。――マイケル・ジャクソンのバックダンサー/ユーコ・スミダ・ジャクソンの仕事論

ユーコ・スミダ・ジャクソン──職業・ダンサー。

今は亡きポップ界のスーパースター、マイケル・ジャクソンのバックダンサーとして起用された唯一無二の日本人。1992年にスタートした『デンジャラス・ワールド・ツアー』に帯同した彼女の足跡は、『JACKSON~マイケル・ジャクソンと踊った唯一の日本人ダンサーの物語』に綴られているが、今一度そのサクセスストーリーを振り返ってみたい。f:id:k_kushida:20170531150340j:plain

<プロフィール>

ユーコ・スミダ・ジャクソン

1966年熊本県生まれ。高校卒業後はダンスのレッスンに明け暮れ、ダンス講師の薦めで『劇団四季』に入団したもののわずか1年で退団。24歳で単身渡米。LAを起点にさまざまなオーディションに挑み、アーティストのPV撮影に参加した。25歳のときマイケル・ジャクソンの『デンジャラス・ツアー』のダンサーに抜擢。亡き夫はモータウンレコードのCEOを務めたジョージ・ジャクソン氏。

バブルは「攻め」の時代。時代に恵まれて新しいことにチャレンジできた

──なぜ、この世界に飛び込み、そして成功を為しえたのか、と問うとユーコさんは、しばらく考えてゆっくりと語り出した。

最初から固い決意があったわけではないんですが、小学校5年生のころからなんとなく「ダンサーになりたい」と考えていました。そのころからバレエを始めたのですが、私が目指したいのはバレエダンサーではなくダンサー、もっといえばモヤモヤとしたイメージの中に漠然とした形でエンタテインメントに関わる仕事というものが芽生えてきたのです。通っていたバレエ学校も当時としては珍しくジャズやファンクを採り入れた先進的なところ。それまでの習い事は最初のうちこそ夢中になるのにすぐ飽きてしまったんですが、ダンスだけは違っていました。

ダンサーといってもいろいろなスタイルがありますが、夢に見ていたのはそのどれとも違う。言葉にするのは難しいのですが、映像にかかわるエンタテインメントの仕事、という捉えどころのないイメージでしたね。映画『フェーム』を観たときの感覚が鮮明に残っていて、「あ、こんな感じ」という気持ちが生じたのですが、具体的にそれが何なのかわからないまま、ただひたすら踊っていたのです。

想像している理想の形にたどり着くまで、どんなことをすればいいのか、どれが近道なのか見当がつかない。ただ、時代は──幸か不幸か──バブルに向かっている真っ最中。東京にはいくつもダンススタジオがあって、海外から講師を招いているところも少なくありませんでした。今のようにダンスで身を立てる方法が確立していたわけではありませんが、新しいことにチャレンジする、いや、してもいいという空気がそこかしこに漂っていたのはありがたかったと思います。

バブル景気がいいことだったのかどうか判断しにくいのですが、攻めと守りがあるとしたら「攻め」の時代だったことはまぎれもない事実。時代の空気がそうなのだから、個人のレベルでも攻めることが当たり前。ここ十数年は日本経済もずっと低迷していますし、「守り」の姿勢が普通になってしまった。だから、その中であえて「攻め」を選択するのは生半可なことではないと思います。そういう意味では私は運がよかったのでしょうね。時代に恵まれていたんだと思います。

単身アメリカ修行。孤独でも、私にはダンスという武器があった

──ユーコさんの物腰は柔らかい。と同時に底知れぬタフさが垣間見える。だが、その余裕すら感じさせる強さは、アメリカ修行中の逆境の中で身につけたものなのかもしれない。

英語は完全に独学です。専門的に習ったことはありません。海外から来ているダンスの先生たちと会話していたので、これならいけると単純に思ってた。でも、向こうに行ったら全然ダメだと気づかされた(笑)。まともに買い物もできないんですよ。夕食を買いに行って「英語で話してよ!」といわれて落ち込んだこともあります。しばらくは、値段がわかっているミネラルウォーターとバナナ、それからスコーンしか食べていませんでした。

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