ジメジメ梅雨どきの「黒南風(くろはえ)」「五月闇(さつきやみ)」って?

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ジメジメ梅雨どきの「黒南風(くろはえ)」「五月闇(さつきやみ)」って?

 気象庁が6月7日、四国、中国地方、近畿、東海、そして関東甲信が梅雨入りしたと発表しました。梅雨といえば、ジメジメとした季節から嫌われがちな時期ですが、心地よい初夏の陽気から、本格的な夏の橋渡しとなる季節の移ろいを感じるときでもあります。

 夏生一暁氏による本書『365日の歳時記 (上)1月~6月』は、そうした自然や季節の変化を感じられる俳句歳時記です。これまで1年は春夏秋冬と新年の5分割という形式が一般的でしたが、本書では季語郡をバラバラに解体してひとつひとつの季語を吟味し、季節の流れに沿って1日ごとに再編する大胆な試みを行っています。

 その上で俳諧500年に及ぶ歴史に詠まれた10数万句の中から秀句をセレクト。加えて、歳時記として「今日は何の日か?」「今日咲いている花は?」などを盛り込んだほか、特筆すべきは俳句をより身近に感じられるように、馴染みのない旧暦と古語の解説も付随しているところ。現代人が知っておくべき教養として役立ちそうです。

 例えば6月11日の項では、「今日の名句」として「大寺のうしろ明るき梅雨入(ついり)かな」(前田普羅)が紹介され、知っていそうで知らない「梅雨入り」を詳しく解説しています。

 「旧暦5月の、梅の実が熟す頃に降る雨ということで『五月雨(さみだれ)』『梅雨(ばいう)』と呼ばれるこの長雨は、雑節で新暦6月11日頃に始まるものと定められている。これが『入梅(にゅうばい)』で、一般に『梅雨入り』『梅雨入』と呼ばれるが、関東甲信越における30年間の梅雨入り平均が6月8日だから、ほぼ暦通りといえる」(本書より)

 梅雨にまつわる季語は多く、6月21日の「五月闇(さつきやみ)」もそのひとつ。「五月雨の降りつづく梅雨時の暗さ」を意味し、雲に覆われて暗い昼間はもちろん、月が出ないため一段と暗い闇夜となるため、昼にも夜にも使用される夏の季語だといいます。

 そして、6月26日には梅雨時に誰しも経験したことがある”あの風”、「黒南風(くろはえ)」も載っており、こう説明されています。

 「梅雨時に吹く湿り気を帯びた南風をいう。黒雲を運んでくる風ともいわれ、この湿った南風が吹く間は梅雨は続くものとされる。これに対し、梅雨明け後に吹く乾いた穏やかな南風を『白南風(しろはえ)』という。」(本書より)

 忙しい日常にこそ、1日1日を振り返る余裕が欲しいもの。本書をきっかけに日本の歴史をはじめ自然や季節を感じる”余裕ある暮らし”を意識してみるのも良さそうです。始まったばかりの梅雨ですが、まずは「白南風」が吹く日を待ち焦がれてみてはいかがでしょう。

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