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字は体を表わす。みんな違って、みんな美しい「くせ字」の魅力

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字は体を表わす。みんな違って、みんな美しい「くせ字」の魅力

 「日本の為に祈りを。」と自ら日本語で書いたティーカップを掲げるレディー・ガガ。東日本大震災の後、世界中で放射能汚染を恐れる声が上がる中、いち早く来日して、復興支援を呼び掛ける世界的歌姫の姿に、胸を熱くした日本人は多かったのではないでしょうか。拙いけれど、丁寧に書かれた8文字には、レディー・ガガの気持ちが表れていて、手書き文字の持つ力を教えてくれた出来事でした。

 著者でくせ字愛好家の井原奈津子氏によると、レディー・ガガの文字は、当時流行っていたギャル文字に似ているとか。ギャル文字は、「かわいさ」や「不完全さ」が相手を安心させるくせ字だと井原氏は分析しています。「ガガがなぜギャル文字を書けるのか、書いたのかは謎だが、私は『さすが!』と思った。勘がよくないと出来ないことだと思う。そしてその勘の良さはひとえに『日本への愛』から来るものではないだろうか」(本書より)

 本書には他にも、お笑いタレントがボードに書いた即興ギャグの文字から、街で見かける看板の手書き文字まで、著者が約30年にわたって集めたという40以上の個性豊かなくせ字が紹介されています。

 「端正で奇怪。形が独特なだけでなく、ここまで機械的に整っているのも珍しい」と著者が評するのは、怪談で人気のタレント稲川淳二氏の字。だれが見ても読みやすい彼の字は、2年前にテレビ番組で紹介されるなり、ツイッターで話題になり、「稲川淳二みたいな字を書けるようになりたい」というコメントがネット上に数多く寄せられたとか。一つの文字をめぐる人々の騒ぎように興奮したという井原氏は「『その字が好きだ』『その字が欲しい』と思わせる字が書であり、それを書く人が書家なのだと常々思っている。稲川淳二氏の字は、そういった意味で私にとっては『書』なのだ」と感動を綴っています。

 また、芸術家の岡本太郎氏が、「『美しい』は『きれい』とは全く違う」と彼の著書で書いていることを紹介し、「私も『美しい』という言葉を、きれいに整ったという意味でなく『そのものから何かを感じて心に響くこと』として使いたいと思います」と述べています。確かに、手書き文字には書き手の気持ちを込めることができるようです。

 パソコンで作る文書が当たり前になった昨今、挨拶状などに手書きで一言添えてあると、ちょっと嬉しくなりますね。字のくせを見て、書き手の顔を思い出すようなら、かなり親しい間柄でしょう。完璧に見える人が、意外とかわいい字を書いていて、親近感を持ったという経験はありませんか。

 「字はその人の存在を映し出してくれる。だから面白い。そのことが、少しでもこの本から伝わったら嬉しいです」とは、著者のあとがきの言葉です。くせ字も個性のうち。そう考えると、恥ずかしかった悪筆にも愛着が湧きそう。手書き文字の魅力を教えてくれる素敵な一冊です。

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